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草枕
2015-09-14 17:54:27
2427文字
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【とある猟師の夢】
ギルクエ企画小説。
#ギルクエ神秘の森
PTメンバーちょろっとお借りしております!
#ギルクエ神秘の森
夢を見せられる対象、夢の元になる過去を持つ人物、誰がどう触れればという規定がなかったので、近くにいた人間が、パックに触れた他人の夢を見る、というパターンもありなのかなあと勝手に妄想した結果。
【とある猟師の夢】
馬を二頭失ったのは大きかった。何より、一番の労働力たる青年がことごとく死ぬか、怪我を負ってしまったのも大きかった。積荷も、水は補給できたが、食料や交易品の被害は甚大だ。そして交易品を売り、食料を調達しようと停泊していた街は今、焼け跡燻る、魔物の被害地である。
と、いうのはモノの話だ。死んだ青年達は、共に各地を渡り歩いた家族である。剣の握り方を教えてくれた者もいたし、商人には必須だと計算を教えてくれた者もいた。自身の妹と全く変わりなく、血の繋がった兄弟のように頭を撫でてくれた兄貴分もだ。その兄と二人で可愛がった妹も死んだ。
生き残ったキャラバンの者は、皆が悲しんだ。とは言え、悲しみに暮れてもいなかった。危険な道中で、誰かが死ぬのは日常だ。ただ今回は、少し規模が大きかっただけで。
次なる地へ針路を取らねば、次に死ぬのは自分たちだ。生きる為には、進まなくてはならない。
積荷を整理し、生き残った馬に車を牽かせる。怪我した者も乗せなくてはならないから、普段よりも重い荷物を背負って延々と歩き続けなくてはならない。自分より年若い子どもたちの荷も、できるだけ引き受けた。次の町まで、食糧が幾らか足りないであろうという自分の見立ては、幼いものには伝えたくなかった。大人たちは、わざわざ自分が言わずとも分かっている筈だ。食べられる野草探しに余念のない視線が、何よりもその事実を語っていた。
肩に食い込む荷の重さが痛い。これは、今は糧にならない、次の町での売り物だ。未来の生の重さだ。打ち棄ててはならない痛みだ。
歩いて歩いて、ただひたすらに歩を進めながら、近いうちにキャラバンを離れようと決めた。日に日に減っていく食糧を見て、決めていた。空腹よりも恐ろしい考えが、きりきりと胃を締め付けている。今、このキャラバンには、怪我をした者や幼い者たちを養いきれるだけの労働力がない。怪我人達が快復すれば、形を保てるだろうが、それには時間が必要だ。
そうして、何よりも怖かったのは、否定したかったのは、自分がまだ、養われる側の者だった、という事だ。
一行が町に着いたのは昼間のことだった。昼時の賑やかな雰囲気をぶち壊す、まさに死に体の交易隊だったが、不思議なことに除け者にされる事はなかった。どうやらこの町には冒険者たちのギルドがあって、件の町がモンスターの襲撃に遭ったことは知れ渡っているらしい。一行の有り様を見て、察する者は多かったのだろう。
交易品を負った背中も肩も、最早痛みは麻痺していた。それでも、妙に思考だけは冴え渡っていた。この町で、別れを告げよう。たった一人分の口減らしだが、しないよりマシだろう。
そうしてその晩、背負った荷を下ろした。餞別は、意味がないので受け取らなかった。ただ、最後に強く抱き締められて、泣いた。
*
男は、猟師だ。長らく神秘の森の入り口付近の山小屋で暮らしている。今日は猪を一頭仕留めて、それから、妙な低級の魔物を撃った。森の動物よりも余程弱い生き物だったが、暫くすると妙な眠気に襲われて、遂には道で耐えきれず眠りに落ちた。
そして、悪夢をみた。
今のご時勢、何処にでもある陳腐な話だった。目が覚めた今となっては、幼い頃、目の前で熊に父親を食い殺された男の半生の方が、主観的にはよっぽど悲劇なような気がする。
それでも、どうしようもない悪夢だと感じたのだ。背中に食い込む荷の重さは、痣を作っただろう。棄ててはいけないそれを降ろした時の──
「人が居ます!ああ、パックにやられたのかな、寝て
……
」
「ルーカス、その人の目、開いてるけど」
「わわわっ、本当だ起きてるおはようございます?!」
赤枝のギルド員か、と我に帰る。この森に入ってくるとしたら、彼の構成員だろう。弓使いと大鎌を持った二人の青年が、自分を見て騒いでいる。
「もうルーカスちゃん、寝起きの方が驚いてしまうでしょう。アンドロメダちゃん、2人で少し離れていてくれるかしら?」
たおやかで、それでいてどこか妖艶な声が響く。その頃には身体を起こせるようになっていて、男は紅いドレスの女性の微笑みを受けた。その後方に居る魔法使いは、何故かこちらを猛烈に睨んで居たが。
「よぉあんさん、怪我人じゃないよな?」
もう一人、青年が居たらしい。後方から掛けられた声に、男は応と返事を返す。
何よりだわ、と言う女性の声に重ねるように、青年は話を続けた。
「変な夢でもみただろ、そういう厄介な魔物が森に大量発生しててな」
「ギルドで、討伐している。赤枝だけじゃない、数が多いから」
相変わらず、こちらを睨みながら魔術師が言う。その頭に、何処からか飛んできた青色の鳥が止まって、微かに表情が和らいだ。何となく、こちらまで癒されてしまう光景だ。
「だから、暫く森が騒がしいと思うんだわ。悪いね」
あんな魔物の討伐なら、男にとっては寧ろ助かる話だ。今日狩った猪で小屋に籠もるか、町まで降りて暫く過ごすのも良い。
「いいや、悪夢を見るよりよっぽどマシだ」
男は答えた。
他人事も、自らに迫れば悪夢のような出来事になるのか。それとも、何かの出来事を悪夢としてみせる類の魔物だったのか。
その答えを、何故か目の前の青年が知っているような気がして、
男は、それこそ夢の如く荒唐無稽な話ではないかと目を閉じた。
*
ココノエの夢を見たモブの話。
ココノエはキャラバンと別れた後、赤枝ギルドで食い扶持稼ぎに下働き志願しますー。隣町の魔物襲撃被害者だって知られてる事を織り込み済みで。悪知恵が働くことで、まぁ。
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