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マサダン
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🔞ラブホ行こ!
※この作品には次の要素が含まれております。
・ギャグ、メタ
・♡喘ぎ、淫語
パティシエが作った淡い色のケーキを思い浮かべてみてほしい。ちょっと高めなお値段の。あわ~いピンク色(ビビッドではなくバレエシューズのような薄い色)のクリームでコーティングされた、ゆめかわメルヘンチックなケーキ。
イメージできただろうか。じゃあ今度は、それをケーキではなく城っぽい建築物に置き換えてみて。
……
はい、それが今僕の目の前にあります。
「これ、入ろうとすると目立って利用者が困りませんか?」
「オーナーいわく完成後に気づいたそうだ。新婚をイメージした外観らしいが、もっと地味にするべきだったと言っていたな」
隣には恋人のダンデさんが立っている。私服姿で長い髪を一つに結んで帽子を被ったプライベート仕様。本人的にはお忍びスタイルなんだろうけどわりとバレバレだ。隠し切れないオーラがあるし、立ち振る舞いや歩き方がダンデさんすぎてどうしても人目を惹いてしまう。そらとぶタクシーを使ってなければ、ここに来るまでに目撃情報が相次いだことだろう。
「改装を提案してみるか?」
「
……
まあオシャレだとは思いますよ。色合いも上品ですし、喜ぶ人もいるんじゃないですかね」
新事業かつ新築だというのに初っ端から駄目出しするのは良くなかった気がする。会ったこともないオーナーに罪悪感と同情心が湧き、付け足すようにフォローした。
「キミはオレ以外の人間には優しいな」
「そうですか?」
どの前例から言っているのか分からないけど、自分が親切な人間だと思ったことはない。(巻き込まれ体質だという自覚は、一応ある)。その時可能で最適だと思える選択と行動を取っているだけだけれど、それが優しさとして映っているんだろうか。
「その優しさをオレにも適用してくれてもいいんだぜ」
「うーん、善処します」
ここで軽率に承諾してはいけない。後先考えずに安請け合いすると後悔することになると、ガラルチャンピオンとして様々な人間と関わるようになってから僕は学習した。相手がダンデさんであれば尚更だ。
恋人を甘やかす際はタイミングを見計らえ、デキる男は主導権を握れ、と先月読んだビジネス書(というか自己啓発本)に書いてあった。読み終わった後に書籍レビュー見てみたら、イマイチの評価だったけど。
「今すぐ善処してくれ」
ダンデさんが拗ねた声を出し、ねだる視線を送ってきた。人前では見せることのない態度。恋人から甘えられること自体は悪い気はしない。
「具体的にどうしてほしいんですか」
「手を
……
握ってほしい」
どんな要求が飛んでくるのかと思えば。拍子抜けするほどに慎ましい望みだった。
「いいですよって言いたいところですが、今は無理です」
惜しい気持ちを飲み込んで棄却する。これからあの建物に入るというのに、手を繋いでいるところを撮られでもしたらとんでもないことになってしまう。
「ダンデさん先に行って、入り口から見えないところで待っててください。十分後に僕も行きます」
ダンデさんの口が、不満げな形に曲がった。望みを言ったのに叶わなかったからだろう。
「
……
分かった」
しかしすんなり聞き入れてくれ、僕から離れて目的地へ向かっていった。その背中を眺めていてもこちらを振り返ることはない。強がっているようにも見えないので気持ちを切り替えたのだろう。
そもそも駄目元だったのか、ごねても非効率だと判断したのか。どちらにせよ、十分後僕はダンデさんの待つゆめかわメルヘン城に入ることになる。利用目的は全然ゆめかわじゃないというのに。
ちなみにガラルではゆめかわを「ガラポニ」とも言う。つまり目の前の建物は言うなればガラポニ城だ。ガラルポニータに謝れ。ほんとごめん。
【ラブホテル】
――
ラブホテルとは主に、カップルの性行為に適した設備を持つ部屋を短時間(休憩)もしくは宿泊で利用できる施設。略して「ラブホ」とも呼ぶ。(出典:うぃ●ぺでぃあ)
一ヶ月前。
「らぶほてる
……
」
初めて耳にした単語をスマホで調べた僕に、ダンデさんが言った。
「ガラルにはなかったんだが、第一号店が来月オープンするそうだ」
「はあ」
さほど興味が持てなくて感想が浮かばず、気の抜けた相槌を打ってしまう。少し重心をずらしただけでソファがギシッと大げさに鳴り、買い替え時だなと思った。
一人暮らし(と言ってもポケモン達と生活している)の部屋にダンデさんがいる景色が常態化してから、だいぶ経つ。客人用の椅子ではなくカウチソファに僕と並んで座るのが好きな恋人は、リザードンが描かれたお気に入りのマグカップを手に意味ありげな視線を送ってきた。
はたと気づく。わざわざ話題を振ってきた理由に行き着いた。
「え、まさか僕達で行こうってことですか」
「嫌か?」
残念そうに眉を下げるダンデさんに「噓でしょ」と口からこぼれ出た。まさかと思ったのに、本気でそのつもりだったとは。
やばい、どのくらいの本気度だったんだろう。恋人に対して塩対応すぎる男はモラハラ予備軍だと最近読んだ本に書いてあった。このハラハラ(※)社会を生きていく上では慎重にならなければ。(※なんでもかんでもハラスメントだと主張するハラスメント行為)
「だ、だってスクープされたら言い逃れできませんよ? 不祥事ではないですけど不名誉ではあるというか!」
「不名誉でもないだろう。恋人であれば当然の営みだ。そんな言い方は業界関係者に失礼だぜマサルくん」
「失言でしたすみません!!」
爆速謝罪。デキる男は、時にはプライドをへし折ってでも謝ることが大切だと読んだ本に以下略。
「スクープされる危険性はもちろん理解している。そんな利用しづらいオレ達の立場を、ホテルオーナーが汲んでくれたんだ」
オーナーが? 知り合いなのだろうか。
訊けば大企業のお偉いさんで、個人的に親しくしているわけではないものの何度か挨拶したことがあるらしい。ダンデさんのような目立つ有名人はプライベートがあってないようなもの、ビジネス目的でさえホテル利用には細心の注意が必要、そういった事情を思いやってくれたのだとか。グランドオープン前のプレオープンで最初の客として招待された、ということだそうだ。
「ラブホテルにもプレオープンとか招待とかがあるんですね」
「新事業だからな。ビジネスというのはそういうものだ」
ホテル業界ならば顧客情報は機密扱いにしてくれるだろうし、プレオープン自体一部の人間にしか知らされないらしい。別々の利用客同士が鉢合せることのない配慮も抜かりなしとまで聞かされてしまえば、ありがたく招待にあずかるべきだと確かに思えた。
「そんなわけでマサルくん
――
オレとラブホテルに行ってくれるか」
納得したところで改めてのお誘い。
「はい、喜んで」
即答したら、居酒屋店員みたいな返事になってしまった。それでも恋人の晴れやかな顔が見れたので良しとしよう。
「嬉しいぜ。快諾してくれてありがとう」
ニッコニコのダンデさんに微笑み返す。そしてビクッとした。
よく見たら、黄金色の目の奥に含みがあった。
「
…………
」
全身が戦慄して嫌な汗がどっと噴き出す。
……
え? もし僕が本気で断ってたら、どうするつもりだったの?
