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頻子
2024-06-07 23:11:07
3387文字
Public
KODR二次
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ジャンタン保護法(KODR)
家臣オールギャグ
「あら、ニュート様。お散歩ですか?」
フランコールに、ニュートはもったいをつけて言った。
臣下の様子を見るのも魔界王のつとめだ。
だからこれは別に、遊んでいるわけではない。
フランコールはふふっと微笑んでくれた。
「そうですわね。ニュート様は次期魔界王様ですから」
フランコールは心なしか嬉しそうに仕事の手を止めると「そうだ!」と、焼き菓子の入ったバスケットをくれた。ニュートは魔界王の威厳を発揮し(つまり、喜び勇んで!)デビイのところに走って行った。
「ありがとー! ニュート。ああ、ジャンタンのところにいくの? もう少しあとがいいんじゃない? さっき、おっかない魔物にとっちめられてたからさ
……
」
それを聞いて、ニュートは慌ててジャンタンのもとへと向かった。
地下工房から飛び出してきたジャンタンは、泣きはらした顔をしていた。
「あ、な、なんでもないです!」
ごしごしと袖で涙を拭ったジャンタンは、慌ててニュートを追い払った。
「
……
ほんとになんでもないったら。なんでもない! しっし!」
こんなの、ひどい。
ニュートは強い決意を抱いた。
ジャンタンを守らなければならない。
恐ろしい魔物たちからジャンタンを守るべく、ジャンタン保護法を制定してひと月。
ついに、自分自身もお縄となったニュートである。
「きゃはは! 自分できまりを作っといて自分でつかまってやんのー! ばーか!」
ニュートはうつむいて粛々と連行されていた。
水路をマーメルンの声が反響していたけれど、角を曲がったところで途切れる。
ニュートはふいに心細くなった。たとえ罵倒であってもマーメルンの声はきれいだった。
魔界のお城の地下牢だ。
ここにいるのは、暴動を起こしたり、新魔界とひそかに通じていたおそろしい魔物たちばかり。ニュートは己の身を案じ、暗い気持ちになっていた。鉄格子は軋み、牢は乱暴に開いた
……
。
思いがけず、ふわっとした甘い香りがして、ニュートは顔を上げる。
「ニュートちゃまー!」
ゾービナス!
どうしてゾービナスが、ここにいるんだ。こんな暗くてさみしいところに
……
。
ニュートはゾービナスとぎゅっと抱きしめあった。
「ひどいんですのよ。ひどいんですのよー! わたしが、あの人間をいじめて泣かせたっていうんです! でもわたし、ぜんぜん覚えてないんですー!」
こんなにかわいい子がジャンタンをいじめるはずがない。きっと何かの間違いだろう
……
。
「ぐすん。やっぱり人間なんてサイアクで、どうしようもない存在なんですわー!」
「
……
えっ、ニュート様?」
牢の奥から、何者かがのそっと現れた。
ニュートはまた自分を疑う。
ウルハムだった。
「あれ? ニュート様まで捕まったんですか? ジャンタンをいじめた罪で? おかしいなあ。こんなにかわいいニュート様がジャンタンをいじめるはずはないし
……
きっとなにかの間違いじゃないかと思うんですけど
……
」
「あ!?」
「あっ
……
いや」
ゾービナスにじろりとにらまれて、ウルハムは後ろに下がったけれど、あまりスペースがなくて下がれなかった。ウルハムはまあ、狭いので
……
という顔をして隣に座る。
「まあ
……
僕のほうが先にいたので、ここのことは詳しいと思いますよ」
「たかだか一週間で先輩面すんなですわ!」
「あはは
……
ニュート様はどうしてここに?」
じぶんは悪いことはしていない。
ただ、ジャンタンはもしかしたらかぼちゃパンツをはいているのではないかと思って
……
。いつもどんな下着を履いているのか聞いただけなのだ
……
。
これってセーフだよね?
フランコールは黙って首を横に振った。
「ニュート様、アウトです」
「あー。ははは
……
ところでニュート様。寒くないですか? ニュート様は無種族だから、体も弱いでしょう?」
いつもならなんてこともないのだが、ニュートはなんとなく恐怖を感じた。ここは密室だ。
なんでおなじ独房に別々の魔物を入れるんだろう?
