奴田原 ミズキ
2024-05-26 00:07:02
917文字
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惑溺

ビマヨダワンドロ
お題「キス」をお借りしました。
でろんでろんになるヨが好き

いきができない。
思考は海の底へ、身体は快楽の湖へ。
は、は、と短い呼吸を挟んで、角度を変えて、また、深く。
熱を分かち合う。水音が響いて、ぬるついた唾液が喉の奥へ流れ込んでいく。それでも留めることは出来ず、顎を伝い喉に落ちる。
視界が揺らいでいく。ふわふわと浮ついて、立っているのか座っているのか、寝ているのか起きているのか、わからなくなる。
ただ背に回っている太い腕と、頬に添えられた熱い手のひらだけは強く感じていて、安心して身体の力を抜いている。
なすがままにされている。
好き勝手にされている。
名を紡ぎたくて口を離したのに、追いかけるようにまた塞がれる。
熱い舌が暴れまわっている。逃げるように引っ込めても、無理やり引き摺り出される。絡まった熱は脳をちりちりと灼いて、嗚呼、このまま溶けてひとつになってしまいそうだ。
そんなことをぼんやりと思っていたら、やっと口を離される。言の葉を紡ぎたいのに舌を仕舞えず、犬のように浅い呼吸をすることしか出来ない。
また塞がれた。満足に取り込めなかった酸素が再び擦り減らされていく。
あつい。
身体が輪郭を失い、ぐずぐずに蕩けて、最後には何が残っているのだろう。
2つの瞳がぎらぎらと輝いている。
少し浮遊感を感じて、次に背中に冷たいシーツの感触がした。
びりびりと何かを破く音がする。
伸ばした手に指が絡まって、燃えるような熱を感じた。
これから何をするかくらいは、もうわかっている。
だから名を呼びたくて、自分もだと求めたいのに、何も出来ない。
呼吸も、熱も、あいも、何もかもが、奪われていく。
だからせめて、せめてと繋がれた手を強く握る。
その途端、あんなに必死な顔してたくせに、目を見開いて漸く唇が離された。

浅い呼吸を繰り返す。とろとろの思考はそのままに、眼前の男の名を紡ぐ。

「びーま、」

ゆるす。
おまえが奪うと言うのなら、おれもおまえを奪ってやる。
何も考えられないように。何処にも行かぬように。
お前のその執着あいは、俺だけのモノだから。

ドゥリーヨダナ」

頭のなかがびりりと痺れる。
嗚呼、良い。その、欲に塗れたその顔が、

何よりも、愛おしい。