近場をうろついて時間を潰してから、きっちり十分後にホテルに入った。そういえば建物の名前を知らなかったと思いチェックする。オープン前なので点灯していないが看板があり、ガラル語のオシャレな字体で『ラビリンス』と書かれていた。見た目がお城だから、つまり迷宮? 迷い込んでどうする。
入り口横で待っていたダンデさんと合流してエントランスを抜ける。着いたフロントには僕達以外誰もいない。フロントマンがいないと前もって聞いていたけれど、いざ入ってみると本当に利用していいのだろうかと心配になった。
端に設置された大きなパネルディスプレイへと近づく。タッチ操作が可能で、受付開始の表示画面に触れると【ようこそ 最初のお客さま】というメッセージが現れた。
「今キミが何を考えたか当ててやろう」
ダンデさんがにやりとして見てくる。
「『機械にロトミが入ってなくて安心した』だろ」
……
本当に当てると思わなかった。なんで分かったんだ。
「ダンデさんこそ、今めちゃくちゃテンション上がってるでしょ。《1番》が好きですもんね。背番号にもしてるくらいだし」
「ああ。1番がいちばんカッコイイからな」
カッコイイのセンスがたんぱんこぞう世代と同じだ。この人のこういうところ、きっと昔から変わってないんだろうな。
世の中には『ナンバーワンにならなくてもいい』などと歌っている曲があるけれど、ダンデさんにはあまり響かなそうだ。ナンバーワンこそオンリーワンだと思ってるタイプのバトル狂だから。僕とこういう関係になってくれたのだって、僕が強いからだし。
じゃあガラルで一番強い僕のこともかっこよく見えてるんですか? と言おうとして、それを訊くのはダサいと声に出す寸前で気づいて飲み込んだ。
やばいやばい、メンヘラになったらおしまいだ。ガラルチャンピオンたるもの、健全な肉体と精神を保たなければ。
「もちろんキミもカッコイイぜ、マサルくん」
肩を叩かれ、ウインクが飛んできた。
「っ、」
嘘でしょ、考えていることがまたもや読まれるなんて。もしかして読心術習得した? それとも実はサイキッカーって裏設定あった? 手持ちに入れてるエスパータイプ、バリコオルしかいませんよね。
ていうかこっちが本当に察してほしい時には、全然察してくれないくせに。どういうことだよ。
ディスプレイに視線を戻すと、写真がずらりと並んでいた。各部屋の内装と料金が一目で分かるのが便利だ。今回は最上級のロイヤルスイートルームとあらかじめ決まっているけれど、通常は自由に部屋を選べるらしい。パネル越しだとどの部屋も普通のホテルと同じように見える。実際に部屋の中を見てみれば違いがあるんだろうか。利用プランで休憩か宿泊かを選べるところがラブホテル特有のものかもしれない。
「建物の外観同様に中もメルヘンなのかと思ってました。案外普通ですね」
インパクトがないなと少しがっかりしながら画面の矢印をタッチする。部屋一覧が切り替わり、先ほどまでと打って変わって特殊な内装の部屋が表示された。
「おお
……
」
すごい。急に世界観が変わった。明らかに普通のホテルとは様子が違う。それぞれの部屋の個性が強いというかテーマがバラバラで、統一感がまるでない。
「スクールみたいな部屋と電車内っぽい部屋がある。こっちはカフェ風ですね」
案外普通と言ったのを撤回しよう。インパクトがあるしかなり面白い。シチュエーションプレイ向けの部屋がこんなにあるだなんて。
「オレはこの噴水がある部屋が気に入ったぜ。マイナスイオンを感じられそうじゃないか」
「水音がうるさくて気が散ると思いますよ」
リゾート風、ジャングル風、室内プールやビリヤード、カラオケができる部屋まである。
なんだここは。本当にホテルなのか。アミューズメント施設の間違いでは? ここまでくるとバトルコートがないのが不思議に思えてきた。
「全室ポケモンNGと書いてあるな」
「OKだったら出すつもりだったんですか? 絶対やめてください」
『推し活プラン』『ドライサウナ』『シェフ常駐』『美容機器レンタル』
……
至れり尽くせりすぎて怖くなってきた。ラブホテルってなんだったっけ。うぃ●ぺでぃあ先生の説明と違いすぎないか? なんかもうこの世のすべてがここにある気がしてきた。ひとつなぎの大秘宝だよこんなの。ちなみにワンピースは十二巻くらいまでしか読んでない。
「うわっ、なにこれ拷問部屋? 檻があって鎖だらけで壁一面黒い」
「SMプレイ用だろう」
気になってオプションをタッチしてみた。『鞭各種、処刑人マスクレンタル可』だそうだ。
わ、わー
……
世の中には僕の知らない世界がたくさんあるんだなあ。三角木馬ってのもなんだろう。覚えてたら後で調べてみよう。
「興味津々だな。今日はVIP専用のスイートルームを利用することになっているが、こっちの部屋の方が良かったか?」
「いやいいです。現実離れしすぎてて、笑っちゃって萎えそうですし」
なんて言ったものの、内心では好奇心が芽生え始めていたり。次の機会なんてのはもうないのかもしれないけれど、もしも次があるなら挑戦してみるのもいいんじゃないだろうか。SMルームはさすがに上級者すぎるから、ダイナー風の部屋とかがいい。女性店員の制服、ダンデさんに似合いそうだし。
とりあえず今日のところは、変更せずに元から決まっていた部屋を選択する。パネルの下からカード型のルームキーが出てきた。
「こういうの、地味にテンション上がりますよね」
「分かるぜ」
奥へ進むとエレベーターがあった。乗り込んで目的地である最上階のボタンを押す。何故だか反応しない。もう一度押したが変化なし。強めにカチカチ押しても駄目だった。
「なあそこ、カードキーをかざすところがあるぜ」
示された先を見ればその通りで。操作盤にキーを近づけると明滅し、アンロックできた。
ダンデさんがボタンを押すと今度こそ目的階が点灯する。扉が閉まり、僕達を乗せた箱が上昇し始めた。
「防犯がしっかりしてるな」
「ですね」
……
あー無理。この数十秒間の記憶を消したい。今の一連の出来事全部忘れたい。焦ってボタンカチカチしたの、めちゃくちゃかっこ悪かったよな。ああー。なんかすっごい恥ずかしい。地団太とか踏みたい。威力75の地面技でこの場を踏み荒らしたい。エレベーター故障して大事故になるだろうけど。
羞恥心に苛まれ、耐えきれずにダンデさんの反対側に顔を背けた。幾分か気持ちが楽になったなんてことはなく、閉塞感のある狭い空間が逃げ場のなさを増幅させてくる。
早く最上階に到着してくれ! と心の中で叫んでいると、ダンデさんが体をくっつけてきた。
「マサルくん」
ゾクッとして顔を上げる。
なななんだ? なんで色っぽい声で囁いてきた??
