冬灯夜
2024-05-09 20:02:21
2091文字
Public ルミナリア
 

「恋とは何だと思いますか?」

ルミナリア ガスリゼ、リュシヴァネ
リゼットとガスパルに訊いてみたリュシアン
会話文のみ

→リゼット


「何だデュフォール、唐突に。まあ、実に見守りがいのある青春の一幕だとは思っているが?」
「からかうのもお手柔らかにお願いしたい所ですが……傍から見た感想ではなくて、リゼット教官ご自身はどのようにお考えかをお聞きしたいと思いまして」
「何か迷うことでもあったか?」
……そう、かもしれませんね」
「ほう、素直に認めたな」
「どうやらリゼット教官の中で私は捻くれ者の扱いを受けているように思うのですが」
「気のせいだろう。お前の親友に相談した方がよほど進歩のある答えが聞けると思うぞ」
「かもしれませんね。……まあ、ただ、彼らのそれを見て思う所がありまして。ならば他の方の色んな意見や見方をお伺いしたいなと。教官は私達が一番に頼る大人ですから」
「そう言われては邪険にも出来んな。相変わらず乗せるのが上手い」
「本心ですよ」
……
……
……そうだな。縛りたくなったら、もう恋なんだろうな」
「ふむ」
「だからさっさと手放してやるのがいい。きっと既によくない所に足を踏み入れている」
「手厳しいですね。他の誰にもその場所を譲りたくないというのは、当たり前に起こり得る感情ではないかと思いますが」
「実行するしないと感情は別の話だ。……お前の場合は、むしろ手放さない方がいい気がするがな。錨のようなものだ」
「錨、ですか」
「表現は何でもいい。ピンとは来ないか?」
「海辺育ちではありませんので。ですが、理解は出来ます。……そうですね、どちらかと言うと……夜空の星明りだとか、道標のランタン、のような表現の方がしっくりきますね、私は」
「ああ…………そうだな」
「少々感傷的な表現でしたかね」
「それを恥ずかしげもなく口にするのがお前だろう?」
「おやおや。本当に教官は私のことを何だと思っておいでなんでしょうねぇ」
ともしび。先を託せるかわいい教え子だと思ってるさ」
……、それは、ありがとうございます。ちなみに興味本位なのですが、教官のそれを表現されるなら、どのようなものでしょう?」
「興味本位、とはお前な……いや潔く口にするのはお前らしいが」
「あはは。お褒めに預かり光栄です」
「ふん。……ただの絡まった糸だ」
「なるほど。……赤いものかもしれませんね?」
――くだらん。この私に皮肉とはいい度胸に育ったものだ」
「皮肉だなんて面相もない。意趣返しくらいは大目に見て頂けると知ってのことです」
「まったく、減らず口は教えていないんだがな」


→ガスパル


「恋ねえ。ふ、この百戦錬磨のガスパルさんを頼るとは見る目があるぜ、リュシアンくん」
「ははは」
「いつもと変わんないトーンで笑うの止めてくれる? ちっともそんなこと思ってないってツッコまれた方がマシなんだけど!?」
「いえ何と言いますか、純粋に見解をお訊きしてみたかったので……不特定多数の渡り歩きではなく」
「あ、ああそう……え、もしかしてマジな相談?」
「そうですねぇ……相談というほど大仰なものでもなく、ですが真剣なご意見を頂けるならそれに越したことはない、という質感でしょうか」
「まーた中々ムズいことを……
「そうですか? ガスパルさんの得意なやり方だと思っていますが」
……言うねぇ」
「さて、それで如何でしょう。悩める若人に助言は頂けますか?」
「そうだなぁ……恋、か」
……
……
……
…………うーん。改めて考えてみると何か……
……正直なところ、そこまで真剣に考えてもらえるとは思ってませんでした」
「いや俺も自分でびっくりだわ。まあ……そうだな、面倒なもんだよ」
「面倒、ですか」
「そ。相手ありきだろ。自分じゃどうしようもない。相手の言動に一喜一憂しては、一人で勝手にのたうち回ってる。……そこまで分かってるのに自分の心さえままならない」
「そう、ですね」
「今更手放せねえんだよな……どうしたって」
……自分でない人の方がよいのでは、と。思うこともあるのですが」
「無理だろ」
…………どうでしょうかね」
……『あの子は多分、自分のことが好きだったのに』?」
「ッ!」
「『何も報いることが出来なかったのに、今、違うあの人にこんな――
――ガスパルさん」
「そんな顔すんなよ。悪かった」
「いえ……
「引きずるだろうよ、一生。それか、ある日ふと前より軽くなってることに気付いて愕然とする」
「ままなりませんね、本当に。決して消えはしないのに、変わってしまう。……それを悔いるのも傲慢でしょうか」
「さあ、な。……でもやれるとしたら。今キミが想う相手には同じ想いをさせないように、なら足掻ける」
……、そうですね。ええ。元より簡単に死ぬつもりはありませんでしたが、一層明確になりました。ガスパルさんもどうぞお気を付けて。もしそうなったら、私は彼女を慰める術はきっと持てないでしょうから」
……おう。お互いにな」


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