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柄
2024-06-05 18:50:52
2039文字
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面会拒絶!
【エメトセルク面会拒絶】
上記の言伝をヒュトロダエウスから貰った時、エメトセルクは額に青筋を立てた。旅から戻るなりエメロロアルスの元へ篭り、見舞いは拒絶され挙句にこれだ。
「あれは何をやらかした」
「いや
……
今回はちょっとあの人がおもしろ、可哀想というか」
「言え」
エメトセルクに責められ、ヒュトロダエウスは両手を上げる。
「うっかり呪いを受けたみたいで、心の中で思ってるのが全部口から出ちゃうらしいよ。すごかった」
とてつもなく面白かった、とヒュトロダエウスがニコニコ笑う。
「ワタシに対して、いつもありがとう、最高の親友、ずっと仲良くしてって」
別段、普段の彼女と変わりがない。エメトセルクを面会拒絶にする理由がない。エメトセルクは視界を切り替え、彼女の位置を確認する。いた。医務院にいる。他に怪我でもしたのか、とエメトセルクは眉を顰め、歩き出す。
「まって、ワタシもいく」
楽しそうに笑いながらヒュトロダエウスがエメトセルクに並んだ。何かがおきるっだろう、と他人を娯楽にしているのを隠しもせず笑うヒュトロダエウスにエメトセルクは溜息を返す。
「うっかり呪いを踏んだ馬鹿を叱りに行くだけだ」
「無事な姿を確認しないと心配でたまらないんでしょ。素直じゃないねえ」
ヒュトロダエウスと共に同僚兼一応は親友の枠組みに入れている女の元へ向かう。彼女は病室で報告書を書いていたらしく、辺りに人は誰もいない。開け放たれた扉からは真剣な表情の彼女がよく見えた。溜息を吐きながらコンコン、と壁をノックするとアゼムが顔を上げて、ハッとした顔をする。
「ハーデス」
なるほど、普段はエメトセルクとしか呼ばない彼女から珍しい声を聞いた。
「阿呆かお前は。不満不平があるのは承知してる。友人の無事ぐらい確認させ、」
エメトセルクの言葉は最後まで響かなかった。どこか甘えくとろけた声が響く。
「会いたかった」
くしゃとアゼムの顔が苦しげに崩れた。手で出ていけと示すが、残念ながらそれよりも早く彼女の言葉は溢れていく。
「きみに会いたかった」
恐ろしく、甘い音をしていた。
「ずっと想ってた」
けれどもそんな声を出してるとは思えないほどアゼムは苦しそうな顔をする。
「きみがいないと寂しい」
それはきっと、けして表に出すつもりのなかった感情なのだ。普段から感情と行動が直結している彼女が一度たりとも出したことのない、心だった。
「そばにいてほしい」
ふざけるな、と。アゼムはそう叫びたかった。側にいたいから、隠していたのに。
「きみと一緒に旅したいな」
出てくる出てくる、思ってもいなかった言葉が。思わず目を丸くしてエメトセルクは立ち止まった。アゼムはどこか諦めたような顔で、まるで怯えるように俯く。ここまで出してしまえば、決定的な言葉はもうすぐそこまで登っていた。
「きみがすき」
最初、エメトセルクはその音を、アゼムが発してるとは最初思えなかった。
「すき、ずっと、ずっと」
その意味を、図り兼ねてた。
「愛してる。触れてほしい。離れないでほしい。いつか、私のことを親友じゃなくて、好きになって」
ぐしゃぐしゃとアゼムの顔が崩れていく。
「でも、隣にいたいから、好きって言いたくない」
ようやく、彼女の面会拒絶の意味を理解した。エメトセルクは頭を抱えたくなる気持ちを抑えて、つかつかとアゼムの元へ寄る。その間も彼女の言葉は止まらない。余程、抱え込んでいたらしい。
「好き、どうしようもなく好き」
一歩、また一歩。近づくたびにアゼムは肩を震わせる。視線をあげなくたって、魂を見る目がなくたって、アゼムはエメトセルクが近づけば、微かな気配だけで分かってしまう。
「恋人を作らないで」
酷いわがままだった。独りよがりだった。絶対に、言いたくなかった。
「私を一番にして。私の呼ぶ声に応え続けて」
「お前は」
エメトセルクは手を伸ばしてアゼムの口を塞いだ。ぴた、と想いの音が鳴り止む。アゼムは怯えながら視線を上げて、そして顔を赤くしたエメトセルクを見て目を丸くした。
「余程、隠し事がうまいらしい。普段はあれほどわかりやすいのに、本当になんなんだお前は」
変なところで怒ってる。アゼムは困惑する。
「お前の隠し事が、お前だけだと思うな」
エメトセルクの手が離れて、また想いが溢れるよりも、早く。
アゼムの唇にエメトセルクの唇が重なった。柔らかく触れて、離れて。また、アゼムから言葉が溢れる。
「きみがすき」
「
……
私も、同じだ」
どこか拗ねたような表情でエメトセルクが呟く。え、と呟いて、すき、と繰り返して。
ぼふん、とアゼムの顔が染まった。
面白いものを見た、とヒュトロダエウスはそっと病室の扉を閉めて退散する。半日はあの呪いは続くらしい。その間、隠してきた思いの丈を思う存分伝えればいい。きっとエメトセルクは、その全てに応えるのだから。
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