人間界から、新魔界から、魔物が増えすぎているので犯罪も増え、牢屋が追いついていないのだ。
「近寄んなですわー!」
壁を足場にしたゾービナスの器用な飛び蹴りでウルハムは若干後ろに下がる。
ゾービナスがいるあいだは大丈夫かもしれないけど、ずっとこのままというわけにもいかない。取り調べの際に、二人きりになったら、ニュートはウルハムをかわしきれるだろうか
……
まあ、大丈夫だろう。ウルハムだし
……
。
それにしても、ジャンタン! ジャンタンは地下工房で毎日こんな思いをしていたのか。ニュートはジャンタンに悪いことをしたと思った。
もっときちんと、厳しく取り締まるようにしないと
……
。
「その結果、お前は牢屋にいるんじゃないのか? わかってるのか?」
「あ、2世」
ベーケス2世まで!
ニュートは目を見開いた。眠そうなベーケス2世が粗末な寝床に転がっていた。
「ん? ああ、俺はちょっと良いところに寝床があったから寝ているだけだ。ぜーんぜん関係ないぞ!」
「うそですわー! あいつだってジャンタンをいじめたんですわー! ニュートちゃまー!」
「
……
チッ」
舌打ちが聞こえてきたニュートは鉄格子に勢いよく張り付いた。
ウィンチ!
斜め向かいの牢屋にはウィンチがいた。
ウィンチまでこんなところにいるなんて
……
。
「あら、ニュート。気が付かなかったわ。私? どうでもいいでしょう? ねえ?」
ウィンチのほうの独房にはいろいろな難しそうなものがあり、かなり散らかっていたが、とても広々としている。
ゾービナスとじぶんだけでも、あっちに住ませてもらおう。
「そうしましょー、ニュートちゃま!」
「勝手に決めるなっ。
……
決めないでくれる? ちょっと散らかってるし。
……
ね? いろいろ危ないでしょ?」
「あっ、じゃあ僕も
……
」
「せまいっ!」
いったい、どういうことだろう
……
。
ニュートが魔界にやってきてからずっと味方でいてくれる信頼できる家臣の大半がジャンタンをいじめているのは信じがたいことである
……
。
マーメルンも仲良しだけどからかってるし、フランコールも過失とはいえ前科(?)があるようだから
……
無傷なのはデビイくらいなものだろうか?
ふいに振り返ったウィンチが輝かんばかりの笑顔をしていたので、ニュートはうれしくなった。けれどもその理由がわかって少しがっかりする。
「スケルナイト!」
ウィンチの視線の先にいたのはスケルナイトだった。
「ニュート様、お戯れもよろしいですが、そろそろ出ていただかないと
……
」
スケルナイトは鍵束を取り出すと、さわやかな笑顔で牢屋のカギを開けた。おけがはありませんか、と跪いて手を貸してくれるので、ニュートはなんだかドギマギする。
「
……
」
「ウィンチ、すねるな。きみもほら、出してやるから。
……
ニュート様には、地下牢はふさわしくありません。ニュート様は次期魔界王なのですから、法律にしばれられることもないでしょう。夕飯の支度ができたようですよ」
それもそうだ。
ニュートは牢屋の外に出ることにした。恩赦をあげるから、みんなも出てもいいよ。
それにしても、スケルナイトはよくニュートがいる場所がわかったね。
「何、ちょうど、案内してもらったからね。ニュート様の場所はすぐに分かったよ」
どういう意味だろう?
なんだか入口のあたりの牢の鉄格子が、すごい力でひしゃげている
……
。よほど怖い魔物が入っていたんだろうな、とニュートは恐ろしくなった。
ちょうど、面会に来ていたフランコールがニュートを迎えに来てくれていた。
「ニュート様。ジャンタンに謝ってあげてくださいね」
もちろんだ。
さっと柱の陰に隠れるふっくらした帽子が見える。心配で、来てくれていたのだろう。
ジャンタン!
ニュートは駆け出してジャンタンに飛びついた。
「ば、ばかじゃないんですか、あんた! 自分で作った法律で自分で捕まるとか。もう! しょうがないですね! もう!」
ニュートはジャンタンに謝った。
「いいよ! でもしばらく口きいてあげませんから」
つーんとして歩くジャンタンを慌てて追いかける。
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