片手を突っ込んだ上着のポケットにダンデさんの手が入ってくる。ぐいっと引っ張り出され、恋人繋ぎにされた。
「楽しみだな」
繋いだ手をにぎにぎさせて、いかにもな雰囲気で微笑む恋人。その顔がゆっくりと寄せられ
……
マウストゥーマウス一歩手前で、慌ててストップを掛けた。
「だ、駄目です!」
距離を取ろうと後ずされば背中が壁に当たった。なんでこんなに狭いんだよこのエレベーター。
「なぜ駄目なんだ」
ダンデさんが不服そうな顔をする。キスを拒まれたのだから当然の反応だ。
「エレベーター内でのキスはちょっと」
「ラブホテルなのにか?」
「ですけど、そういうのは部屋に入ってからだと思うし
……
なんかエレベーターでキスするのって、後ろめたい関係っぽくないですか?」
「
……
」
どういうことだ、と怪訝な表情が問い詰めてきた。
「浮気とか不倫とか、体だけの関係とか、肉体奉仕サービスとかって、そういう健全ではないイメージがあるんです」
「キミ、普段どんなポルノを見てるんだ」
「誤解です! 映画で観たイメージですっ!」
というのは嘘で、本当はポルノ動画だ。ジャンルとしてはカメラ映像流出系。素人モノが結局一番エロかったりするんだよな。演者同士のお仕事セックスよりも本物の恋人達がラブラブしてる方が断然ヌける。ただし無理やりなのは苦手だ。
……
僕の嗜好はどうでもいい、つまり人目につかない密室だとしても、油断できないと言いたかった。
見渡す限りではそれらしき物が見つからないけれど、ホテルのエレベーターに監視カメラが付いてないなんてことがあるだろうか。いくらホテル側が利用客の情報を厳守しようとも、見られても構わないとまでは僕は思えない。構わないどころか全然気にする。僕達の関係、身内以外には秘密にしているわけだし。
「オレ達がこれまでに何度体を重ねたと思っている。すでに健全とは言えない関係だろう」
「そうですけど、そうなんですけどっ、とにかく部屋入ってからいっぱいキスしましょう」
ところでさすがに遅すぎないか? と扉の方を見れば、とっくに目的階に着いていたらしく、開いていたエレベーターの扉が今にも閉まろうとしていた。突き指しそうな勢いで開くボタンを押し込む。
一体いつ着いてたんだ。気づかなかった。
恋人繋ぎの手をそのままに歩き出すと、ダンデさんが言った。
「オレがキミにキスしようとした時には開いていたぜ」
「
……
これから先は、声に出してないことには答えないでください」
最上階には部屋への扉が一つしかなかった。フロア全体がロイヤルスイートルームということだろう。さすがVIP専用。ぴかぴかに磨かれた大理石の床が眩しい。壁際には横長のシェルフがあり、室内着やシャンプー、お菓子や紅茶といったアメニティが多様に取り揃えてあった。
「こういうのって部屋の外に置いてあるんだ」
「欲しいのがあれば持っていっていいみたいだな」
「あ。このジェ●ピケのルームウェア、ものすごく人気だったやつですよ」
「ポケモン風のデザインなのか。借りていこう」
えっ着るの? と思ったけれど声のトーンからして冗談ではなさそうだ。マジかー。だったら僕も覚悟を決めるか。
三種類あったうちの二種類を選んで脇に抱えた。それとスリッパも二人分。他にもいろいろ気になる物があるけれど、荷物が増えるのでひとまず我慢。欲しくなったら後で取りにくればいいだろう。
いよいよチェックインだ。ドアノブ近くにルームキーをかざせば、ピピッと電子音がして解錠できた。ラブホテルに興味がなかった一ヶ月前の僕はもういない。この建物には夢とロマンが詰まっているのだと今は知っている。ワクワクいっぱいでドアノブに手をかけた。
室内に足を踏み入れた瞬間からいい香りがして、人感センサーが作動し明かりがつく。高級感漂うホテルルームの雰囲気に、感嘆の息が漏れた。
フロントのパネルで見た個性強すぎる部屋、あれらが同じ建物内にあることが信じがたい気持ちになる。メインルームらしき奥へと続く通路にはいくつもの扉が見えた。広いだけあって部屋数も多そうだ。
玄関から最も近い扉を開けてみる。荷物置き場のようでコート掛けやハンガーラックがあった。貴重品を入れる金庫の横に、ほのかなライトで照らされたショーケースが設置されている。小さめの所持品置き場かと思い近づいてみると、モンスターボールのマークが描かれていた。
「ポケモンを預ける場所みたいですね」
「回復効果もあるらしい。すごいな」
僕が今日連れてきたのはインテレオンとピチューの二匹。インテレオンはダンデさんからもらったメッソンだった子で、ピチューは最近ヨロイ島の集中の森で出会った子だ。
ピチューとの出会いは、自転車を漕いでいたら突然飛び出してきて、危うくぶつかりそうになり、急カーブを切って衝突を回避した。幸いピチューに怪我はなく、自転車から転げ落ちた僕を見て手を叩いて笑っていた。(雷雨の中猛スピードで自転車を漕いでいた僕が悪いからいいんだけど)。森の出口までついてきたから捕まえてみれば、性格がなまいきで、だろうなと思った。
ポケットから出した二個のボールを置きつつ隣を見やる。ダンデさんはボールを六個預けていて、僕は思わず二度見した。
なんで恋人とのホテルデートにフルパ連れてきてんだこの人。ポケモンNGじゃなかったら戦る気だった?
