ひがあぎういな
2024-04-27 09:41:21
1732文字
Public アンデラ小説
 

今日は早めに帰ります

【アン風09】いわゆるカミコロIFでお付き合いのやり直ししてる恋人アン風です。同棲してる部屋の壁になりたい。

【今日は早めに帰ります】



ねぇ、ちょっと早いけど帰りたいかも」


風子がそう告げたのは、普通の恋人らしく付き合ってみる事を目標にした平穏な日々の中、デートに繰り出してしばらく経ってからだった。


「んあ?行きたがってた洋食屋はいいのか?」
「うんお店はまた今度でもいいかなって」


きっちりしたスケジュールは組んでいないが、俺らのデートプランはだいたい昼は何が食べたいとか夕食はあの店がいいとか食いもん中心で、今回はその例に漏れず風子が行ってみたいという店を最終目的地に据えて行動していた。
だからメインの店に行かないというのは、かなりの異常事態に思える。


「ふーーむ……それはいいが、どっか体調悪くないよな?」
「それは全然!大丈夫!ただ


まさか機嫌を損ねるようなことがあったのだろうか、そうでないことを祈りつつ遠回しに探りを入れたが、その心配は杞憂だったようだ。
ただ、風子が俺と目を合わせない様にさり気なく視線を外しているのだけが気がかりだが。言葉を邪魔しちゃ悪いので、気付いていても指摘は避け、しかしその言葉を受け止めるために並んで歩く二人の隙間を狭めて歩いた。


「なんかお家がいいなって」
……一応、今後のために理由を聞いても?」


あぁうんとモゴモゴ言い難そうに俯いて、風子は適切な表現を探している様子で首を傾げながら言葉を紡ぐ。


「外だとね、触りたいなぁって思っても我慢しちゃうから」
「?いやもう触っても不運は


今や俺たちは否定者ではない。だから不運の巻き添えなどは心配しなくても良いはずだそうでなければこうやって改まって“お付き合い”を仕切り直そうとしていない。

もとは相性のいや都合の良い能力を目当てに付き纏った、とても褒められたもんじゃない出会い方をしたからな。あのときの俺の風子の扱いは、思い返すたびに自分に対して殺意が湧くほど酷いものだった。本気で反省している。


「あ、違くて!その、恥ずかしいから外だとキス、とか」


表情に影が差したのを見られたせいか、風子は慌てて訂正を始めた。
しかし慌てたせいで咄嗟に繰り出したその言葉は、適切な表現を探して避けていた理由を察するに余りある、直接的すぎる暴露になってしまっているような。


「それはつまりしてほしいと解釈していいか」
「ダメだから!!日本は往来でそゆことしないから!!」


期待には応えねばと顔を寄せるが、手袋のない白い手で阻止されて軽く舌を打つ。
恋人がキスをするのなんか当たり前だ。世界的に見りゃカップルのスキンシップを奇異の目でじろじろ見る方が珍しいって事は風子も知っているし、実際ここが日本でなければ往来でもキスくらいしてくれるのに。


「気にすんなよそんなこと」
「無理ィ!ただでさえアンディは目立っちゃうし」


じっと大きな瞳がこちらを見上げて来る。俺は普段このかわいさを見せびらかして廻りたい気持ちがあって、服を選び髪をいじって、どうだこいつは最高の女だろうと自慢げに隣に立ってきた。
だが風子は自分が見られていることにちっとも気付かず、ただデカい俺が目立つから注目されるのだと思い込んでいると。なるほどな。


(確かに俺だっていい男だが、見られているのはお前もだぞ風子


そう思うと途端に自分の恋人を衆目に晒すのが惜しく思えてきた。羨望の眼差しは結局、色のついた目で風子を見てるって事だろ。例え脳内だけの話であっても、懸想の果てに夜のお供にされるのは許せないな誰にも見られないように大事に隠してしまいたい。

キスは止められたがハグくらいなら許されないだろうかと手を彷徨わせていたら、アンディは背も高いしカッコいいもんね、とちょっと拗ねたように尖らせた口先がポツリと言う。

……それは嫉妬か?お前も俺を他人に見せたくないと思ってくれるのか。
なんだ、一緒だな。


「は〜〜〜帰る。電車も待ってらんねぇタクシー拾う」
「えっえっそこまで急がなくても」
「俺が保たねえ、帰ったら覚えてろ」
「あれ、アンディ怒ってる!?えっなんでぇ??」



おしあわせに!