現界時に付与された一般知識によると、段階を踏んだ交渉が重要らしい。
同意があるから告白するのであり、断られないと知っているから頼み事をするのだ。
要は相手が男であれ若いオレであれ、オレのことを恋愛対象として好きになりお付き合いしたいと思わせられれば良いという事だ。
若い頃のオレ相手の場合どうするか一般的な見解を知りたかったが、男同士でヤるにはどうだの感染リスクはこうだの現代の正しい性知識が増えただけだった。英霊同士には不要な代物だ。いったい誰を想定してんだか。
オレは自身のことを嫌いではない。かと言って若い頃に自身へ欲情した覚えもない。あいつは若い頃のオレではあるが同一ではない。ズレがあるから好きなのか。違うな。そうではない。そうではなくて
……。こういうことはいくらキャスタークラスになったからといって明かされるものでもないか。
しかし。
クー・フーリンであるオレが欲しいと思ったものは手に入れるべきだろう。
「
……」
考えている間に部屋の前まで来てしまった。
ノックして、暇かと尋ねて、暇なら一杯付き合えと誘う。まあ予定がないことは調べてある。あいつの前だとマヌケになっちまうオレは先をいくつかシミュレートする。どうだろう、もうワンパターン練っておくか。
今までは自然体で話せていたというのにこの体たらく。普段通りの会話を思い出そうとしていると、ふつふつとランサーへの怒りがこみ上げてきた。あの野郎「お前ってほんとプロトのこと大好きだよな、オレとの対応が違いすぎる」としみじみ言ってくるもんだからオレがあいつのこと好きだと気付いちまったじゃねぇか。殺す。
小さな音を立てて目の前のドアが横滑りに開いた。
「「あ」」
中から開けられたドアの向こうに若いオレが立っている。オレの頭の中でごちゃごちゃ考えていたことが全部吹っ飛び、というかオレの態度からこいつが気付かないわけないだろ昨日までの無自覚オレよさらば今日のオレはプロトが好きな自覚オレ。なんとしても手に入れたくてでもこいつが気付いていたら小細工しても無駄じゃね? オレはできる男。最速でやることといえば
「今晩一発どう?」
「
――最初はお友達から始めるのが一般的だろ。出直してこい」
了
タイトルはお題配布サイト(
https://nanos.jp/iwantfly/ )より