鞄を下ろしたり帽子を脱いだりして軽装になり、スニーカーからスリッパへと履き替えて通路に戻る。扉を順に開けていき、風呂場やトイレをチェックしていった。やたら部屋数が多いと思ったら、シアタールームやキッチンがあって驚いた。シャワールームは二箇所もあった。一つはシングル用のようで、もう一つは広くて浴槽も大きい。そっちはムーディーなライトアップがされており、円型の湯船には赤い薔薇が敷き詰められていた。横には立派な観葉植物、反対側には冷やされたシャンパンがワゴンに乗っていた。
「すごっ。ラグジュアリーって感じ」
「楽しそうだな。こういうの好きか?」
「僕の趣味ではないですけど、マンガで読んだ成金セレブ風呂そのまんまで面白いです」
「後で一緒に入ろう」
肩を抱かれてこめかみにキスされた。僕も結構テンション高いが、ダンデさんもかなり上機嫌の様子。口づけを降らす唇が頬をたどって首筋まできたので、なし崩しになる前にその腰を抱いて部屋の移動を促した。
「それじゃメインルームに
――
いッ!」
言い終わらぬうちに感じたチリッとした痛み。キスマークを付けられたのは明白で、服で隠れない位置な気がしてならなかった。人から見えない場所であれば好きなだけ付けてくれて構わないけれど、たぶんこれ、後で困るやつだ。
「
……
」
「ん? どうした」
非難の目を向けたが効果ナシ。どこ吹く風の態度で笑い返された。
この人のこういう大人げないところ、まったくどうしようもないというか、ぶっちゃけ、好き。
とうとうメインルームに到着。想像通り広々としていて、中央には五、六人の大人が優に寝転がれそうな超巨大ベッドがあった。これが本物のキングサイズというやつだろうか。石油王が愛人を何人もはべらせてそうな大きさだ。酒池肉林に適してそう。これだけ広いなら、僕達がどれだけ激しく動きまわってもベッドから落っこちることはないだろう。(そんな過激なプレイはする予定ないけど)
片側が壁一面窓になっており、奥にバルコニーが見えるので外に出られるようだ。ていうかこれ、高さのある建物からだとこっち見えちゃわないか? 今日みたいな快晴は特に。即刻カーテンを下ろさねば。
「いい眺めだな」
焦る僕とは対照的にダンデさんが気楽な様子で窓際に近寄っていく。考える前に体が動き、駆け足でその背中に追いついて柱の影に引きずりこんだ。
「ちょっと! 外側からこっち見えてたらどうするんですかっ」
隠そうとするあまり壁ドンみたいになってしまう。きょとんとした瞳に僕を映した恋人は、「ああ」と笑みを浮かべた。
「それなら大丈夫だぜ。この窓はマジックミラー加工がされているものだから、外からはこちらが見えることはない」
「元から知ってたんですか?」
「素材を見れば分かるさ」
何その慧眼。そんな特技があったなんて知らなかった。
「だが見られているようなスリルは味わえるな。このままここでするか?」
誘惑の手つきで肩を撫でられる。壁ドン状態だから僕がダンデさんに迫っているような体勢だ。そうこうしているうちに左右の脚の間にダンデさんの片脚が割り込んできて、体ごとぐいぐい迫ってきた。
「っ
……
」
厚い胸板を押して距離を取る。誘ってもらったところ申し訳ないけれど、衆人環視や露出プレイの趣味はない。むしろ苦手な方だ。チャンピオンという大衆の視線を浴びる立場のせいか、そういったものには特に忌避感を抱くようになってしまった。それに興奮する変態
……
好む人も一定数いるみたいだけれど、恥ずかしい姿を他人に見られたい願望とやらは僕には共感できない。
だけどいい加減、お預けばかりでそろそろダンデさんの限界がくるんじゃないだろうか。プッツンして手に負えなくなる前にフォローしとかなければ。
「ダンデさん」
恋人の頭に手を伸ばす。僕より背が高いけれど屈んでもらわなくてもちゃんと届く。その紫髪をひと撫でしてからヘアゴムに指を引っかけ、髪の毛を巻き込まないようにスルリとほどいた。
「お風呂、行きましょうか」
ついでに尻肉も撫でて揉んでおく。外でダンデさん以外にやったら公然わいせつ罪だけど、今この瞬間では正解の行動だったようだ。期待に満ちあふれた表情で喜ばれた。
「ン~
……
♡」
もぐもぐと相手の唇を味わい合う。歯を立てずに甘噛みし合って、同時に服を脱がしっこする。首元のボタンを外されシャツを脱がされて、そのままシャワールームの床へと落とされる。服を気にする暇を与えられず、一瞬の別離となった唇同士がすぐまた再会。腫れそうなくらいに下唇を吸われながら、僕もダンデさんのTシャツをたくし上げた。
手を中に入れて脱がそうとしたけれど、ぴったりサイズすぎてどうにもやりづらい。中途半端にめくったまま一旦諦めて、ボトムスに手をかけた。
「はン♡ ちゅ♡ ふっ
…
♡」
キスだけでエッロい顔するなあ。普段は凛々しい眉が下がっちゃってるの可愛いし、まだ舌入れてないのに口元濡れてるのもたまんない。
ちょっとでも顎を引こうとすると嫌がってもっとキスしたがるし、縋りつくみたいに抱きしめてくるのがすっごい滾る。
「ん♡ んンっ
……
ぁふ♡」
舌入れた途端うっとりするんだもんなあ。ほんと可愛い。可愛いけどチョロすぎて心配になる。最初にキスした時は、僕の方がすぐ腰砕けになっちゃって、それを余裕ある感じで笑ってたのに。いつの間にかダンデさんの方がキス雑魚になっちゃって。キスだけじゃなく体中がどんどん快感に弱くなっていってるみたいだし。僕のテクニックが上達したからだったら嬉しいけど、さすがにそんなゴールドフィンガーではない。
脱ぎ着しやすいやつを選んでくれたのか、ボトムスは楽に脱がすことができた。Tシャツも緩めのを着てきてくれたら良かったのに。きっと筋肉美を見せつけたくてボディラインが出る服にしたのだ。これだからマッチョ族(筋肉賛美者)は。おかげで、タクシーの中にいた時から視線がおっぱいに集中しそうになって困った。
