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アヤ
2023-04-16 02:01:15
807文字
Public
レントキ
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臆病な温度
20230416
※ ワードパレット『臆病な温度』合言葉/心臓の音/二人きりなら
寒いですねと彼が言う。それなら一緒に眠ろうとオレが返す。
——
砂糖を煮詰めたみたいに甘ったるい提案を、口元をかすかにゆるめる彼は当然のように受け入れる。
キングサイズのベッドは面積と名称が与えるイメージばかりが意味もなく大きく、たいして役に立たないものだと思っていた。これまでずうっと。けれど、寂しさを助長させるだけだったはずの広いベッドも、白いシーツの中心でふたり身を寄せ合っているときは妙な居心地の好さを与えてくれるものであるらしい。
普段きちんと寝間着を身につけるイッチーもこの瞬間は『生まれたままの姿』でオレの腕におさまっている。
——
お揃いですよ、今だけ。そう言う彼は、とっておきの秘密を披露するみたいに悪戯っぽく微笑んでみせた。
重ねられた肌から彼の体温がじんわりと伝ってくる。細部まで手入れの行き届いた白い皮膚をぼんやりと眺めていると、
……
不意に、腕のなかで彼がわずかに身じろぎ、そうしてふたたび、寒い、と口にする。
「ああ、ごめん」
素直に彼の言葉を受け取ったオレは腹の辺りで丸まっている掛け布団を手繰り寄せようとしたけれど、顔を上げたイッチーがそうじゃないとすこしだけ不機嫌そうに首を横に振るのだった。
「
……
」
宝石のようにまたたく彼の瞳がこちらをじいっと覗き込む。その視線の意図に気が付いた瞬間、
——
心臓がぎしりと重たい音を立てた。
視線に誘われるように、形の良い彼のくちびるに自身のものをぴたりと重ね合わせる。ついばむようなキス。それだけで幸福だと錯覚してしまうような。
一種の戯れに似た今の関係を、オレたちはいつまで続けていくつもりなのだろうか。不安定なバランスで成り立つそれを失ってしまうことがどうしようもないほど怖くて、臆病なオレたちは、ひそかにふたつの身体を合わせては互いの温度に安堵している。
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