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溶けかけ。
2024-05-26 23:09:51
2169文字
Public
ほぼ日刊
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本音を聞きたい
惚れ薬を飲んでヌヴィレットに迫るフリーナと迫られるヌヴィレットのお話。
フリーナの扱いが雑なヌヴィレットが見たかったので書きました。
「ねえ、ヌヴィレット、キスしよう?」
「断る」
「えーなんでだい?僕のこと嫌いなのかい!?」
べそべそと泣き真似を始めるフリーナ。その様子をパイモンと旅人が居た堪れない、といったように眺めていた。
「その
……
ごめん、ヌヴィレット」
「いや、君たちが悪いのではない
……
これが不注意だったのが悪いのでな」
腕を組んで呆れたようにフリーナに目を遣るヌヴィレット。ヌヴィレットの視線を感じたフリーナは千鳥足で彼に近づいた。
「熱烈な視線だね!僕のこと好き?」
「嫌いではないが」
「むー
……
僕はこんなに好きなのに!!」
頬を膨らませて上目遣いにこちらを見やるフリーナに、彼はため息をついた。
「フリーナ殿。言っても無駄だとは思うが今の君は正常な状態ではない。これ以上、言葉を重ねると君自身が後悔することになる」
「だから!僕は正常だって言ってるだろ!?だってこんなにキミが好きなんだから!!」
駄々を捏ねる子供のようにフリーナはぶんぶんと首を横に振ったあとヌヴィレットに抱き着いた。
「離したまえ」
「いーやーだー!キミが好きって言うまで離さない!!」
ぎゅうぎゅうと抱き着くフリーナをヌヴィレットが無理矢理引き剥がそうとする。
「やめろ、フリーナ!ヌヴィレットが困ってるだろ!?」
旅人とパイモンが加勢して、3人がかりで彼女をヌヴィレットから引き剥がした。
「それで、どうするの?」
フリーナを地面に組み伏せている旅人がヌヴィレットに問いかける。ぐったりした様子のヌヴィレットは自身の身なりを整えながら、取り敢えずどこかに閉じ込めておく、と返した。
「そんな酷いことをするのかい!?」
「
……
それが良さそうだね」
「惚れ薬って怖いんだな」
「パイモンは反省してね」
そもそもの発端は旅人とパイモンが持ってきた錬金術で出来た惚れ薬をフリーナが飲んでしまったことにある。旅人はさっさと捨てようとしたのだが、パイモンがこっそりと持ち歩き、フリーナが用意していたジュースと入れ替わってしまったのだ。
「うぅ
……
わかってるぞ。ただ、おいらだって悪気があったわけじゃ
……
」
「此度の件は不幸が重なった事故なのだから君たちを罪に問うことはないと言っておく」
フリーナを上着でぐるぐる巻きにしたヌヴィレットは彼女を担ぐと退出する。恐らく、どこかに閉じ込めておくのだろう。
「ここで待っていてもらおうか」
ヌヴィレットは元水神のスイートルームにフリーナを降ろして言った。
「い、嫌だ
……
ヌヴィレットと一緒がいい!」
「私には仕事がある。いつまでも君に付き合っていられない」
ピシャリと言って、酷いことを言っているな、と身勝手なことを思った。薬でおかしくなっているとはいえ、女性にこのような仕打ちをするしかない自身に嫌気が差す。
「
……
わかった。キミの言う通りここで待ってるよ。
――
だから
……
仕事が終わったら会いに来てくれ」
「? 了承した」
「約束だからな!絶対だぞ!」
フリーナは念を押すとヌヴィレットを部屋から追い出した。急に態度の変わったフリーナに首を傾げつつもヌヴィレットは仕事へ戻るために踵を返した。
随分と遅くなってしまった、ヌヴィレットは急ぎ足で最上階へと向かう。懐から合鍵を取り出すとドアノブを捻った。
「フリーナ殿?」
部屋は既に真っ暗だった。知らない間にいなくなっていたら、と思うと冷や汗が背中を流れる。
「フリーナ」
よくみればバルコニーへと続く扉が開いていて、カーテンが夜風に揺れていた。
「フリーナ?」
バルコニーへと足を踏み入れる。広くないバルコニーの隅でヌヴィレットの上着がもぞもぞと動いていた。
「フリーナ殿」
しゃがみ込んで声をかければヌヴィレットの方へフリーナが飛び込んできた。急なことで後ろへバランスを崩すがフリーナのことはしっかりと受け止めた。
「
……
泣いているのか?」
彼女の色違いの双眸から透明な雫が止め処なく溢れていく。
さみしい、こわい、ひとりにしないで、とヌヴィレットの頬にフリーナの涙が落ちるたびに隠しきれない本音が彼の心にさざ波を起こす。
「一人にしてすまなかった
……
私が軽率だった」
泣き続けるフリーナを抱き寄せて小さな頭を撫でた。
「ひとりは、やだ
……
」
「ああ」
「ぼ、ぼく、がん、ばった
……
」
「そうだな」
しゃくり上げて泣くフリーナの背を労るように優しく叩く。彼女のようすを見る限り、あの惚れ薬は惚れさせるだけでなく、飲んだ者の理性を緩めるという効能もあったのだろう。
「一人にして悪かった
……
今晩は一緒に寝よう」
「い、いいの
……
?忙し、いんだろ
……
?」
この期に及んで、恐怖に震えながらもこちらを心配する素振りを見せる彼女に罪悪感が募った。
二人並んで大きなベッドに横になる。不意にフリーナの手がヌヴィレットの手を掴んだ。
「これくらい、いいかい
……
?」
「ああ、構わない
――
おやすみフリーナ」
ヌヴィレットの言葉にフリーナが安堵の表情を浮かべた。
「おやすみ、ヌヴィレット」
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