巨乳の恋人を持つと大変だ。見るたびに思う、なんてけしからん豊満な乳なんだと。僕のだと思うとすこぶる気分がいいから許すけど。
「自分で脱いで」
半脱ぎになったTシャツを引っ張って言った。絶妙な感じに見え隠れしている乳首を引っ掻けば、「んッ♡」と鼻にかかった声を聞けた。
う~んエロい。もっと気持ちよくしてあげたくなる。
ダンデさんが血管の浮き出た腕でTシャツを豪快に脱ぎ捨てる。その様子を、隆起している見事な腹筋を撫でつつ眺めた。手の位置を少し下にずらせばダイマックスしている昂りがある。腹筋も巨根もバッキバキだ。キスしかしてないのにフル勃起ってどんだけムラムラしてたんだ。なんて、僕もガチガチに勃っちゃってるわけだけど。
ダンデさんは待ちきれないとばかりにパンツごと僕のズボンを下ろし、勢いよく飛び出たそれをすかさず握った。包皮を下ろすように動かして、もう片方の手で亀頭を撫でくりまわしてくる。お気に入りのおもちゃで遊ぶ子どもさながらの手つき。雄々しくて立派な自分の分身は放置だ。
毎度のことながら、この人本当に僕のちんこ好きだな。慣れたものなので苦笑すら浮かばない。ただいつまでもバスルームの入り口付近にいるのはもったいないので、すぐ目の前にある湯船へと先導した。ダンデさんもおとなしくついてくる。だけどやっぱりというかなんというか、歩き出しても僕の物を握ったまま離そうとしなかった。さすがにどうかと思う。しょうがないな~も~♡とかほっこりしちゃってる僕も僕だ。
「シャンパン飲みます?」
バケツ型の銀のワインクーラーを見やると、ダンデさんがいらないと首を振った。
ミニプールくらいの大きさの浴槽へと足先から浸かり、くっついたまま一緒に腰を下ろす。いっぱいの薔薇で底が見えないけれど、座っても胸元くらいまでしか深さがない。湯加減はちょうどいいぬるさ。薔薇だけじゃなくバスソルトの芳しい香りがして、ロマンチックなのが好きな人にはたまらないだろうなと他人事のように思った。正直僕も、ムードばっちりなこの空気に酔ってないと言ったら嘘になる。
向かい合う形で密着し、見つめ合って唇を重ねる。コンマ数秒後には舌先同士が触れていた。
「れぅ
…
♡ んっ♡ ふぅ♡ っ、ンむ♡♡」
ちゅぱ、れろ、ぷちゅ、ちゅぅ、と恥ずかしい音を恥ずかしげもなく立ててのディープキス。ラブカス(※ガラルには生息していないランデブーポケモン)もドン引くレベルで口唇を突き出して舌を絡め合う。ダンデさんの髭が肌に刺さってこすれたりして、それが嬉しいなんて思っちゃったりするのだから恋ってのは恐ろしい。
「ちゅっ♡
…
ンふ♡ ぇう♡ んふ
…
♡」
付き合い初めの頃、恋人同士はこんなにもたくさんキスするものなのかと驚いた。僕にとっては初めての恋人だから、ダンデさんとこうなるまで知らなかった。
関係を公表していないので外では我慢するけれど、家の中ではしまくりだ。目が合ったらバトルの代わりに、目が合ったらキス&ハグ。愛の呼吸で全集中してハートを燃やす無限接吻編に突入する。多忙な日々の中でもお互いの家を行き来して、(エッチはさすがに毎回できるわけじゃないけれど)とにかくキスしまくっている。
玄関開けたら二秒でチュウ。「ご飯食べました?」「まだだ」のやりとりをしてキッス。「カレーで良ければあります」「キミはカレーが本当に好きだな」「不満があるならあげませんけど」「不満なものか。キミのカレーはガラル1だぜ」といった会話の後、カレーを温めている間にチュッチュはむはむペロペロ
――
……
思い返してみたら、ちょっと多すぎるかもしれない。バカップルでごめん。
しかもこの時はずいぶん盛り上がってしまい、カレーを温めるのを中断してソファになだれ込んだ。というかこれ、キスってよりもエッチしてる日の回想だった。ソファのスプリングが駄目になった要因でもある。途中からこの世の終わりみたいな悲鳴を上げてたもんな、ソファ。
ちなみにさっき、チェックイン直後にもキスしてる。雰囲気すごいなーと感心した一秒後くらいに。荷物置き場でも靴からスリッパに履き替えながらチュッチュしたし、各扉を開けてのルームツアー中にも、手指を絡ませて手の甲にキスしたりほっぺにチューしたりしていた。
ダンデさんからされることもあれば僕からもした。いっぱいした。エレベーターでするって言ったし有言実行した。キリがないので描写が割愛されたけれど、ぜひ筆者の気持ちになって該当箇所の行間を読んでみてほしい。1キスにつき加点10点とする。
「ん~♡ ぁえ
…
はふぅ♡♡ ちゅぱっ
…
♡」
自分のと相手のがブレンドされた唾液をすする。興奮するし気持ちいいし下半身に響くしで、早くも危機感を覚えた。油断したらさっさと射精してしまいそうだ。それだけは避けたい。早漏が恥ずかしいからじゃなくて(いやそれもあるけど)、この程度で出してたら後が持たない。たぶん今日は、ダンデさんが満足するまで終わらないだろうから。
「はぁ
…
♡
……
マサルくん、舐めたい♡」
情欲ゲージがMAXまで上がりきった恋人が、物欲しそうにおねだりしてきた。敷き詰められた薔薇で隠れて見えなくなってるモノを水面下でにぎにぎされる。こうくる予感はあった。キスの間もずっと放そうとしなかったし。僕としては舐めてもらうより早く繋がりたかったけれど、発情顔でフェラ乞いされたら駄目とは言えない。
僕は腰を浮かせて浴槽の縁に座った。左右の脚を開いたそばから股間の前へと陣取られ、間髪入れずにぱくりと咥えられる。僕の分身を飲み込もうとする瞬間に目と目が合った。その表情は、とんでもなく笑顔であった。
「ッ
…
、」
大口で頬張られ、この後もたらされる快感への期待で股関節が震える。口腔内でレロレロと舐めまわされる感触に喉が鳴った。
