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kaede
2024-05-30 12:34:07
1861文字
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燐音くんが一彩くんの足にキスするはなし
燐一
⚠️わたしの癖(ヘキ)がつよい
キスする場所で変わる意味についてはお手数ですが各自で調べてください(興味があるなら)
「っ
……
にいさん」
「ん?」
「兄さんのすることが間違っているとは思わないけれど、
……
その、でも、やっぱりそれは変だと思うんだ」
「そうかァ?」
戸惑いを素直に伝える愛しい弟の素足を、シンデレラのガラスの靴みたいに丁重に掲げてもう一度。
足の甲、つま先、と順に愛撫すると、その足がこわばる。いや、緊張した、その程度の微かな振動にすぎなかったが、それでも、唇で感じ取るには充分だった。
「
……
嫌だったか?」
問う意味などとっくになくなってしまっている、とわかりきっているのにそれでも口にしてしまう理由は何なのか。
一彩は珍しく
……
日頃の態度からすれば珍しい、という意味であって、今この瞬間に限るのならいつも通り、困ったように俺を見て、言い淀んで、けれど結局、いつも通りにか弱く笑って答えた。
「嫌ではないよ」
いつか弟の口から、嫌だ、という明確な意思が出てくることを期待しているから、俺は問わずにいられないのだろうか。
いや、俺を否定しない言葉を、いくらでも欲しいからだろうか。
俺を裏切らない弟を見て、安心したいからだろうか。
だとしたら、最低な兄だ。
「でも、気にはなるんだろ?」
俺ではなく、最低な兄にはなりたくなかった俺が言わせたそれは、これまで一度も口にしたことのない、初めての言葉だ。
だから俺には、弟の返答を、これまでこの子と過ごした膨大な時間、記憶というデータベースからある程度、予測することはできても。
正確な返答は、わからない。
わかるのは、弟の預かり知らぬところで、どうか俺のことを見捨てないでくれ、と情けなく縋っている、愚かな己の身勝手だけだ。
一彩はすぐには返事をしなかった。何も言わないつもりではなくて、言いたいことを言葉に変換するのに手間取っているだけだ。ということは、この子の兄として生きてきた部分で、確信に近い精度で推察できる。
しばらく待てば予想通り、一彩が口を開いた。
「
……
その、うまく言える気がしないのだけど
……
まるで兄さんが僕にかしずいているようで、困るよ。それは僕の役目なのに」
「やっぱりお前は賢いな、一彩。最後の一言は余計だけどよ」
一彩がまた、黙る。俺の指摘が何を意味しているのか、わかったからだろう。
「前に俺が言ったこと、忘れちまったのか?」
「
……
『兄弟以上の関係になるなら、年齢の後先はあっても、立場の上下はない。それを忘れるな』」
「ちゃんと覚えてるじゃねェか」
俺たちが十数年培ってきた兄弟という境界を壊す時に、俺がこの子に言った、頼んだ、願った言葉。
「でもだったらやっぱり、兄さんが僕にかしずくような真似をするのだっておかしいよ。僕たちに上下はないのだから」
「別にかしずくとかそんな細けェこと、考えてねェよ。好きなとこにキスしてるだけ」
疑う、にも満たない、俺の言葉を信じられる理由を探している無垢な眼差しへ、軽く笑い返す。
「弟くんだって、キスするの好きなとこあンだろ」
「え?」
「確か、この辺が好きだよなァ。ここと、ここと、ここ」
首筋、鎖骨、胸の順に指先を下らせた俺に、一彩は反論しなかった。その通りだからだ。
「嫌ならもうしないよ」
「誰が嫌って言ったよ」
図星を指されてバツが悪いからって、俺の気持ちに転嫁するんじゃねェよ。
「むしろ嬉しいけどな。お前の本心が知れてよ」
「本心?」
「できれば口で言って欲しいけど
……
いや唇で言ってんだから、同じか?」
「さっきから兄さんの言っていることがよくわからないのだけど」
「まァ要約すると、弟くんに愛されて嬉しいなァ、っつーことだな」
疑問符を貼り付けたままの弟のかわいい顔へ。
唇へ。
甘噛みするよう口付けると、もうそれで一彩の疑問は融けてかたちを保てなくなる。どうでもよくなった
……
いや、どうでもいいことにしてくれた、んだろう。
優しい子だ。
「次はどこがいい?」
「え?」
「どこにキスして欲しい? お前が欲しいところ、どこにでもしてやんよ」
「
……
兄さんの好きなところに」
「ちゃんと言わねェと、また足にしちまうぞ」
「どうぞ」
振り向いた先で掲げられていた足に、心臓が跳ねる。
恭しく手を添えると、一彩が微笑んだ。
「本当はね、兄さんになら、頭のてっぺんからつま先まで、どこにされたって嬉しいんだ」
「
……
なァんだ。だったらそう言えっての」
何でも命じればいい。
「全部、叶えてやる」
お前は、俺の世界の統べてだ。
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