彫刻と見紛う造形を携えるおとこが死んだように眠っている。一糸まとわぬ姿でベッドのうえに横たわる彼を、トキヤは静かに見下ろしている。――ぞっとするほど美しく細部までととのった人間の、感情を伴わない無表情はえも知れぬおそろしさを周りに抱かせるものであるらしい。温度を感じぬ作り物のような身体を眺めながら、ぼんやりとそういうことを思う。……早く目を覚まして、その砂糖菓子のような甘い声で名前を呼んでほしい。――同時に、このままずうっと誰の目にも止まらぬ場所で冷たく眠り続けてほしいとも。一見して相反する『ふたつの願い』は、どちらも自身のなかに溜め込まれた彼への感情に起因するものだった。――ベッド脇に膝をついて剥き出しの彼の胸元に静かに頬をよせる。皮膚と皮膚が触れ合った瞬間、彼の生が刻まれる音をトキヤは確かに耳にした。心臓は正しく拍動し、――遠くないうちに彼は目を覚ますだろう。お世辞にも寝起きが良いとは言えない彼は、むにゃむにゃ寝ぼけまなこで「おはよう」ととぼけた挨拶を口にするにちがいない。そのさまを思い浮かべ、……彼の胸のうえでトキヤはくつりとちいさく笑みを零した。『ふたつの願い』、そのどちらをもトキヤは叶えるつもりでいるのだけれど……お利口さんなふうをよそおって、寝顔を堪能するだけのかわいらしい恋人でいようと思っている。――今は、まだ。
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