はむ♡ ちゅ、チュッ♡ ちゅむっ♡ ぴちゅっ♡
竿を咥えた状態で唇と舌で器用に吸いついてくる。根元まで飲み込んでも咽せたりしないので感心してしまう(一応言っておくと僕のは普通サイズだ)。下の毛は処理しているから生えてない。ダンデさんに言われたからではなく自主的に剃った。
だってこの人、口に入った毛を平気で食べたりするから。吐き出してと言ってもしてくれない。その結果どうなるかというと、キスができなくなる。僕はフェラの後だろうがザーメンごっくんした後だろうか全然キスできるけど、陰毛を食べた口とはキスしたくない。器の小さい男と思われようが嫌なものは嫌だ。
ぴちゃっ♡ ちゅぱっ♡ ちゅ♡ ぢゅぅ♡
「
……
しゃぶるのほんと好きですね」
「ン
……
ちゅぷ♡」
う~んあざとい。
ダンデさんとこういう関係になるまで、フェラチオにあざといという概念があることを知らなかった。一言にフェラと言ってもパターンによっての違いがあったりする。大まかに分けると、観賞用フェラとエンジョイフェラとダイレクトフェラの三種類。(※僕が勝手に分類したので専門的な知識ではない)
観賞用は、パフォーマンス的に見せるための魅せフェラである。絵面重視で、眺めてる分には興奮が高まるけれど気持ちよさはそこそこ。ポルノ系の多くはこれじゃないだろうか。
エンジョイは行為そのものを楽しむためのフェラ。性感を煽ることを重要視しておらず、舵を取るのはされる側よりもする側。そのためする側の自己満足感が強い。
そしてダイレクトは、快感度合いがストレートに高いフェラだ。観賞用またはエンジョイ用からスタートして、奉仕が本格的なものになっていくとダイレクトになる、それが基本的な流れと言っていいだろう。
……
知った顔でつらつらと語ってしまったけれど、僕の経験人数はダンデさん一人だけだ。一人分のデータでよくもまあドヤ顔できたものだと我ながら思う。今さら恥ずかしくなってきた。
現状においては、魅せフェラとエンジョイの中間といったところだろうか。僕に快楽を与えるための愛撫とは言い難い。ダンデさんが僕のちんこ(お気に入りのおもちゃ)を口に入れて遊んでいるだけ、もしくは口淫をする自分の痴態を見てもらおうとしている、そのどちらかか両方のように思える。
その証拠に、上目遣いで物言いたげな視線をずっと送ってきているし、舌が見えるように口を開けてレロレロとやらしい動きを見せつけてきている。僕からの何かしらのアクションを待っているような気配もある。
何度もされたことがあるから知っているけれど、ダンデさんの本気フェラはこんなものじゃない。ASMRとかしたら耳を妊娠させるレベルのえげつない音を立てるし、業者が使う掃除機かってくらいの吸引力でディープスロートをしてくる。童貞を卒業したばかりの頃の僕を、絶頂気絶させた実績だってあるのだ。あの時は口から泡も吹いた。強烈すぎたあまり快感よりも恐怖が勝ったのは、ここだけの話だ。
「ダンデさん」
乱れて顔にかかった髪を耳にかけてあげた。その頭にそっと手を乗せる。黄金の瞳が一瞬わずかに見開かれ、それから笑みの形になった。何を求められているのか、言われなくても分かった。
ダンデさんの頭上の手を動かす。強く押しつけるのではなく、撫でるために。
「~~♡♡♡」
男らしい喉仏が大きく波打ったのが見えた。やはり正解だったらしい。撫でられて嬉しい、そうしてほしかったのだと喜悦の表情が物語っている。
なんだよもう、可愛いんだけどこの人。だからあざといんだって。
――
むぢゅっ、ぢゅぅぅ~♡♡
お遊びだったフェラが、ダイレクトな動きへと変わった。
ジュポッ♡
「ンンっ♡」
ジュルッ♡
「ちゅぱッ♡」
ヂュ~ッ♡♡
すぼませた頬を使って吸いつきながら擦り、喉奥まで咥え込まれて激しく出し入れされる。性感が強制的に誘引される感覚。僕は下腹が突っ張り、下半身へと一気に血が集まった。
ジュプッ♡ ズズッ♡ ジュルッ
…
♡ ズロロ~ッ♡ ヂュルルルッ♡♡
「す、ストップ! それ以上されたら出ちゃいます!」
慌てて中断を訴えるも止まる気配がない。ダンデさんはこちらを見上げ、その目を細めた。
「ンん♡」
いや「出せ」じゃなくて!
咥えたまま喋るのもやめてほしい。口にちんこを入れてる時は喋っちゃいけませんってご家庭で習わなかったんだろうか。って習うわけないだろ。どんな家庭だよ。ごめんホップ。
「んんンんん♡」
「飲んでやる」だって? それただ自分が飲みたいだけだよね。
ミルタンクの乳しぼりと同じ扱いをされている気がする。しぼったら出るみたいに吸えばピュッピュするもんだと思ってるんじゃないだろうか。搾精されている感が半端ない。
前々から思ってたけど、飲精好きすぎません? サキュバスとかだったりします? 髭面で美少女顔の巨乳マッチョってだけでだいぶカロリー高めなのに、これ以上属性盛らないでほしい。
「んん♡ んんンンん♡」
はいはい、「出せ、好きなだけ」ね。
ダンデさんが何言ってるか分かっちゃうのもなんか嫌だ。なんだよこの異言語コミュニケーション。ちん語を話す恋人を持った覚えはないのに。
「待って、ちょっと待ってくださいっ!」
「んん~~♡」
「ッ
…
もう離して、で、出るからぁ
…
♡」
弱弱しい懇願は逆効果で、強い力で太ももを掴まれた。絶対に逃がさんという揺るぎない意思を感じる。
ふえぇ、妖怪ザーメンバキューマーがいるよぉ
……
。
「ダンデさん
…
ぅッ♡
…
だめ♡ だめですっ
……
♡」
掴まれているから腰を引くこともできず、快感で体に力も入らない。局部に近い骨という骨がギシギシ軋む。
駄目だ、抗えない。嫌がってても体は正直ってやつだ。なんたる不甲斐なさ。
く、悔しい
……
僕、最強のガラルチャンピオンなのにぃっ!
