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アヤ
2023-04-22 20:58:48
1903文字
Public
レントキ
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この顔に免じて
20230423-
※ ワードパレット『この顔に免じて』迫る/溶かして/造形
※ ふたりともメイド服です。
※ 続きます。
『夢を見ている』と自覚しながら見る類の夢がある。『明晰夢』だとか『ルシッド・ドリーム』だとか呼ばれるそれは、うまくすると自身の意のままに夢の内容をコントロールすることも可能であるらしい。
目前で微笑む美しい造形を見上げながらこれが夢であると早々に気が付いたトキヤは、この状況が打破される展開を思い浮かべてみるが、
――
残念ながら、そう『うまく』ことが運ぶものでもないようだ。
「似合ってるぜ、イッチー」
夢のなかのレンは現実の彼と寸分違わぬ整った顔立ちをしている。そうして薄く形の良いくちびるをゆるめ、「かわいいよ」とうっとりした口調で続けるものだから、トキヤは嫌そうに顔を顰めてみせるのだった。
――
かわいいものか。仕事ならいざ知らず
……
地獄絵図だろう、どう考えたって。
見覚えのない寝室のような場所だ。キングサイズと呼ばれるであろう大きなベッドに横になっている。
改めてというように、トキヤは自身の身体の上に跨るおとこへ視線を向けた。一目見ただけでこの状況の異様さは(すくなくとも、『地獄絵図』なんて言葉で表現してしまうほどには)浮き彫りだった。自身の夢であるという事実から目をそらしたくなる。
すらりと長い手足、美しいラインで縁取られた体躯、
――
そのほとんどが、見慣れぬ白と黒の布たちで覆いつくされていた。
「
……
メイド服、ですか
……
?」
「
……
」
おそるおそる零した言葉に彼はなにも返さない。にこにこと人好きのする笑みを浮かべたまま、静かにトキヤを見下ろしている。
……
肯定と同義だ。
彼の纏う黒のワンピースは首元までしっかりとボタンがとめられていた。ふわりと膨らんだ肩
――
パフスリーブと言っただろうか
――
は、彼のおとこらしい体つきを程よく隠していた。そこから長袖が伸びて、先端には白のカフスがある。
ワンピースの上には肩の紐と裾にフリルをあしらったエプロンを身につけていた。腰のあたりでリボンを結び、身体に固定しているらしい。結ばれた位置より上にエプロンの布はほとんど存在しなく、名称までは知らないけれど一般的なメイド服より幾分クラシカルな印象を受けた。
露出がほとんど見られない形状は、彼の衣装としてはすこしめずらしいように思う。
――
否、『衣装』ではないのかもしれないけれど。
ワンピースの丈が長いせいで、行き場を失ったふたり分の布たちが白いシーツの上に散りばめられていた。
……
ふたり分?
ひゅ、と息をのむ。彼の格好にばかり気を取られ、じぶんが何を着ているかなんて気にも留めていなかったのだ。おそるおそる視線を落とし、
「
……
っ、」
トキヤは文字通り言葉を失った。
大のおとこ『ふたり』がメイド服を着て、見慣れぬ寝室のベッドの上だ。
――
やはり『地獄絵図』以外のなにものでもない。
退いてほしい、そういう意図を込めて彼の身体を押し返そうとしたが、
――
そこでふたたび気付きたくなかった余計な事実を目の当たりにしてしまった。
「
……
レン」
「ん?」
「これは
……
?」
「さあ、なんだろう」
とぼけるな。犯人はひとりしかいないだろうに。
トキヤの視界のなか、両手首は白い布で一纏めに縛られているのだ。プレゼントの装飾のように大きなリボン結びが丁寧に作られている。
「痛い? 緩めようか?」
「いえ、そういうことではなく
……
」
心配しているふうを装っているが、彼の口角はふんわりと持ち上げられたままだった。言葉にせずともこの状況をしっかりと楽しんでいることが伝わってくる。
――
夢のなかの彼に何処まで意思が存在するのかは甚だ疑問ではあるのだけれど。
あるいは、とトキヤは思う。これは、自身の奥深くにひそかに仕舞い込まれた『願望』に似たなにかなのかもしれない。
――
突飛な思考だなと思いながら、それでもこの状況を打破するすべは相変わらず浮かばないのだった。抵抗が意味を成すとは到底思えない。
……
それならいっそ。
「楽しもうぜ、イッチー。余計なことは考えずに」
「
……
」
両目を細めて、レンは蕩けるような笑みを浮かべてみせた。
きっとトキヤの思考はすべて彼に筒抜けで、今更取り繕ったとしてなにかが好転するわけでもないのだろう。
ハア、と大袈裟なため息を零したトキヤは、縛られた腕ごと上半身を持ち上げる。そうして彼の首の後ろに両腕をまわし、無防備な彼の頭をぐいと引き寄せた。
「
……
そこまで言うなら。
……
期待して良いんですか?」
「もちろんだよ、ダーリン」
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