ひがあぎういな
2024-01-20 00:52:43
2308文字
Public アンデラ小説
 

どっちがいい?

【アン風03】チカラくん加入後のアンディが風子ちゃんを構いたがるお話。選択肢を与えられるとどっちか選んでしまう心理を悪用してる悪いアンディとまんまと引っかかってる風子ちゃんが書きたかっただけです。

【どっちがいい?】


「お、いたいた。風子!」
「あっアンディどうしたの?」

特殊訓練のプログラムをこなすため、トレーニング場でチカラと共に汗を流していた風子のもとへUMA製のスーツを纏った男が片手を上げながら歩み寄る。もう片方の手には何やら袋を提げて。

「熱心なのはいいが、特殊訓練のスケジュール越えてんぞ。ちゃんと休め」
「わぁホントだ!全然時間見てなかった!」
「ホレ、差し入れだ。どっちがいい?」

袋から取り出されたのは良く冷えた炭酸飲料オレンジとメロンの絵がそれぞれパッケージにある。鮮やかな色が水滴で光っていて、どちらもおいしそうだ。

「うーーーーんじゃあメロン!」
「おし!じゃあチカラはオレンジな」
「あ、どうも、ありがとうございます!」

当然のように風子が優先されているが、もはやこの組織にそれを疑問に思う者はいない。
この組織どころか敵対組織にすら『不死と不運は恋仲』と認識されているのだから。

「くぅ~運動したあとの炭酸、沁みる~~!」
「最近はスポドリばっか飲んでたから、久々に感じますね」
「炭酸ってのは血行促進の効果もあんだぜ、代謝が上がれば疲れも取れやすい。糖分にさえ気を付ければ悪いもんじゃねぇ」
「「へぇ~~!」」

風子とチカラは意図せず声がハモって、顔を見合わせて笑った。


************


「風子、キスとハグどっちがいい?」
「はい!?」

それはいつも通り組織内の長い廊下を隣り合って歩いている時、雑談がふと途切れた隙間に投げかけられた。

「どっちなら今できるか答えろ、さんハイ」
「え~~~っと、とりあえずハグで!」
「よしきた」

アンディは風子に向かって両手を広げた。
服のUMAクローゼスことクロちゃんがしっかりその腕を袖と手袋で覆ってくれているのを見て、風子は不運による事故が起きないことを確認してからその腕の中へ飛び込む。
恥ずかしいがキスよりはマシだ。アンディの大きな体は胸元に顔を押し付けながら腕を回して、ようやく指先が重なるくらい厚みがあった。

アンディの腕の中でぎゅうぎゅうに抱きしめられながら、心地よさと恥ずかしさの天秤がせめぎあっていた風子は、ついに恥ずかしさに負けて彼の背中をぺしぺし叩いた。

「はい、おわり!もういいでしょ!」
「なんだこのまま終わりかよ。キスの方もして良かったんだぜ?」
「選んだ意味ないじゃん!!しーまーせーんーー!」

なかなか解放してくれない腕、近づく顔に焦り手足をばたつかせる。
この体勢では手袋を脱ぐこともできないクロちゃんに頼めば顔は触れられるが、離れなければ不運は発動しない。つまり、以前のような軽い不運で逃げる手は使えない。

しまった罠だったか!と心の中で後悔していたが、ぎゅっと目を閉じたらすぐにパッと離された。

「そんな心配しなくても無理強いはしねぇよ」
「もーからかわないでよね」
「いや隕石群は本気で欲しいが?」
「いい加減あきらめて!」

だっと駆け出す風子の顔は耳まで真っ赤だった。
アンディは無理に追わず、あっという間に点になったその後姿を見ながらヒュウと口笛を吹く。

「速くなったなさっそく訓練が役に立ってるぜ」


************


「風子、口と頬ならどっちがいい?」
「んぇなんの話?」

その二択が出されたのは調査任務のための散策の時だった。

「キスされるならどっちがいいかって話だ」
「またそれ!?」
「言わねぇなら勝手に決めるぞ、さーんにーいいーち」
「ほっ!ほっぺで!おなしゃす!!」

建物の入り組んだ街中でアンディを振り切ろうものなら、確実に迷子になる逃げられないならリスクの少ない方を選ぶしかない!

「で、でも!さすがに人のいないとこ行ってからね!」
「んだよ、ずっとくっついとけばいいだろ」
「ダーメ!こんな街中で何かあったらどうすんの」
「しょーがねぇ、さっさと片付けるか」

そう言ってアンディは本当に任務をさっさと片付け、人のいない荒野へ飛び立った。

『ちょっと風子?ゾンビとどこに向かってるのよ』
「あ、タチアナちゃん」
「なんでもねーよ野暮用だ、基地にはすぐ戻る」
「寄り道しちゃってごめんなさい」

エンブレムの通信から少女の声が心配そうに響く。
自分達の位置情報はユニオンにリアルタイムで把握されているらしく、予定にない不審な移動をしているのがバレたようだ。

『危険がないならいいけど何しに行くの?』
「えーーーーっとぉ……
「あーアレだ、うっかり触っちまったから人のいないところで不運もらって帰んだよ」

正直に答えづらい内容をどう言っていいものか、返事が出てこない風子に助け舟を出すためアンディは息をするように嘘をつく。

『あらそう言っとくけど任務中の行動は報告書に書かなきゃいけないんだから、どうせだからって余計に触るような真似すんじゃないわよ?セクハラゾンビ』
……
『ちょ、なんで黙るの!風子逃げて!!』
「アハハ

タチアナの心配は加速した。
頬にとは言え、今からキスされる予定だとは絶対言えない

ちなみに報告書にはやり取りをぼかしつつ「どうせ食らうなら大きい不運が欲しかった」という事にして、アンディが“特殊接触”をした事は正直に書く羽目になり。
アンディはタチアナちゃんに罵られ、ボスであるジュイスさんには「仲が良くて何よりだ」と笑われ、事後処理を担当したニコさんからは「余計な仕事を増やすな」と真っ当に叱られることになった。


おしまい