「最初の一発目はナカにぶちまけたいんですッ!!」
あ。間違えた。咄嗟に口をついて出てしまったけれど、そういうつもりじゃ全然なかった。
ほんと違うんです。どちらかというとゴムつける派だし。僕だけ先にイかされるのは情けないからやめさせたくて、テキトーに言い訳するつもりだった。のぼせる前にベッドに移動しましょうとかって言えば良かったんだ。そしたら体を拭いてるうちに小休止できただろうに。
「
……
あはうふん♡♡」
甘ったるい声でなんともセクシーな返事をされた。たぶんこれ、「マサルくん」て言ったんだろう。
一日中セックス漬けになるだろうという予想は的中し、一回や二回では終わらなかった。三回や四回でも終わらず、五回目以上は数えることを放棄した。部屋を移動したり休憩を挟んだりしながら、入れて出してイッてイかせてを延々エンドレス。
時間を忘れて続けているうち、自分が何をしているのか分からなくなった。何をってそりゃ、セックスなんだけれど。セックス以外の何ものでもないし、それ以上でも以下でもないんだけど。
でも、セックスって一体なんなんだろう。ちんこビンタからの顔射をされて嬉ションするダンデさんを眺めながら、僕はセックスの概念について沈思に耽った。
セックスって、どこからがセックスと言えるのだろう。挿入を行っていなければセックスじゃないのだろうか、それとも交接をゴールとしていればそれまでの過程もセックスと言っていいのだろうか。だけど交接だけが要(かなめ)だとは思えない。挿入しない触れ合いの時だってあるわけだし。前戯という便利な言葉があるけれど、単語からして交接前提なのがいただけない。僕的にはフェラもクンニもセックスだと思う。乳首を舐めるのも手マンするのだって当然セックス。だけどおっぱいに顔をうずめて匂いを嗅いだり、お尻をぶっ叩いたりするのはなんか違うような気がする。何が違うのかは説明できない。パイズリはセックスに当てはまると思うのに
――
などと、アホのエロ哲学をAIに書かせたみたいなことをつらつらと思い巡らせた。なんの成果もなければ答えも出なかった。人はこれを無駄と言う。僕もそう思う。
脳内で開かれたセックス論学会は未解決のまま閉幕。だけどどうしてもはっきりさせたいことが一つだけあった。エッチにおける回数って、何がどうなったら一回分にカウントされるんだろう。射精したら? アクメしたら? ダンデさんが精液を出さずに中イキした場合は?あるいは、挿入セックスを行わなければノーカウント扱いなんだろうか。先ほど述べた回数については、僕基準でカウントしたものだ。
……
いい加減やめよう。せっかくの初ラブホで考えることじゃない。
「おッ、あぁぁッ♡♡」
精神世界から現実へと意識を戻した途端、切羽詰まった喘ぎ声に鼓膜が震えた。
今の状況を説明すると、ダンデさんのいやらしい肉筒に僕の滾り棒が包まれている。以上だ。つまりまごうことなきセックス中。セックスについて考えながらセックスしていた。我ながら狂気だ。
広々とした室内に淫猥な水音が響く。綺麗にメーキングされていたシーツは今や皺くちゃのドロドロ。近くに転がっている開栓済みのローションボトルは、アメニティで用意してあった物だ。
「あっ♡ あっ♡ あッ♡ あぁッ♡♡」
ひと突きするたび、組み敷いた恋人からあられもない声が上がる。たいていは感じているからだけど、そうじゃなくても自然と声が漏れ出るのだと以前ダンデさんが言っていた。
「アッ♡ あっ♡ はぁっ♡♡ あッ♡」
考えてみれば当然だ。体内から内臓を突き上げられているのだから。僕だって肉体に衝撃を感じれば悲鳴を上げる。だけど今ダンデさんが発しているのは、確実に善がり声だと断言できる。ひっきりなしに喘ぐ響きはひどく甘いし、先ほどから絶頂しまくっているのが何よりの証拠だ。
「あンっ♡ あっ♡♡ あふッ♡ あぁッ♡♡」
腰を前後に動かして往復させるピストン運動。気持ちいい穴の中で性器を出し入れして、もっと気持ちよくなる単純作業。それをひたすら繰り返すだけの生き物になった僕は、こみ上げてきた射精欲に従って尿道を開放させた。
「ンっ♡
……
ふぁぁ
…
♡♡♡」
何度目かの吐精。それを直腸で受け止めたダンデさんが小さく震える。甘イキしたらしい。中に出されてイくなんてどれだけモロ感なんだ。エロくて最高。
きっとホップは夢にも思わないだろう。長年ガラルチャンピオンとして輝き続けた自分のアニキが、精子注がれて悦ぶ才能があるだなんて。どうか一生知らないままでいてほしい。
人の好みはそれぞれだけれど、清純系がいいなどといった主張は僕には共感できない。何故なら恋人がエロいことはバトルが強いことと同じくらい価値があるからだ。エロければエロいほどいい。浮気するようなビッチは嫌だけれどエッチなのは大歓迎だ。
僕のことが大好きな淫乱彼氏、素晴らしいじゃないか。『恋人が僕専用のドスケベボディすぎて、昼も夜も乾くヒマがないくらい多幸感ハンパない件について』
――
エロラノベのタイトルにできそうだ。発行はカロス書院に違いない。
「
…
ぁ、ッ♡
……
ん♡」
抜かずに挿入ったままでいれば、中でキュンキュン締めつけてきた。イキマン媚肉たまんない。さんざん種付けしたのに、まだしぼり取ろうとするなんて。もしかして満足してないのだろうか。だったら応えてあげるべきだろう。愛しい人の望みを叶えて尽くしてあげるのがデキる男ってやつだ。胡散臭い自己啓発本には書いてなかったけれど、そういうものだろう、たぶん。
小麦色の内ももを撫でてから、両手で掴む。ぐいっと自分側に引き寄せ、芯が柔らかくなった分身を押し込んだ。
「あぅッ♡」
快感に従順な身体がビクンとしなる。僕は膝を少し立て、下半身を跨ぐようにして挟み込むと腰をグラインドさせた。
「あンッ♡♡」
歓喜の反応に気を良くする。今のは前立腺を狙って突いたので、次は奥を抉ってあげたい。
使命感に駆られて復活した剛直がビキビキと硬くなっていく。その張り詰めた肉の楔を僕はひと思いに打ち込んだ。
「あぁぁあッ♡♡」
「ダンデさん、」
「あぁっ♡」
「ここ、好きだよねッ」
「ンぉっ
…
♡♡」
「ははっ、ヨさそう」
「ッ、
…
♡」
結腸の狭まったポイントを捏ねて甘やかす。僕の物はダンデさんの巨砲と比べると見劣りするサイズとはいえ、伸長率は悪くないと自負している。雄子宮とやらに届いているのかは分からないけれど、ダンデさんをメスイキから降りられなくして連続アクメで狂わせることは可能だ。
「ずっとイき続けててつらくない?」
「へぅ
……
♡」
「ああ。つらくても気持ちいいからイイんだ?」
