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溶けかけ。
2024-05-23 22:27:19
1310文字
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ほぼ日刊
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寒さを紛らわせる方法
アビスの魔術師によって龍の姿にされてしまったヌヴィレットと夜な夜な会いに来るフリーナ(最高審判官代理)の話。
本当は長文で書きたい。
「はぁ~、終わったあ〜。全く、書類仕事なんて何百年ぶりだろう
……
」
ヌヴィレットの執務机に頬を押し付け、処理した書類の山を眺める。彼を最高審判官に任命してからは、書類関係のほとんどを押し付けていたように思う。
「
……
って、こうしてはいられない!ヌヴィレットの所へ行かないと!」
ヌヴィレットの権限でしか処理出来ない書類を彼から預かった鞄に詰め込んで、走り出す。夜の帳が下りたフォンテーヌ廷は人工の灯りに照らされてきらきらと輝いて見えた。
「はあ
……
はあ
……
流石に辛いなぁ
……
」
走って、走って、たどり着いたのは郊外の浜辺。すう、と大きく息を吸い込む。神の目があるから溺れることはないと知っていても、水に入るときは未だに緊張する。
「すぅ
……
はぁ
……
すぅ
……
よし、行くぞ!」
ざぶん、と意を決して海に飛び込む。しばらく泳いで大きな洞窟へと入っていく。
「ぷはっ!はあ、やっぱり、ここまでくるのは大変だなあ
……
」
カバンからランタンを取り出して灯りをつけたら、泳いでへとへとになった足で洞窟の中を進む。細い道をずっと歩くと大きな空間へと出た。
「ぐるる
……
」
薄桃の朝焼けが闇夜に浮かび上がり、洞窟の奥からは何かの唸り声が聞こえた。
「ヌヴィレット。僕だよ、フリーナだ。怖くないから出ておいで」
しばしの沈黙。
数分してから、ずるずると引き摺るような音が聞こえて真っ白で大きな龍が姿を現した。
「ぐるるる
……
」
「しょうがないだろ?キミがそんな姿になっちゃったんだからさ」
大きな体を撫でる。ざりざりと荒い鱗の感触がした。
「ぐるるるる
……
」
「いいよ。困った時はお互い様さ」
フリーナの包帯の巻かれた腕をヌヴィレットが心配そうに眺めてきゅう、と申し訳なさそうな顔をしながら鳴いた。
「いいんだよ。キミが悪いんじゃないんだから」
なるべく優しくヌヴィレットを撫でる。
彼はアビスの魔術師によって龍の姿に変えられた当初、酷く錯乱し、近くに寄るものに手当たり次第、攻撃を仕掛けていた。フリーナの腕の傷もそのときに負ったものだ。
「くすぐったいし、仕事が出来ないだろ」
未だに心配そうに纏わりつく顔を押しのけて、近場の岩に座って鞄から書類を取り出して見せる。フリーナが必要な処理を聞き、ヌヴィレットが頷いたのを書類に反映させていく。
「終わりっと
……
ふわあ
……
眠いと思ったらもうこんな時間か」
伸びながら欠伸したフリーナは時計を確認すると呟いた。
「今日はもう帰るね」
帰ろうとするフリーナは、くんっと何かに引っ張られて歩みを止めた。
「
……
ヌヴィレット
――
さみしいの?」
ヌヴィレットがフリーナの服の襟に爪を器用にかけ、引き止める。
「ぐるる
……
」
しょんぼりとしながら襟から爪を離すヌヴィレットは案外可愛い。
「しょうがないなぁ
……
こんなサービス、キミだけだからね」
フリーナはそう言うと、ヌヴィレットの顔を抱きしめた。
「ほら、一緒に寝てあげるから、温めておくれ
……
ここはとっても寒いから」
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