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ななき
2024-05-26 23:16:58
3742文字
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吸死
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竜の食卓に上る
(ドラロナ)ただのいちゃいちゃ。若干いかがわしい。
###
R18にならない範囲でえちくできないかの試行錯誤によるものです。むずかしいね……
――
きっと、この恋に
餓
かつ
えて死んでしまう。
◇
明け方、この部屋に住むモノが皆寝入る時間帯がある。そんな中でもまだ起きていた俺の喉が乾くタイミングと、配信とやらが長引いた吸血鬼がリビングへ戻ってくるタイミングが重なることもそれなりに、ある。
こういう時にシンクの前に立つのは緊張する。それなのにわざわざ立つのは、目を逸らしたいのに待ち遠しい気がする期待のために。
手の中のグラスには、よく冷えた作り置きのお茶。一息に飲み干してシンクに置いた。
その音を待っていたように
――
実際待っていたのだろうけど
――
細い腕が腹に回された。同時に背中には、防虫剤に似た香りのする体温が張り付いてくる。その香りで、とろりとした熱が腹に生まれたのを自覚する。もう条件反射だ。ベルの音で唾液を垂らす犬のように、熱が滴り落ちる俺の身体。
薄くて緩い寝間着のシャツは、温度を遮るには力不足だ。後ろの腕の持ち主にも熱が伝わってしまっているだろうと思うと、胃の底がムズムズした。
腕は、ぎゅうと強く締め上げている
……
んだろうか。毛ほども苦しくない。が、締め上げていることは分かるぞと上から押さえてやると、すぐ後ろから喉の奥で笑う音がした。猫のように喉が鳴らせれば鳴らしていそうな上機嫌だ。
上機嫌の気配はそのまま近づいてきて、柔らかいものが左耳の下に押し付けられる。くすぐったくて身を捩るけれど、柔らかいものは却って嬉しそうに好き勝手し始めた。顎と首のつなぎ目、首の筋肉の境目、鎖骨近くの皮膚の薄い、柔らかいところ。そこは、いつものお気に入りの場所。撫でて、なぞって、吸い付いて、尖ったものを引っ掛けて。俺の詰まる呼吸を、跳ねる肩を、上がっていく熱を楽しむ。
「手、ついて」
耳元で掠れた声に命じられると不思議と抵抗できない。ちょっとむかつく。まだ殺さないけど。
言われたとおり、シンクの縁を握るように手をつく。これは拘束だ。なんの意味もない。意味がないからこそ、自分で受け入れている気にさせられる。それを、背後の男はわかっている。
……
ずるい。
少しだけ倒れた体に覆い被さるように、また体温が追いかけてきた。その動作に紛らせて、腰を押し付けてくるのはわざとなのか無意識なのか。押し付けられたものはもうはっきりと主張していて、頭と腹がじんと痺れた。
気を取られている間に、自分のものではない手が下から身体を辿ってくる。鳩尾、肋骨、心臓、喉仏。顎下がくすぐられて、空いた首筋には規則的に並ぶ堅いもの。
――
吸血鬼が捕食に使う、牙。背後にいるのは自分を喰らう種だとイヤでも考えてしまう。後ろの男が、ほんの少しその気になれば、皮膚も血管も食い破られる。
本能的な恐怖が無くはない。絶っ対に言わないが。ただし、もし噛んだら死ぬほど殺した上で『こういうの』はもうしないと宣言してあるから噛まれはしない、はず。
このふわふわした信用だけで、退治人の首を好きにしているその意味をわかっているんだろうか。わかってねぇだろうな。だから今だって、噛みたいな噛んじゃだめかなちょっとだけならバレなかったりしないかな、という下心がやわやわと繰り返される甘噛みから伝わってくるし、ついでに、甘えてねだる濡れたものが伺いを立ててよこしているのも感じるけれど、ダメだったらダメだ。
……
そんな目立つところ。
反対の手はシャツの裾から潜り込んで腹を、胸を、這い回っている。掌で撫で回しながら、指がこちらの反応を探る。もう尖っているところをもったいぶって擦り、わざとらしく引っ掻く。知ってるくせに。お前が俺に、教えたくせに。喘ぎは、唇を噛んで手の下の冷たさに縋ってやり過ごす。せめて腿は冷たさから逃がそうと腰を引くと、自分から応えたと思ったのか、興奮でどっぷりと濡れた声が俺を呼んだ。ばか、違うからな。
その間も這い回る手は休まない。実にしつこい。俺の身体を塗りつぶすように撫で続ける。柔らかさなど無いだろうに、楽しいんだろうか?