返事の代わりに、頭が動いたのが見えた。
相変わらずどこまでも貪欲な人だ。というかやっぱりマゾっけあるよなと思う。元からそうだったのだろうか。それとも僕が目覚めさせちゃった? だとしたら申し訳ないような気がするけれど
……
まあ責任を取ればいいだろう、うん。
膨らみかけた罪悪感を早々に放り投げた。
「ダンデさん」
気を取り直して目の前の情事に集中する。ひくついて締めつけてくる媚肉は、何度も出した精液によって濡れそぼっている。トロトロにほぐれきった、雄を喜ばせる淫らなぬかるみ。
――
この穴を犯して、僕の物にしないと。
本能からくる衝動なのか、内なる自分の声が聞こえた。卑しく野蛮で危険な思想だ。だけど行為自体は合意なわけだし、ダンデさんだって欲しがっている。抗う理由は何一つない。
「はっ
……
」
僕は笑っているようなため息を吐き出して、本能の命ずるままにズンと穿った。
「ぁあ~ッ♡♡」
跳ね上がった腰を両手で掴んで体重をかける。脈打つ肉棒を内壁で扱くようにして揺さぶった。
「ああぁぁ~~ッ♡♡」
なんだかこれ、ダンデさんをオナホにしてるみたいだ、と思ったのは内緒だ。(言ったら言ったで喜ばれそうではある)
僕専用の肉オナホをしばらく楽しみ、それから体勢を変えた。寝バックの体位で広い背中に抱きつく。体温の高い肌身へと密着した。
「ねえダンデさん」
汗ばんだ肌に唇を落として、髪の上から肩甲骨に歯を立てる。
「えっちぃこと言ってみて?」
シーツとの隙間に差し込んだ手で、乳首をつまみ上げた。
「ひンッ♡」
さっきたくさんいじったそこはすっかり腫れあがってしまっている。痛そうなくらいに尖りきった乳頭を強くねじった。
「あぁぁッ♡♡」
「ねえ聞かせて。ほら♡」
開発によって肥大化したエロ乳首を容赦なくいじめる。引っ張って、爪を立てて、捏ねくりまわす。
「ぉおっ♡ あッ、アッ、アッ♡」
「言ってよ」
その背中をがじがじと甘噛みした。
「っ
…
、」
引き攣った呼気が聞こえ、密着した体に力が入ったのが分かった。
「
……
ちいい
……
」
ぼそっと聞こえてきた声に動きを止める。待っていると、ダンデさんが肩を上下させてふうふうと息を吐き出し、それから絞り出すように言った。
「マサルくんのおちんぽ、きもちいい
……
♡」
「ふはっ」
思わず笑ってしまった。バカにしたのではない。嬉しさからだ。
「もっと言って」
抽挿を再開しながらさらにおねだりした。
「ッア♡♡ っ、きもちい♡ きもちいぃっ♡ マサルのおちんぽぉ♡♡」
ガニ股で下半身をガクガクさせながらも健気に続けてくれる。もしこの光景を第三者が見れば、陳腐で間抜けなやりとりに映るのだろう。だけど僕の胸は、喜びと幸せで満たされていった。
「もっと♡」
「ッ、ぁはっ
…
♡ きもちぃ♡♡ これすきっ、すきッ♡ すきぃっ♡♡」
「好き? 僕のちんぽが?」
「すきっ♡ ちんぽすきっ♡♡ すきすきッ♡♡
…
っッ♡ まさるっ♡ まさるっ♡♡
…
ッ、っ
……
まさるくんだいすきぃっ♡」
「ッ
…
、」
快楽に溺れ、IQが下がりきってしまっている恋人。そんなダンデさんが愛しくてたまらなかった。
「
……
僕も好きだよ、ダンデさん」
その肩に縋りつくようにして抱きしめる。息を吞んだ恋人の耳にしっかりと届くよう、強い語調で言った。
「淫乱で可愛いあなたが、大好き」
「
……
♡♡♡♡」
ダンデさんが足先を丸めて全身を震わせる。そして僕の物を締めつけながら、イッた。
ラビリンス(お忘れかもしれないがホテル名だ)を出ると、すっかり日が暮れていた。早く帰って泥のように眠りたい。食事もしなくていい。とにかく眠りたい。僕の頭の中はその思いでいっぱいだった。
もう何も考えたくないし何もしたくない。とにかく疲労感が半端なかった。かろうじて歩くことはできているけれど、叶うことなら今すぐベッドに倒れ込んで睡眠を貪りたい。自宅のベッドが恋しくてたまらない。そんなふうに思ってから、自嘲の笑みが漏れた。長時間ベッドの上にいたことが、疲れ切っている原因だというのに。
耐久セックスで酷使した体が悲鳴を上げまくっていた。正直会話するのも億劫で、僕もダンデさんもお互い無言でタクシー乗り場までゆっくり歩いた。人通りが少ないせいかやけに静かに感じる。
ふと隣から意味深な視線が寄こされ、なんですかと目だけで問いかけた。ダンデさんの瞳が下方を見る。示された先を見て、外だというのに僕達が手を繋いでいることにようやく気づかされた。恐らくチェックアウトの時から、ずっと繋いだままだったのだ。
「
……
」
タクシー乗り場までかなり近い。ほんのちょっとの距離だから、今手を離したところで意味がない。自分相手にそんな言い訳をして、僕は離そうとしなかった。
これ以上隣を見たら照れそうなので前を向いて知らんぷりする。意識しているのが丸わかりな態度。少し前までドロッドロのぐちょんぐちょんにまぐわっていたくせして、手繋ぎくらいで今さら何を照れているんだか。
自分自身に呆れかえっていると、繋いだ手に力を込められた。痛くはないけれどしっかりとした強さで握ってくる。考えていたことがまた読まれたんだろうか。僕より大きなその手に宥められている気がして、唇を噛んだ。
「パフェが二十種類、ケーキが十五種類、ドリンクが三十種類あるらしい」
なんの話だろうか。ダンデさんを見上げて首をかしげると、屈託ない顔で微笑まれた。
「ラビリンスのフードメニューだ。カレーは百種類ある」
「
……
ラブホテルってすごいんですね」
「自慢だとオーナーから聞いていたのに注文するのを忘れていた。明日また行こう」
「は?」
思わず立ち止まってしまった。
なんだって? 聞き間違い?? 頼むからそうであってほしい。
「今日着なかったルームウェアを着てパフェを食べるキミが見たい」
どんな口説き文句だ。プリンが描かれたジェ●ピケのルームウェアを着る僕がそんなに見たかったんだろうか。ちなみに、ダンデさんにはカビゴンを着てもらうつもりだった。
「明日、ですか
……
」
「嫌か?」
嫌です。勘弁してください。そう答えたかったけれど、デジャヴを感じて言葉を飲み込んだ。
「マサルくん。オレとまた、ラブホテルに行ってくれるか」
はい喜んで、とはさすがに言いたくなかった。今日で精液は出しきったし、明日もだなんて考えるだけで寒気がしてくる。
だけど断ったらどうなるのか
……
空恐ろしくて、僕はその場から動くことができなかった。
〈了〉
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