ひがあぎういな
2024-01-12 16:51:02
3819文字
Public アンデラ小説
 

【love】

r15⚠【不死不運01】作詞作曲:梶浦由記さんの「LOVE」という曲を読み切り版の不死不運に当てはめて書いてみました。スキンシップ頻度マシマシR15でよろしくお願いします…今度は健全なの書こうって思ってたはずなのに(((原作がどすけべえっちなのが悪い(責任転嫁)※キャラの名前は出さず不死不運表記です。
◇雑談◇推しのイメージソング探すの楽しいですよね、この曲はちょっと片恋っぽい切なさがあって読み切り版不運ちゃんのイメージになりましたが、風子ちゃんだったらaikoさんの「カブトムシ」みたいな可愛切ない雰囲気が合うかなぁとか妄想しています。「創聖のアクエリオン」はアン風かヴィクジュイかって言われたらヴィクジュイだと思って聞いていますが、どっちもわかる~派。ちなヴィク→ジュイなら米津さんの「カムパネルラ」おすすめです。吉岡亜衣加さんの「十六夜涙」はシェンムイっぽい?(まだ探し中)中華風ベタ甘曲ならGARNiDELiAさんの「桃源恋歌」好きです。谷山浩子さんの「不眠の力」はゴースト編のニコイチ夫婦っぽい苦しい曲で良き!です。アン風はよカラオケデート行っておっきいハニトー食べて(2023年12月3日 00:15)

