ライオスが風邪を引いてしまった。流行り風邪をもらったようで、最初は軽い風邪だと笑っていたのに直ぐには治らず徐々に長く、重い症状になっていった。
最初の頃は少し喉が痛いくらいだからすぐに治ると言っていたのに、数日経っても治らず疲れが溜まってるのかな?と療養することになりしばらく安静にしていた。
「まだ動けるのになにも出来ないのは暇だな」
と、日がな一日ごろごろしながらベッドの上で本を読んだり、食事をしたり。
「動かないで食事が出来るのは楽だなー」
なんて言って周りが早く治すように、と苦笑まじりに小言をもらしていたりしたのに。
しかしライオスが寝台で休んでも風邪は治るどころか熱が出始め、その熱が全然下がらないまま高熱になり続けて数日が経ってしまった。
熱が出た頃に寝込むことが増え、高熱になってからは真っ赤な顔で浅い息を吐きながら眠り続けている。
時折口元に水差しで水を流すと一口、二口は飲むのだが、飲み終わるとまた何時間も眠り込んでしまう。
マルシルとファリンが交代でつきっきりになり治療を施している他に、リンシャが古今東西あらゆる薬を作り続けて治療にあたっている。
カブルーの信頼できる伝手を頼り口が固く腕も確かな医者も招来したが、既に打てる手は打たれている状態であり、これ以上は医者の自分にも打てる手はないと言う。
一欠片のパンを口にすることすら出来ずに昏々と眠るライオスを前に、マルシルの憔悴は酷いものだった。王宮魔術師として人前では気丈に振る舞っていたが、親しい仲間の前、特にファリンの前ではライオスが死んじゃったらどうしよう、どうしようファリン、と幼い少女のように泣いて縋り付いていた。
王の不調を隠し切るのも限界が近づき、家臣たちの間で王位交代の噂が囁かれ始めた時。
高熱にうなされていたライオスがぱちりと目を開けた。
「腹が減った……」
目を真っ赤に泣き腫らしたマルシルと、流石に疲労の色が見え始めたファリンが泣きながら無事を喜び、何が食べたいかと聞くと、とてもまだ熱がある病人とは思えない量の食事を羅列する。
そんなに食べられるのか、と思われたが、それでも食べないよりは、と王が望んだ食事が病床に所狭しと並べられた。
すりおろしたリンゴに小さく切られた喉越しの良い果物、ハチミツとレモンを混ぜたお湯に、野菜と鶏肉から作られたスープ、潰したじゃがいも等々。
全部食べるのは無理だろうからせめて食べたいという気持ちを失わないように慰めのつもりで作られた料理は、いまだ高熱を出し続ける悪食王の胃の中にあっという間に納められていく。
側で見守っていた者たちが唖然としていると、満腹になった王はそのまま寝台へと倒れ込んで高鼾をかき始めた。
その日のうちにみるみる熱はさがり、翌日には何事もなかったかのようにけろりと起き上がるライオスの様子をみて、皆はようやく肩の荷が降りたのだった。
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