はるれに
2024-06-03 21:24:32
819文字
Public #SS(1〜30)
 

遊び


「無かったことにしねぇ?」
 夜の帳が下りた頃、オレはキャスターに告げる。
「どちらかが止めたくなったら止める、最初に決めただろ」
 耳鳴りがする。皮膚がひりつく。顔を上げられない。俯いた視線の先にはキャスターの爪先がこちらを向いている。
 立っているだけなのに居心地が悪い。足は地に根が張ったように動かない。
「だからオレは……
 空気が薄まってどんどん冷たくなっていくようだ。息苦しい。室内の気配はオレとキャスター。向かい合っている。二人しかいない、オレ達だけの秘め事。キャスターに何かを言われる前に、オレが全部話して終わらせなければならない。静寂が恐ろしく、乾いた舌を湿らせて急いで紡ぐ。
「同じオレ同士でヤるなんて一人でヤるのと同じだ、って言ったろ、そりゃそうだ。ひとくくりオレ達はクー・フーリン。オリジナルは同じで多少の違いは誤差だ。じゃあなんでオレ、じゃなくてオレはもう飽きたしオレじゃなくてもいいだろ他のオレを誘えば」
「飽きただぁ?」
 びくりと身体が震える。逃げ出したいのに叶わない。足は突っ立ったまま、前にも後ろにも踏み出せず、キャスターの言葉を持っている。
「こっち向けプロト」
 顎を掴まれて間近でキャスターの瞳とかち合った。
「飽きたってのが理由なら気に食わねぇ。けど遊びを終わらせてぇならそれでいい。オレとお前の遊びは終わりだプロト」
 死刑宣告は意外と冷静に受け止められた。キャスターの顔は怖いが、一方的な話に怒っているだけだろう。
「じゃあこっからは本気の話といこうや」
 キャスターは鋭い目つきをしている。何だそれ。終わりにしてくれ。僅かな望みも抱かせるな。オレは降りたい、キャスター。
 けれどやはり足は動かず視線は逸らせず、オレはキャスターの次の言葉を待っている。

















タイトルはお題配布サイト( https://nanos.jp/iwantfly/ )より