【love】

雨と言うには些細な、でも小雨と呼ぶには外にいるのが憂鬱になる湿った日の事。
こんな日は引きこもるに限る。昔取った杵柄だなんて呼べるものではないけれど、こういう状況でもまぁ深刻にならないのが元引きこもりの数少ない取り柄だった。
室内で一人きりでも案外ヒマは潰せる。もう一人居れば比べるべくもない望んでいるかと言えば、微妙だけど。
雨に降られてとりあえずで逃げ込んだのは、各地に点在する不死のアジトのひとつ。
一人で過ごす前提の最低限なスペースに小さいラジオと大きいベッドが置いてあるだけの空間。コイツにしては物がない簡素なアジトにちょっと首を傾げたら、不死曰く「ひと晩過ごすのに使っただけだからな」と。
なるほどね、過ごした時間が長いアジトほどあれこれ物を持ち込んでるってわけ。そりゃそっか。
「で、なんで服脱いでんの」
「あ?他にする事もねぇだろうがよ」
そこはせめて、雨で濡れたからっていう真っ当な返事が聞きたかったな。
まぁそうなるとは思ってたけどさ、スナック菓子みたいにヒマ潰しとして嗜むには、少々爛れているなと思う。
押し倒されても逃げなきゃと思わない自分にいつからなったのだろうか、それでも簡単に唇を許すのは癪で、口づけをねだる顔を両手で止めると思いのほか素直に止まった。
前から気付いていたけどコイツ、自分勝手なようで時々拍子抜けするくらい聞き分けがいいトコあるなぁ。
触っちゃったしもう、いいか。手に包んだ男の頬に唇を寄せた。
そんな子どもっぽいキスで紅潮するなんて今さら感ハンパないんだけど、これからする事がわかってるからこそ、熱くなった息をこっそり静かに吐き出した。
触れ合いが始まったら、不幸が来ないように事が終わるまでどこかしら肌を触れ合わせておかないといけない。私の名を呼ぶ男に、わかったよと手袋のない素手を差し出す。
大きな手、繋がれ、握りこまれた手。
これが私達の始まり方だった。
服の下を撫でる手が上へ進むにつれ、雨で少し冷えた室温が肌を震わせたけど、不死の声が私の名前以外忘れちゃったみたいに何度も呼ぶから、体温は上がる一方だ。
慣れたんだか慣れてないんだか、まるで今日が初めてみたいに心臓だけがうるさい。
「今日はえらく静かだな」
わざと息を詰めて押し黙っているのがバレて、少し心配を滲ませた声色で囁かれた。
声を出すのが恥ずかしいとか思ってるわけじゃない。ただ、名前を呼ばれるのが好きなだけアタシの名前を呼ぶその声を、聴いていたかっただけ。
ムカつくから絶対教えてやんないけど。
繋いだ手を引かれ、頑なに閉じられた口をほぐそうとでも言うのか、少し乱暴に唇が重なった。まるで肩甲骨を掴むみたいに背に添えられた手が熱い、頭を掴まれたら避けられないのにさそうやってちょっとだけ逃げ道を残すのズルいよ。
触れられる事を望んでるって、自覚させないで欲しい。
背中の窪みに嵌った小指すら好きでたまらないんだ、こっちは。
もう二度と手に入らないと思っていたものがここにある。
忘れていた、人肌の心地良さ。
知らなかった、キスでこんな気持ちになるってこと。
コイツに無遠慮に触られる度、世界から切り離されてしまったような寂しさがひとつずつ消えていく気がした。
私のもたらす不幸とその先にあるかもしれない死。
死にたがりの男が欲しがっているのがそれでもいい。
アタシの手で触れていい温度がここにある繋がれた手がくれる安心は、他の何にも換え難かった。
お互いのどちらが先に死に辿り着くとしても、その最後まで、死が二人を分かつまで、この温かさが私を慰めてくれると信じていいだろうか。
そんな都合のいい夢想に浸った頭の片隅で、事の終わりに離れていく手を切なく感じながら眠りの中に意識を落とした。
*****
出会ってずいぶん経ったように思ってたけど、まだ半年くらいしか経ってないなんてね。冬ももう終わりかな、外気は相変わらず寒いのに木々の隙間からキラキラ落ちてくる日差しは暖かそうに見えた。
庭園なのか森なのか、その奥にある白い家屋敷?今日からしばらく過ごす拠点がここらしい。
キレイなところだねって、自然と微笑んで話し掛けると、強面の男も得意げにフッと笑う。
「今までのアジトと比べりゃここは生活向きかもな」
そうやって優しい顔されると、勘違いしそうになる。
この頼りない気持ちを恋と名付けられたら楽になれるだろうか。
いや少なくともコイツはそんな気はないだろう。
だから関係に名前をつけて、想いを明確にする必要はない。
分け合うことのない想いは無いのと同じだから。
アタシはそれでも平気。このぬくもりがあればいい。
明るい寝室に少し抵抗感はあったけど、今までの薄暗い行為と比べると、この触れ合い方が正しい事のように思えるのが笑えた。
まるでホントにここで、家族として生きていけるような
そんな妄想、虚しいだけだ。
私達のような【否定者】と呼ばれる異能力者を狙う、あらゆる組織に狙われては戦って、アジトを転々とする日々では。
だけど少しだけ気になっている事がある。
アタシが呼ぶ不幸は特殊な触れ方ほど威力があって、キスもそれ以上も死にたがりが喜んで求めるのはまぁ分かる。
でも体力を消耗すると大した威力が出ないのに、きっちり最後までする必要はあるんだろうか?接触時間の長さを稼いでいるのだろうか、それとも普通に性欲処理なのだろうか。
いつも終わる頃には力尽きて、不死が死ねるほどの特別な不幸は起きなかった。
この触れ合いは彼にとって、どんな意味があるのだろうか。
「何考えてる」
「別にただ意味あるのかなって」
「ア?」
「死なせてあげられるわけでもないし」
行為の前に上の空なのを見咎められて、つい言わなくていい事を口走った。
「アンタも加減を覚えなよ。毎回抱き潰されてたらろくな不幸来ないじゃん」
「そりゃあ、今死ぬつもりはねえからな」
え?」
自殺がきっかけで出会った、毎秒死のうとするような男が言う言葉には思えなくて、普通に考えたら当たり前の台詞にギョッとした。
「あ、アンタにも死にたくないタイミングあるんだね
「ったりめーだ、今俺が死んでお前一人にしたらすぐ捕まるだろうが。んな寝覚めの悪りい死に方しねえよ」
「は、何アタシのためってこと?」
巻き込んじまったからにはな、とは言うけど私も否定者である以上、いつ目をつけられてもおかしくなかった。そうでなくてもどの道あの日死ぬつもりだった。
コイツがいなくなったら役目を果たした達成感と共に死ぬつもりだし、その前に死んでも駄目で元々だから別に良かった。
そんな私のやけくそな人生設計を知らないコイツは、自分の死後に残された私の心配をしているらしい。
「守るって決めたからには死んでも守るぜ、文字通り。だから俺が死んでもお前は死ぬな、どーせ寿命で死ねるんだからよ」
……ッ」
なんだ、気付いてたのか。
「やめてよ、追手がなくなったってアタシの体質は変わらないじゃん一生孤独に生きるなんて耐えられないよ」
「だから今死ぬ気はねえって言っただろ、テメェの寿命まで数十年かそこら一緒にいればいいだけだ」
「一生付きまとう気!?そんなの恋人でもないのに」
言ってて虚しさがぶり返してくる。
コイツがいなかったら誰にも触れられないし、髪すらまともに切れなかったクセに関係を選り好みしてるのが馬鹿らしいなんてこっちは真面目に悩んでるってのに。
「バカが、一生一緒にいる恋人なんていねーよ。それを言うなら夫婦だろ、いや家族か」
「んなっ
「カタチを気にすんならいっそ式挙げるか!お互い身寄りもねえし二人っきりでな」
「そんな偽装結婚みたいなのやだよ!!好きでもない相手と
そんなあっさりめちゃくちゃグイグイ来るじゃん、人の気も知らないで。恨みがましい目で睨んだ不死は、は?って書いてあるような表情で目を見開いた。
「お前は俺にホレてるだろ?」
は?
「てかそうじゃないならこの状況マズいだろ」
「え、だってこれは……あれ?」
死ぬ気はないって言うのなら、不幸はいらないはずならコイツはなんでアタシを触ってるの??
「お前俺が不幸目当てで抱いてると思ってたのか」
「だって、それ以外ないじゃんアタシに触れるメリットとか」
途端、絡められていた指がきつく握られた。
「ホレた女に触れるのがメリットじゃねえ男がいるかよ
怒ってるのかと思うほど低く唸るような声。
なのに、その寂しげな表情が泣きそうにすら見えて、胸がぎゅっと痛くなる。
ごめんね私、自分のことばっかりで。アンタのことちゃんと見てなかったね。
嬉しさと悔しさと申し訳なさとで、涙があとからあとから溢れた。
硫酸で焼ける痛みも破瓜の痛みも越えられてしまう程の、身を割くような胸の痛みに名前を付けていいだろうか。不死のくせにそんな顔しちゃうくらい、この痛みを貴方も感じていると言うのなら。
「ホントにずっと一緒にいてくれる?」
「あぁ」
今度は逃げられないように頬を包まれ、涙の足跡を唇が拭う。
この先何があって、その答えが優しい嘘に変わってしまっても温かい涙が冷たい雨に変わってしまっても、今は。
私はううん、私たちは。
恋をしている。