みみみ
2024-05-26 23:35:03
1571文字
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NIGHTMARISH

ナギのドッペルゲンガーに振り回される海翔さんのつもりでしたが
ドッペルゲンガー要素……感じてもらえるだろうか……

……本当に、良いんですか?」
「ああ、覚悟は出来ている……はじめてくれ」

 術着を着た執刀医に尋ねられた海翔は、
隣のベッドで呼吸器をつけて眠るナギに視線を向けた後に強い眼差しで頷いた。
「それではこれより一ツ橋海翔さんの臓器摘出及び一ツ橋ナギさんへの移植手術をはじめます」
 麻酔医が、点滴のクレンメを開くと鎮静剤がポタリポタリと管の中を落ちていく。
……僕、貴方のファンだったんですよ」
「そうか、ありがたい事だ」
「憧れのSTAND-ALONEのサイン、こんな形でもらうなんて思ってませんでしたよ」
 先程光灯と夜灯と共に署名をした手術の同意書を思い出す。
「握手もした方が良かったか?」
「はは、手術前にそんな事をしたら手を洗えなくなってしまいますよ」
「それは困るな」
 大袈裟に肩をすくめて見せる執刀医に、海翔はフッと口元を緩めた。
恐らくそれが、人間であった海翔の最後の記憶。
そんな他愛のない話をしている間に体に回った鎮静剤によって海翔の意識はストンと落ちて行った。

「起きて、お兄ちゃん起きて!」
 ゆさゆさと体を揺すられて、海翔は重たい目をゆっくりと開ける。
……ナギ?」
 自分を見下ろすその顔は、見間違えるはずもないたった一人の家族であり何よりも大切な妹だった。
「もうお兄ちゃんってば全然起きないんだから!」
「ナギ、お前体は大丈夫なのか?!」
「当たり前だよ、だってお兄ちゃんが助けてくれたんでしょう?」
「そ、そうか……ああ、そうだな」
 花が綻んだような笑顔を浮かべるナギに、海翔は安堵の溜息を漏らした。
そして、もっと近くで顔を見ようと体を起こそうとした瞬間、信じられない力で海翔の体はベッドに押し付けられる。
「ッ、ナギ……?!」
「そうだよ、お兄ちゃんが私を助けたの……勝手に……
 まるで少女のものと思えない力で、海翔の気道はギリギリと締め上げられる。
「ナギどうした、落ち着けッ」
 酸素を遮断されて意識が朦朧とする海翔は、どうにかその手を振りほどこうと自分の首を絞めるナギの手に自分の手を重ねた。
「お兄ちゃん……どうして私を置いていくの?」
「俺は……お前の、ために……

「”お前”って、誰?」

グニャリと視界が歪んで、次の瞬間視界に映ったのはニヤリと口の端をつり上げる自分自身だった。
「お前は……誰だ……
「俺は”お前”だ」
 無機質な金色に縁どられた青い瞳がそう言って自分を見下ろしていた。
「俺は、お前を……■■を……
 何よりも大切な、かけがえのないその名前を呼ぼうとすると頭の中を掻き乱すノイズが走る。
「ッ……
「ほら言っただろう、勝手に置いてけぼりにしたと」
「待て、お前は何を知っている?!」

「さようなら、おにいちゃん」

「待て、行くな!」
一瞬揺らいだ自分の姿の奥に映った少女の姿にカイトは必死で手を伸ばす。
しかし、その手は何も掴めずに虚しく空を切るだけだった。


イト……カイト、大丈夫?」
 その声に目を開けると、心配そうに自分を覗き込むライトとナイトの姿が映った。
「ああ、お前達か」
「お前達か、じゃないよ! カイトってば練習中にいきなりスリープしちゃうんだもん」
「そうだったのか」
「うん、一瞬だったけど……エソラ先生に診てもらった方が良いんじゃない?」
「いや……その必要はない。 充電を忘れていただけだ」
「も~忙しいのは分かるけど、心配させないでよね」
「じゃあ一旦振り付けの確認はここまでにしてカイトはしっかり充電してきてね」
「すまない、そうしよう」
 二人に追い立てられるようにしてカイトはクレードルに横たわる。
目覚める直前、一瞬だけ見た少女が誰だったのか思い出せないままカイトはゆっくりと目を閉じた。