あまりにしつこいので、いい加減にしろ、と捕まえる。あれだけうるさかった手が嘘のように大人しくなったけれど、でもこれは持ち主が次を知っているからだ。
体の向きを変えてシンクに寄りかかる俺を、赤い瞳がギラギラと待っていた。明かりのない、暗い部屋でもわかる欲の色。
実をいえばこの瞬間が結構好きだ。自分のペースに他人を巻き込むのが常の男が、余裕を無くして早く早くと切羽詰まっているのは、気分がいい。普段の、欲など知りませんという澄ましたツラが自分と同じ熱で崩れるのも。
ちろりと舌を出す。赤い瞳にきちんと見えるように。ゆっくり唇を舐めて、薄く笑ってやれば、噛みつく勢いで塞がれる。空気を奪いあう合間、いつの間にか膝を割られて脚が絡んで、背を引き寄せるように身体をぴたりと合わされる。胸も、腰も。体温を感じていないところの方が少ない。受け入れる時を連想するので恥ずかしいのだけれど、喜ぶ気がするから教えたことはない。
骨ばかりの背を指先でなぞってやると堪えられなくなったらしい呻きが聞こえた。仕返しとばかりに合わさった腰を揺すられて捏ねられて、必死で声を我慢する。指に力が入ってシャツを握りしめると、荒い吐息に笑う声が混ざった。こいつ俺にこうやって縋られるのが好きなんだよな。こうするといつも満足そうにするから、たぶんそう。
揺すられながらまたキスをする。俺が、こいつの好きなところを知っているように、こいつには俺がこれ好きなのバレてるのかな。じれったい快感に炙られながら、喉の奥までこいつに欲しがられると自分が融けて何にも分からなくなっていくから好きなんだけど。ずっとこうしていたいくらいに。
頬を、喉を、滑らかな指で撫でられて形を思い出した。はっ、は、と動物じみた呼吸を整えながら、お互いの温度を探る。触れるだけの浅いキスで、動物のように鼻先を、額を擦りつけて、甘えて、なぁ、今日、これからの気分はどうよ?
「ね、どっち?」
「当てろよ。当てたら続き。外したら終わり」
密められた声に、同じように返す。どうせ、顎をあげるだけで唇が触れる距離だ、聞こえないはずもない。ふん、と小さく鼻を鳴らして、三センチ先の吸血鬼は考え中。こういう時ばっかり真面目な顔しやがる。
いつからか問われるようになった二択。
予備室
ベッド
かバスルーム、だ。
……
思いっきり抱いてほしい、か、甘ったるく優しいのがいい、の選択肢でもある。俺に決定権を寄越すのは、自称紳士がトップをやる意地なのか何なのか。夜食のリクエストよりもよほど希望が通るのがおかしい。
そうだ、もうひとつあるな。回した腕で腰を引き寄せながら、尖った耳に思いつきを吹き込む。
「ここで、する?」
「
…………
。!!
……
~~っ!
………………
っ!」
カッと目を見開き眉間に縦皺を寄せて歯を食いしばり今度は目を閉じ
……
おお、迷ってる迷ってる。いや持ちかけてなんだがお前、そんな悩むかよ。
キッチンは、こいつにとっては一種、聖域であるらしい。衛生面が気になるだとかジョン達の寝床がすぐそこだとかという現実的なこともあるのだろうが、淫靡なことをする場所ではないという感覚が強いように見える。だからだろう、すぐすけべに触りやがるくせに、ここで下着にまで手がかかった事はない。そこに線が引かれているらしい。
でもそういうのってスパイスですよね!とピンクのウインナーが脳裏で叫ぶ。まあ、これだけ悩むならそういうことだろうな。スパイス。
「
……
っ予備室っ!」
「っふ、正解」
まだ紳士が勝ったようだ。あんまりにも苦渋の決断の様相なので思わず笑ってしまったら、睨まれてまた口を塞がれる。はいはい黙りますよ。
二択は、どうせどっちでも正解。当てろよ、なんていうのは、今日はお前の好きな方に付き合ってやるよという符丁でしかない。馬鹿みたいな茶番。
……
でもいつか思いっきり煽って我慢出来なくさせてみたいかも。うん。当面の目標。
口内を明け渡し、求められるままに返しながらぼんやり考える。
お互いの情欲を見透かしながら、バカになりきれずカッコつけきれず分かってる茶番で手順を踏んで。恋人ってこういうものなんだろうか。俺はこいつしか知らないし、たぶん死ぬまで他を知ることを許されないが。
……
どうせ素直かつスマートになんてできない俺達にはあってるから、いいのか。
ちゅ、と滲む欲には不釣り合いな音がして、目を開ける。名残惜し気に俺を一度強く抱きしめた後、体温が離れていった。
「先行って用意しておくから」
ジョン達を起こさないように静かに廊下に消える細い影を見送る。
なぁにが用意だ。最初っから、準備万端にして出てきたくせに。俺の準備だって、済んでるって予想してるくせにな。
ゆっくり百まで数える。すこしだけ不安になるように。巣穴に向かったあの男が、
焦
じ
れて
急
せ
いてもっと腹を空かせるように。
――
そろそろいいだろうか。それでは、せいぜいおいしく食べてもらいにいくとしようじゃないか。
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