ひがあぎういな
2024-01-22 21:13:30
1929文字
Public アンデラ小説
 

くすぐりノーダメージ

【アン風04】ネタバレ注意です。本誌基準のアン風が書きたくなったので…都合よく一緒に居ます。私はアンディのこと寂しんボーイだと思っているのでなんか微塵もスパダリしてないのも好きです。

【くすぐりノーダメージ】


「ん?」


ユニオンの基地内にある風子の部屋は、巨大組織のボスの部屋とは思えないぬいぐるみなどの可愛らしい小物と、暇さえあれば勉強か鍛錬をしようとする向上心ゆえの分厚い専門書とゴツい見た目の各種ウェイトが混在する不思議な空間だ。
しかしそこに厳つい男が加わると、一気に同棲感が出てそれが部屋のあるべき姿のように錯覚するこの男、アンディの部屋はちゃんと別にあるのに。


「なんでおなか触ってあ、またくすぐるつもりだったんでしょ!」
「いや
「残念でした、もう鍛えてるから効かないもんね~」


組織の規模、仲間たち、部屋に置いてあるものそのどれもが自分の居ぬ間の風子の努力を物語っていて、頼もしさと誇らしさに混じって湧いてくる少しの寂しさから、鍛えられた筋肉質な身体につい、触れてしまった。
あの指先を包むような柔らかさは無くなってしまったんだな、と思いはするが別に元に戻って欲しいわけでもなく、やっと彼女が腕の中に戻ってきた今、最高に幸せなのに知らない風子がいる事が、離れたまま過ぎた時間がひたすら惜しい。

ただ甘えたくなったのかもしれない。組織を維持するためにユニオンは表向き1企業として存在している。今は取締役会の会長として最終決定のお伺いだけが回って来るとはいえ、忙しい事に変わりは無いだろう。
端末機器のディスプレイを見つめて黙々と仕事をしていた風子の背後からちょっかいをかける様は、親の気を引きたい子どものようだ。


「ウソだと思うならくすぐってみてもいいよ」
言ったな?」


そんな時に風子から与えられたその言葉は、寂しさを募らせた不死の男にとって、もっと触っていい甘えていいと、言ってるようなものだった。

最初は昔そうしたように指先でくすぐってみたが、そんなもんじゃ足りなくて、少しずつ背後から距離を奪っていく。


「どう?全然効いてないよ!……アンディ?」
「あぁ、じゃあこういうのはどうだ」


へその下くらいを服の上から爪でカリリと引っ掻くと、風子の肌がざわついた。ぎゅうと拳を固く握って胸の前に持って来る仕草を久し振りに見て、その懐かしさにほくそ笑む。


っアンディこれ、違くない?」
「何が違う?」
「くすぐりと、違うよね」
「どうだろうな」


風子の戸惑いをわざと無視してカリカリと、爪先であちこちくすぐり倒す。


「これ以上はダメもう、ギブでいいから!」
「なんで駄目なんだ、笑ってねぇし平気なんだろ?」


アンディは自分でも良くないイジワルをしていると思うのに、構ってもらえるのなら叱られてもいいと思っていて止まれなかった。風子の止めようとする手も捕まえて、手の平の真ん中を爪で執拗にくすぐってやれば反射的に体を引こうとして、その小柄な体躯は後ろにいる男の胸の中にすっぽり収まった。

風子、風子。以前は不死だから気軽にもらえた不運が、今は規模がデカすぎて危険だから特に触るなと注意される側になった。前みたいに俺の上に乗れよ、ヨダレ垂らしていいから寝てくれよ。触らないように気を付けるから、我慢するから。

許された服越しの触れ合いが46億年の孤独を搔き立てる。触れないことがこんなに寂しいことだなんて、お前の傍にいたのにまったく理解していなかった8歳の少女にこの苦しみはあまりにも酷だ。
いつの間にかくすぐる手は止まり、ただただ風子の体を抱きしめていた。散らばった大事なものをかき集めるように何度も何度も抱きしめ直す。そんなアンディの不躾な腕の中で、風子の声が苦しそうに呟いた。


これ以上は欲しくなっちゃうから、だめ


何かを訴えるように、じっとアンディの顔を見上げる風子の瞳はうるりと熱さで濡れていて、それは、欲しいと言っているのと、何が違うのか。
太陽の熱にすら慣れたアンディも、この熱は堪えられなかった。


ッ風子!!」
「ギャーーーだからダメってNO!アンディ、ステイ!!」


もう地球が砕けたって構うものかと、風子の唇を強引にでも奪おうとして思いっきり掌底を顔面に受けたが、その程度のダメージで止まる不死ではない。逆に開始のゴングのようにそこから取っ組み合いになった。


「え?なんか風子ちゃんの部屋が騒がしい敵襲!?」


たまたま部屋の前を通りかかったジーナは異常を察知するや否や、ボスであり親友の風子の身を案じてバァン!と蹴破らん勢いで風子の部屋の扉を開き。
そしてその親友が仲間のはずの男にキャメルクラッチを極めている姿を目撃した。


「えーっと……どういう状況!!?」



おしまい