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ひがあぎういな
2024-01-18 08:58:34
2882文字
Public
アンデラ小説
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クレーンゲーム
【アン風02】アンディとお買い物デート(?)中にぬいぐるみを取ってもらった風子ちゃんのお話。少なくともヴィ戦よりは後の想定です。付き合ってないのにナチュラルいちゃいちゃするアン風概念だいすき侍でござる…。
「わぁーこの子かわいい!」
まだ午前中の人通りのまばらな街を相棒とともに歩いていた時、風子は店先に置いてあるクレーンゲームのケースの中に目を奪われ足を止めた。
ガラスに張り付かんばかりに顔を寄せて瞳を輝かせている少女に、なんだなんだと少し先を歩いていた男は振り返り戻って同じ物をのぞき込む。
「お、パンパンダ
…
か?」
「モノクロバージョンだって!」
よくあるカラーバリエーション商品だが、パンのパンダという小麦色のキャラクターをモノクロにしちまったらそりゃただのパンダじゃねーかと思わなくもない。
しかしデリカシーの無さを時々注意されるアンディも、そんなことをはしゃぐ風子の前で言う気にはならなかった。
「プライズ限定かぁ
…
」
「欲しいのか?こんくらいならすぐ取れるぞ」
「えっすごいね!私こういうの取れたことないよ」
いっつもパパに取ってもらってたし
…
と口ごもる。
自身の能力を恐れてずっと引きこもっていたため、ゲームセンターなどの混み合う空間に行った記憶は幼少期にしかない。取れた事がないのも必然だった。
「まぁアームの強さによるけどな」
アンディは俯いた風子の頭をポンポン撫でるとポケットから25セント硬貨を取り出して4枚、コイン投入口に入れた。
騒がしいほどのBGMが流れ始め、レバーに従って3本爪のクレーンが移動する。風子はソワソワしながらクレーンの動きに合わせて筐体の側面に移動したり、落ち着きなく結果を見守っている。
頭はデカすぎてアームで掴みきれない
…
狙うは胴体。ただ、クレーンの掴む強さは景品が取りにくいように弱くなっていることもある。その辺は様子を見て
…
などと考えていたら、もにりと形が変わるほどしっかりホールドされ、そのまま出口まで運ばれあっさりGETできてしまった。
「
…
楽勝すぎんだろ」
「すごーいアンディ!一回で取れちゃった!」
腕を魅せるまでもない楽な設定に肩透かしを食らったアンディの気持ちをよそに、童心に戻ったように風子は尊敬のまなざしですごいすごいと讃えてくる。
愛嬌のある奴だが、それが魔力じみていて怖いくらいだ
…
一緒に居るとこんな何でもない時間が楽しくてしょうがない。ただの観光だって何でも新鮮そうに興味を持ち、メシを食うだけで幸せそうな表情を惜しげもなく晒し、ちょっと口説けばすぐ赤くなって取り乱す。
…
そんな風子の姿に惹きつけられて已まない自分にアンディは気付き始めていた。
事実、衝動的に口づけたいと思うことが何度もある。
そんな時でも頭は冷静で、風子を傷付けやしないか、不運の能力への対処は?などとキスが出来ない理由が積み上がって理性を助けてしまうのだ。
(俺はいつからこんな臆病になっちまったんだ)
クレーンゲームの景品取り出し口に手を入れると、柔らかいぬいぐるみの感触に指が沈む。その感触がどことなく風子と似ている気がして、アンディの胸中に悪い企みが芽生えた。
chu、とあくまで自然に軽く、しかしわざと音を立ててぬいぐるみにキスをした。
そして何事もないかのようにそのまま風子に手渡す。
「ほい、大事にしろよ」
「えっ!あ、うん
…
いや、あの今
……
えぇ
…
?」
「なんだ?要らなかったならタチアナにでもやれよ」
「いや要る!要ります!ありがとアンディ!!」
明らかに困惑を隠せない反応が予想通りすぎて、笑いを隠して平静を装えば、風子は自分の常識を疑ってツッコんでいいのか分からなくなったらしい。顔を真っ赤にしながらも渡された白いパンパンダを胸にしっかり抱きしめた。
************
基地に戻るための飛行機内で、風子は座席の後方に備え付けられたパウダールームで私服からユニオンの制服に着替えていた。
今回は任務ではなく、休暇を利用した私物の買い出し兼デート(アンディ曰く)だった。そうは言っても二人でのお出かけはいつものことだし、とびきりのオシャレもしていないし
…
デートらしいことなんてしてないけどね。
そう思った風子の視界にパンパンダのぬいぐるみが映る。
(これだけちょっと、デートっぽかったかも)
クレーンゲームで取った景品をプレゼントする流れは少女漫画でも鉄板だ。
ただ、アンディがなんでぬいぐるみにキスしたのかは、結局訊けなかったから分からないままなんだよなぁとモヤモヤしつつ着替えを済ませ、ぬいぐるみを抱き上げる。
(うらやましいなって思っちゃった)
神を倒すという目標がある今、不運の威力を上げるために風子はアンディを好きになる必要がある
…
だが好きになればなるほど、気安い接触は出来なくなるのが否定能力の皮肉さだ。
好きな相手だからこそ、容易にキスができない。触れるものに不運を付与してしまう風子にとって口づけをねだる事はつまり、相手の死をねだるのと同義なのだから。
いくら不死とはいえ、不要な痛みを与えたいとは思わない。そんな風子の目の前で、見せつけるようにアンディの口づけを与えられたぬいぐるみ。
ぬいぐるみ相手にうらやましがるなんておかしいよね
…
と座席に戻る一歩前にこっそりと。
…
アンディを真似るように、同じ場所にキスをした。
いけないことをしちゃったな、と内心照れながら座席に戻ろうとした風子は、相棒の様子がおかしいと気付くのに少し時間がかかった。
「アンディ通るよー
…
ってあれ、どうしたの?」
お腹いたい?それはないか
…
と自問自答している風子に背中を擦られながら、アンディは膝の上にある握りこぶしに額がつくほど丸まっていた。
…
本来なら、座席後方にいた風子はアンディの視界には入らないのだが、風子が戻るまでぼーっと外を見ていた彼の目には、窓に反射した風子の姿がばっちり見えていたのだ。
自分から仕掛けた悪巧みで自分が食らうことになるとは
…
まさに因果応報。
「寝てないよね?アンディ」
「ああ。悪いがちょっと体貸してくれ
…
」
「うん
…
うん?私どうすればいいの?」
「膝に乗っててくれ」
「よくわかんないけどその方が楽ならまぁ
…
」
なんの疑いもなく、いつものようにアンディの膝に座った風子は、そのまま先ほどの背を丸めた姿勢に戻ったアンディの膝と上半身に挟まれてしまった。
ちょうど風子のお腹にアンディの耳が当たるような格好だ。
「
…
え、ホントに具合悪い!?大丈夫?」
「あ〜
…
少し心臓に負担がかかってるだけだ」
「大変じゃん!えっと
…
痛いの飛んでけしか思いつかないや
…
何もできん私
…
」
「フハ
…
いいね最高じゃねーか、それやってくれ」
「えっホントにやるの?効くかなぁ」
心配も本当だし、いつになく甘えられて悪い気はしなかった風子は、それが子供だましなおまじないと分かっていてもアンディの背中を撫でながら言ってみる。
「痛いの痛いの、飛んでけ~
……
どう?」
「多幸感がやばい」
「タコ?なんて?おなかすいてる?」
「
…
帰ったらメシにすっか」
アンディの耳元で風子のおなかがくきゅうと鳴った。
おしまい
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