わらびもち
2024-05-23 18:34:47
1214文字
Public
 

VOID公開NPC誕生日おめでとうSS

赤星くん誕生日おめでとう
自探索者とのお話

「俺こないだ誕生日だったんだよな。」
「はぁ。」

気のない返事が出たのは興味がないからというよりも、何で今言うんだという疑問からだった。
部屋にいるのは机に向かって課題をする不破遥と、休日出勤の黒田に代わり遥の面倒を見ている赤星透也だ。

「な、プレゼント代わりに今日は外で飯食わね?行きたい店があんのよ。」
……私そんなにお金ないよ。」
「俺が出すって!んで、その後は買い物しよう。遥、服あんま持ってないだろ?」
「別に、あんま外出ないし。」
「持っといて損はねーよ。俺や黒田さんと出かけることだってあるだろ?」
……。」
「俺が金出す代わりに、服は俺が選ぶからな!俺の誕生日なんだし。」
「誕生日なのに、お金払うの?」
「金がどうとかより、俺のやりたいことやらせてって話よ。普通の日に言っても遥は断るだろ?」
……。」

図星をつかれて黙り込んだ隙に、あれよあれよと外出の準備が整う。

赤星が遥を連れ出したのには理由がある。監視とは何もただ見ているだけではない。遥の目を、事件ーー天城夫婦の殺害から目を逸らすためだ。
黒田を証拠隠滅のために使った以上、交渉材料となった遥を殺害するのは得策では無い。となれば事件を忘れたまま過ごせるよう、真相を追うことなど忘れられるようにすることが次善の手だ。
そういった理由もあり、引きこもっている遥を外に連れ出そうという魂胆だ。



「遥はどっか行きたいとことかねーの?」
「行きたいところ?」
「そ。こないだは動物園行っただろ?水族館に遊園地……黒田さん忙しいからしょっちゅうは無理だけど、たまになら旅行にだって行けるかもな。」
「えっと……ゆっくりできるところ?」

別に。特に。そんな返事を予想していた赤星は、数瞬返事に遅れる。しかしすぐに気を取り直し、自分の中の情報を修正する。

「いいねえ、慰安旅行みたいな?温泉……は、遥1人になっちまうしな、ゆっくり観光できるとこなんかいいよな。夏休みどっか行けるか黒田さんに聞いてみるか。」
「山がいい、かも。」
……何で?」
「? なんとなく。海より山の方が落ち着く。」
「山かー。川あるとこだと涼しそうだよな。」
「ん。」

話しながら、赤星は服をとっては戻しを繰り返している。やがて決まったようで試着をする。それをいくつかの店舗で繰り返し、夕方に帰る頃には満足気な赤星の手には少なくない買い物袋が握られていた。自分も持つよ、と言った遥に渡された袋は一番軽いもので、不満はあれどこれ以上は妥協してくれないことも知っている。

「んじゃ、夏はこれ着て旅行だ。」
「先に黒田さんに聞いてみないとだよ。」
「駄目とは言わねーよあの人。」
「そうかな……?」
「そうだよ。」
「そっか。……ちょっと楽しみ。」
「俺はすっごく楽しみ。」

赤星の笑った顔が夕日に照らされる。眩しくて目を細めた遥の口元も、笑みが浮かんでいた。