頻子
2024-05-27 18:16:11
2140文字
Public KODR二次
 

ピクシーかぶり(KODR)

ベーケス2世恋人っ!
なベケニュ(+ほかの家臣たち)
ニュートのベーケス2世に対する理解度は低め

 ベーケス2世は優しい。
 いつだってニコニコしているし、ニュートにはとても優しい。彼には、魔物らしい残酷なところはちっともなかった。
「ニュート」
 かすれる声で囁くように呼んで、ニュートを招き寄せる。それから、そっと手に赤い薔薇を持たせる。
 ニュートは思った。
 何よりこんなにきれいなお花をお世話する人が、悪い魔物のわけがないのである……

***

「え? ホントですか? あいたっ」
 ウルハムが急に机の上におでこをぶつけた。疲れているのかもしれない。
「い、いや、これは念力でっ……あ、いや。な、なんでもないですー」
「ニュートちゃま! 騙されてはダメですわー!」
 ゾービナスの帽子がかすかにへこんで、椅子ががたがた揺れていたが、すぐにぴょんぴょんと跳ね返って元の位置に戻った。
 ニュートは不思議に思って原因を探した。地震ではない。
「ベーケスったら、わたしたちがお茶会に混ぜてくださいな♪ って言ったとき、すごーくすごーく嫌そうにコッチを睨んでやがりましたのよー!」
「なんのことだか……。俺は〝もちろん〟と答えたじゃないか! もちろん、ニュートとの時間は貴重だが、ご飯はみんなで食べたほうがおいしいもんなー!」
「自分はご飯食べてないくせに……
 ぼそっと言ったウルハムがまたおでこを打った。
「なんのことだか、ま~ったく言っていることがわからないよな、ニュートー!」
 ベーケス2世を見てみると、ベーケス2世はにこにこしている。当然、幼馴染ふたりと一緒に休憩できてうれしいはずだ。ニュートもよくデビイと息抜きにそうしている。
……。まあな!」
「ニュートちゃま、となりとなり!」
 ニュートがとなりを振り向いたが、ベーケス2世はニコニコとした笑顔を浮かべている。
「うわっ」
 代わりにウルハムがまたバランスを崩した。
 机が傾いているのかな……
「うう、ニュート様。2世って、ニュート様が思ってるほど陽気じゃないですよ……
「そうですわそうですわ! 陰気なサイテー野郎ですわ!」
 そんなことはないと思うんだけどな……
 ベーケス2世は優しくて、陽気で、いじわるなんてことはないはずだ。
「ニュート、婚約者のいうことを信じられないわけじゃないだろ? な?」
「まーたそうやって……婚約者って……
「おやニュート様。ごきげんよう。お茶会とは優雅ですね」
 と、そのとき、さわやかな声がニュートに投げかけられた。
「あ、ドウモ……
 スケルナイトだ。スケルナイトは礼儀正しく挨拶をすると、「お会いできて嬉しいです」とそつなく言った。
 せっかくだから、スケルナイトも一緒に休憩するか、ニュートは尋ねてみた。
「いえ、せっかくですが。見回りの最中ですので。しかし、ちょうどよかった。湖畔に咲いている、きれいな百合を見つけたんです。あとで届けさせようと思っていたのですが……よろしければどうぞ」
 ありがとうとニュートが手を伸ばすが、スケルナイトは手渡すわけではなかった。ひらりとかわすと、ニュートの髪にそっと挿していったのだ。
「やはり白い花がお似合いですな。まるであなたのために摘まれたかのようだ」
 ……
 ニュートはしばらくぽかんとしてしまった。それから、「きゃー!」というゾービナスの歓声で我に返った。
「スケルナイト! かっこいいですわねー!」 
 ニュートははにかんで頷いた。
 いつも、なんて返せばいいか分からない……
「サマになってますわー!」
…………
「あっ、ほら、ほら! ニュート様、今、今ですよ! 2世が、今すごく……
「おおスケルナイト! 見回りの最中なのか? 毎日ご苦労! 元気そうでよかった! ああ、なんならお前も一緒に座るか? 遠慮することはないんだぞ。っと、おっと、もう行ってしまったようだな。残念、残念……
 ニュートは仕方ないんだ、とウルハムに言った。
 このように、ベーケス2世は虚像なので、たまにラグがあるのだ。
「え? そんなの見たことな……ぶあっ」
 ウルハムがなぜか水を飲み損ねておぼれかけたので、ニュートはハンカチをもって立ち上がろうとした。
「ニュート。みっともないから、食事中に席を立つんじゃない」
 なんとなく声のトーンに迫力があったので、ニュートは膝をそろえて座ることにした。

***

 かごのお菓子を一通り食べると、ゾービナスとニュートは川べりに遊びに駆けていった。散らかったテーブルをベーケス2世がなんとなく(癖なのか)片づけている。
「あのう。2世、なんか……。無理してません?」
……
 ウルハムに返事はしないがふきんは動いている。
「僕、ほら、ニュート様とは仲良しだし……2世の話もするんですけど。僕ら、やっぱり魔物なんだし。そのあたりのことは、ニュート様にもわかってもらったほうが……いいと思うんですよね。」
…………。そうだな」
「でしょうー。……あれ、なんで浮いて。あ~! なんでーーーー! ニュート様、助けてーーー!」
 ウルハムが空高く吊り上がっていったのを見て、ニュートが慌てて戻ってきた。ゾービナスはぴょんぴょんと飛びついている。