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7flowerS
2024-06-05 15:32:24
1786文字
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むかしの話① 心偽分離
FGO織田姉弟の信勝の生前の話。崇拝する姉のために弟は自分も死ぬ謀反の計画を立てた。そのための宴で目を逸らしていたことに気付いてしまう。連載中の夫婦ごっこの過去話から抜粋。
その晩、信勝は悪夢をみた。いや、夢ではないのかもしれない。だってそれは全てかつてあってことなのだから。
それはこんな出来事だった。
尾張の外れにある城の大広間で秘密の宴会が開かれている。信勝は当初この宴会は半分以上が当日になって欠席を言い出すと思っていた。
だが予測は外れた。
(想像以上に数が多い)
影から信長への謀反の計画を囁いてから三ヶ月ほどのこと。陰謀の酒宴の席に集まった数は想像よりずっと多かった。
(
……
なんで僕に期待するんだか)
愛想笑いの裏で信勝は戸惑っていた。演技は得意な方ではないから集中しなければ。姉を侮る弟のフリをしないと根こそぎ彼らを殺せない。
「信勝様、あなたがいてよかった。信長様は駄目じゃ、慣例というものをわかっていない」
「
……
あはは」
宴の中心はちゃんと笑っていなければ。こんなに馬鹿がいるなんて姉は気の毒だと思った。けれど同時に恐れた。
信長は神になれる才を持つ。でも一人の人間だ。大量の矢を受ければ死ぬし、それは大量の刀や火縄銃でも同じ事だ。どんなに才能があっても数の力で肉体ごと殺してしまえば死ぬのだ。
この酒宴に集まった人間の数だけ信長は刃を向けられている。
(僕は馬鹿で姉上はすごい。こんなに当たり前のことが見えていないのか? ああ、だからこいつらは馬鹿なんだ)
問題は馬鹿でも集まれば力を持つことだ。姉は現状に固執する連中には目障りだと思われている。そして女だ。父が遺言で後継者に指名しても、前例に固執する連中からは強い反発はあった。
(僕はなんて呑気だったんだろう)
思えば自分は恵まれていた。
戦乱の時代に大名の子息に産まれ、母から愛され、愛する姉がいて満たされていた。食に困る人が大半の時代に衣食に不足したことはなく、高度な教育を受けたのに世間というものを知らなかった。
結果、信勝が人の悪意に気づくのは父の死後となる。
その結果がこれ、馬鹿たちは調子に乗って男子だとか御しやすいとか寄ってきた。あなたがいてくれてよかったと言われる度にいっそ生まれなければよかったと思った。
「あなた様がいなければ我々はあのうつけの言いなりだった」
「やはり跡継ぎは男子に限る」
「どうかあの目障りな女を討ち取ってください」
そう言われる度に知った。
(知らなかったんです、姉上。僕がいるだけであなたが悪く言われていたなんて)
信勝にとって信長は世界の全てに等しく。
己の非才が彼女に相応しくないことに泣くことはあっても。
自分のせいで彼女が貶められるなんて想像したこともなかった。
(だから殺す、馬鹿のお前等も足手まといの僕も)
案の定、謀反の計画を匂わせると菓子の匂いにつられた蟻のようにわらわらと寄ってきた。
「信勝様?」
「
……
ええ、この信勝、みなと同じ気持ちです」
わぁと歓声が上がる。
……
この部屋の人間全ての両目を抉って、心臓を抉り、痛めつけて殺してやりたい。
自分が姉への反旗になる? 姉の敵は自分の敵だ。なんて馬鹿な連中。馬鹿は死ね。死ね。死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
……
お前等も自分も死ね。
(大丈夫です、僕だけはずっと姉上の味方ですから)
心は鬼、顔は穏やか。そのまま信勝は微笑んで宴を続けた。
……
「本当にいいのか?」
……
もう一人の自分が耳元に小さく囁く。無視する、耳を塞ぐ、心を閉ざす。それでも囁きは続いた。
……
「謀反を起こしたら姉上にこいつらと同じ、姉上を女と馬鹿にしたやつと同じだと思われて死ぬんだぞ? きっと昔の思い出だってあんなやつの思い出と捨てられてしまう、死んでしまえば本当は味方だってことも伝えられない。きっと憎まれるんだ」
……
うるさい。
うるさい、うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい。うるさい!
見返りなんていらない。
裏切り者、恩知らずと思われても平気だ。
(僕だけ、僕だけ姉上を好きならいいんだ。好きになってほしいなんて望まない。僕が好きでいられればそれだけいい。ありもしない姉上の気持ちはいらない! どうせ笑わせること一つできなかった、なんて思われたって構うものか!)
……
「うそつき」
……
嘲笑して夢は消えた。
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