溶けかけ。
2024-05-25 18:51:27
1525文字
Public ほぼ日刊
 

愛情→恋情

昨日の呟きの押し倒してみたらなんか予想と違った反応された。みたいなヌフの話です。

「フリーナ。前々から言おうと思っていたのだが……君の服装は露出が些か多すぎるのではないのかね?」

 ある日の夜のこと。恋人であるヌヴィレットはソファでだらしなく寝転がり本を読む僕にそう言った。

……そうかい?これくらい普通だと思うけど」

 今の僕の服装は青色でフランネル地のホットパンツにノースリーブというセットアップだ。いわゆるルームウェアなのだが、彼は何をそんなに気にしているのだろう?

「郵便や知り合いが訪ねて来てもその格好で出るのかね?」

……そうだけど?」

 どうせ、郵便はヌヴィレットが持ってくるし、知り合いに至っては、ほとんど来ないと言っていい。仕事の関係者が来るときは流石に着替えるけど。
 僕がそう言えばヌヴィレットはさらに眉間の皺を深くした。あんまりやると皺が取れなくなるぞ、と茶化してやろうかとも思ったが、彼が存外、真面目な顔をしているのでやめた。

「私は君の恋人だ」

……? 知ってるけど?」

 というか、告白してきたのキミだったよね?と僕は内心で首を傾げる。

「君のその姿を見て良からぬことを企む者がいるとは思わないのか?」

「待った。――話が飛躍しすぎじゃないか?」

「ほう?というと?」

「まず、第一に僕はこの姿で街に繰り出したりはしない。あくまでルームウェアだからね。つまり、良からぬことを企むような人間の前に姿を見せることはない」

「ふむ。それはそうであろうな」

「次に、ここには僕とキミしかいないし、僕とキミは恋人同士だ。なら、別にどんな格好をしたって問題ないだろう?」

……君が私を聖人君子か何かだと思っていることは分かった」

「何を言っているのかは分からないけど、キミは僕に良からぬことを企むようなやつじゃないだろう?」

 正直、ヌヴィレットが何を考えているのか分からない。口をへの字に引き結んで、不機嫌な顔を全面に押し出して沈黙を守っている。

「はあ……ここまでとは……

 ヌヴィレットがゆっくりと近づき、ソファに寝転がったままの僕の上に覆いかぶさった。

「君が危機感というものを知らないと見えるのでね。それで、フリーナ殿。私が君にこういうことをする機会を虎視眈々と狙っていると分かっていただ…………フリーナ?」

 下に組み敷いたフリーナの顔が徐々に茹でたマンマルダコのように赤く染まっていく。

「え、えっと……つ、つまり……き、キミは……ぼ、僕のこと……をそういう目で……見てたのかい……?」

 弱々しい声で恥じらいながら言葉を紡ぐフリーナの姿に瞠目する。どうせ、何やら面倒な言い訳でもしてのらりくらりと躱されるのだろうと思っていたヌヴィレットの思考は完全に停止した。

「ヌヴィレット……?」

 なにか分からないがピタリと動きを止めて微動だにしないヌヴィレットの下からそっと抜け出す。

「き、着替えてくるね!」

 未だ、覆いかぶさった姿勢の彼に声をかけると寝室へと駆け込んで鍵をかけた。
 扉に寄りかかってずるずると力が抜けたように座り込む。自らの胸に手を置けば、ばくばくと忙しなく心臓が鼓動を刻む音が聞こえてくる。

(ヌヴィレットが僕を……?いや、そもそも、恋人なんだから当たり前なのか!?)





 バタンと扉の閉まる音に我に返る。いつの間にか自身の下にいたはずの彼女はいなくなっていて、逃げられたのだと理解した。いや、逃げてくれて良かった、と言うべきかと纏まらない思考のままソファにごろりと横たわる。
 目を閉じれば暗闇の中に頬を赤く染め、恥じらうフリーナの姿が鮮明に浮かぶ。

「はぁ……私は何をやっているんだ……