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ひがあぎういな
2024-02-01 18:00:30
2353文字
Public
アンデラ小説
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かかとを上げても届かない
【アン風05】少なくともアニメ14話以降の想定です。ユニオンの組織内部の状況は分からないことだらけなので、いっつも「こうだったらいいな~」を当然のように書いてます。ぼくの考えた最強のユニオン!
【かかとを上げても届かない】
「あ!これ、面白いって聞いたやつ!これ観たい!!」
「おうタチアナが言ってたやつな」
「うん!
…
アンディよく覚えてるね?」
ユニオンの飛行機は移動時間が手持ち無沙汰にならないための配慮として、シャワーブースに食事の提供、娯楽として映画やゲームなども楽しめるようになっている。
風子はこの移動時間を利用して映画をいくつも観ている。制服と共に支給された翻訳ネクタイのおかげで、日本語に対応していない海外作品も気兼ねなくみることができるようになったからだ。
今では言語統一の影響で、邦画であってもネクタイ無しでは観れなくなってしまったし、制服姿で映画を観るのは習慣になりつつあった。
「恋愛映画ばっかでよく疲れねぇな」
「今度タチアナちゃんの部屋に行くとき感想語りしたいから」
「そんなもんか」
「あと共通の話題、いっこでも多い方が嬉しいし」
タチアナは風子にとって不運の心配をせずに遊べる唯一の友だちだ。もちろんムイやミコとも友だちだが、同じ他者に触れられない否定者であり、同じ『君伝』ファンであるため、互いにしか分からない話を二人だけでする事も多かった。
長く友だちの作れない環境に居た風子とタチアナは、その貴重な友だちとかけがえのない時間を過ごす事に熱心なのだった。
************
「あ~すっごくよかった
…
さすがタチアナちゃんセレクト!」
「無名の監督の割に出来が良いな」
「最後のキスシーンさぁ
…
あえて映さないのニクいよね」
「かかとしか映ってなかったやつな」
「あれだけで伝わるよね〜」
きゃいきゃいと興奮しながら語り出す風子を、楽しめたようで何よりだと笑んで見つめるアンディ。
彼もまた風子の愛読書と聞いて『君伝』101巻を読破しており、風子の好みを把握する目的ではあるが顔に似合わず真面目に恋愛映画を観賞していたようだ。
楽しい時間はあっという間で、飛行機のアナウンスが着陸のため着席とシートベルトの着用を求めてくる。目的地についたなら真面目に任務に取り組まねばと、風子はきゅっと談笑の口をつぐんで、おしごとモードに切り替えた。
「んんーー着いた〜!身体伸ばせるの久々に感じますなぁ」
「何言ってんだ若ぇのに」
飛行機を降りるなりのびのびと両拳を突き上げて伸びをした風子。アンディはその腕を掴んで軽く上に引き上げた。
「んにゅーーー腕が伸びるぅ!!」
「そのまま5秒キープだ、猫背なおせ」
飛行機事故で両親を亡くしている彼女は少し飛行機に苦手意識があったものの、追手から逃れるため止む無くアンディと戦闘機に乗った事が荒療治となったのか、トラウマと直結している民間の旅客機以外なら乗れるようになったようだ。
ただ本人は無自覚なようだが、未だに飛行機に乗っている間は緊張しているようで、大げさに開放感を味わっているのも体が硬くなっているせいだと、アンディは気付いていた。
風子が怖さを忘れて映画に夢中になれるなら、その方がありがたい。
「あ、私全然届いてないじゃん
…
」
「何にだ?」
腕が伸びてしまわないようになのか、そんなに強く引っ張り上げているわけでもないのに必死でつま先で立って腕を助けようとしていた風子は、気付きを得てまじまじと正面のアンディの顔を見た。
「だって今つま先立ちしてたのに、届いても首元って感じで」
「ん?」
「かかと上げただけじゃキスって届かないんだなって」
一歩近づいて、自身の頭の上に乗せた手のひらを水平に動かしてアンディの鎖骨辺りに当てた。身長差がありすぎて、風子が映画の真似をしても唇は重ならないだろう。
それは事実だ。
…
事実ではあるが。
「やっとキスしてくれる気になったか」
「へ?」
自分が言った内容が、つまり“そういう意味”になると、風子は気付いていなかった。
「そういう時はな、ネクタイを引っ張ればいい。俺が屈めば届くだろ?」
「えっ
…
と、うん。そう、だね?顔、近
…
いね??」
映画の感想の延長線として何の気なしに言ったため、自分が誘ったのだと、いやむしろ懇願したのだと理解できず、届かないはずの相手の唇が、かかとを上げれば届く位置に降りてきている状況に戸惑った。
アンディがキスを欲しがっているのは理解してる。ロンギングの一件から隙あらばもらえないかと様子を窺われているし。でもこんなところで隕石群を降らすのは
…
そもそもここはユニオンのエアポートで職員さん達もいっぱい居て
…
あれ、さっきまでいた人達は!?
風子は状況を打破するために周囲の情報を探ったが『不死と不運がイチャついていたら即退避せよ』と、ユニオン内で行われている避難訓練で周知徹底されているため、もうこの施設には誰も居ない。
「
…
心配すんな、誰も巻き込まねぇよ」
「あうぅうう
……
!!」
周囲への被害防止という、一番の回避手段が奪われて追い詰められてしまった。すでに顔が紅潮しすぎて目眩がするほど熱い
…
冷静さを失った風子は、軽い不運で逃げるという常套手段を失念した。
「
…
いまは、これでゆるして」
かかとを上げず、懐に潜り込むように唇を寄せれば、当然まだ高い位置にあるアンディの唇には届かない。
喉に触れた熱さと、その口づけの意味に思い至ってまだ掴んでいた片腕を離した。走っていく風子。すぐに横付けされたユニオンの車。これで降ってくる隕石に巻き込まれるものは自分だけ。それが嬉しくて、隕石を抱きしめたいくらいだった。
頼まれたって離さねぇし誰に譲る気もねぇ。お前は俺の女だ。
だから、俺もお前のだ、風子。
喉への口づけの意味は【独占欲】
「いいね、最高だ
…
」
おしまい
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