草枕
2015-10-27 16:30:36
893文字
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白軍潜入終生さんネタ

※シギノさんからのネタを辿視点で。

放課後、走り幅跳びの砂場で、思いっきり砂を被る。環くんの驚いた声を聞きながら、犬がするように頭を振って余計な砂を飛ばしたら、今度は悲鳴が上がった。ごめんね、終生くんに会いに行く準備をしようとしただけで、砂つぶてを打つ気はなかったんだって。本当だよ?

終生くんだ、と思ってはいけない。思えば、必ず何処かで五月女終生の友人である兎沢辿が顔を出す。だからあれは終生くんではないし、オレも、今の兎沢辿ではない。

上手い嘘って云うのは、真実を多分に含んでいるものだ。
例えば、あそこに居るのは、名前も知らない学生さんだ。本当は、終生くんの潜入先の名前はしっかり覚えてるけど、それを「知らない」という嘘で覆って、真実でコーティングする。

あの学生さんは、みすぼらしいオレを憐れんで、オレの明日のご飯の糧を多めにくれる愚かで優しい人。世の中には、そんな媚びを買ってくれる人が何割か存在していて、オレはそんな人たちのお陰でこれまで生きてこれた。まごう事なき真実である。憐れっぽく、いかにも誰かの助けが必要に見せるのは、オレの一番得意とするところだ。実際、そうである訳だし。ほらここにも、真実が含まれている。

「お兄さん、風邪ならこの飴、買ってください。よく効くから」
本当は効かないかもしれない。効くかもしれないけど、飢えた人間とはそういうものだ。
終生くんは、止初は、──学生のお兄さんは、缶に入った飴玉の代わりに、折ったお札をくれる。始めはおずおずと、でも完全に自分の手に入ったら、握りしめるようにして離さない。これで今日と明日、ご飯が食べられる。それから、また会ったら、今日みたいに情けをかけて貰えるように必死で愛想を絞り出す。「ありがとうございます、お大事に」本当に治ってしまったら、困るのだけれど。

隣のもう一人にも目礼して、くたびれた靴でパタパタと走り去る。これにて兎沢辿の任務は終了、後は終生くんの腕の見せどころだ。きっと、一緒に居た相手にぼったくりだなんだと言われているのだろうから。

そうして疲れて部屋に帰ったら、缶に入った資料を読みながら、入れておいたレモンキャンディーをよく味わってほしい。それは環くんと一緒に、終生くんが好きそうな味を選んだものだから。疲労には効かないかもしれないけど、労りの心は届くかもしれない。友人ってきっと、そういうものだ。
疲労回復には糖分が有効。これって、充分な量の真実じゃないかな?