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明らか
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小説
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抱かれたい日にぶち当たった師匠の話 全年齢
同タイトルの全年齢版です。描写はありませんが体の関係があること前提の会話をします。2人はリバですがこの話はモブ霊をします。
夕飯を食べ終えお風呂から上がると、師匠が台所でお皿を洗っていた。
「お皿、ありがとうございます」
「ん、いーよ」
飯作ってくれたし、とスポンジを泡立てながら師匠は言う。今日の夕飯は僕が作った影山家秘伝のオムライスだった。フライパンにこびり付いたケチャップと米粒がなかなか取れないようで、ごしごし洗ってるうちに捲った袖が腕に落ちてきそうだった。
僕は師匠に近づいて落ちてくる袖をそっと捲ってあげる。すると師匠はビクッと跳ねて、お皿を洗う手を止めた。
「
……
サンキュ」
ほら、早く髪乾かせよ。風邪引くぞ。僕にそう言うと、師匠はまたお皿を洗い始めた。
僕が髪を乾かし終わるのと同時に皿洗いを終えた師匠がお風呂に入りに行く。師匠がお風呂から出てくるのを待つ間、テレビでも見ようかとチャンネルを替えていると丁度映画がやっていたのでそれを見ることにした。随分古そうな映画だな。カンフー?っぽいけど、サッカーをしている。ボールで人が吹っ飛んだり服が弾け飛んだりする。まるで超能力みたいだ。おもしろい
……
のかな。師匠はこの映画を知っているだろうか。お風呂から上がったら聞いてみよう。
暫く見ているとお風呂で温まったのもあって瞼が重くなってきた。師匠、遅いな
……
。時折風呂場から音がするから倒れてはいないようだけど、随分長風呂だなぁ
……
。
「モブ、モ〜ブ。寝るなら歯磨いとけよ」
気がつくとパジャマを着て髪を濡らした師匠が目の前に立っていた。どうやらソファで眠ってしまったらしい。映画は終盤のようで、ボールの風圧でゴールがなぎ倒されるとこだった。
「ん、ん〜
……
まだ寝ない
……
」
「
……
そ」
僕を起こすと、師匠はそのまま洗面所の方へ向かおうとする。僕は師匠の袖を引っ張りこちらへ引き戻した。
「師匠
……
」
「
……
ん?」
「髪
……
僕が乾かしたい」
一瞬ポカンとした表情を見せた師匠が、次の瞬間ぷはっと吹き出す。
「そんじゃ、乾かしてもらおうかな」
ソファに腰掛け、足元に座る師匠の髪にドライヤーをかけていくと、甘いキャラメルのような明るい茶色をした師匠の髪は、僕と違ってコシがあってふわふわとしているせいか大きな犬を撫でてるみたいだった。
「
……
なんか、好きだな。こういうの」
そうぽつりとつぶやく彼に、胸がふわっと温かくなる。
「俺、お前に頭触られんの、結構好きなんだよな」
普段、師匠は自分のことをあまり話さない。だから、時折こういうことが好きだと師匠に言われると、なんだか師匠の内面を知れたようで、嬉しくてたまらない気持ちになるんだ。
「僕も好きです。師匠に頭触られるの」
子供の時からずっと触れられてきた、師匠の大きな手。その手で頭を撫でられるのが、僕は一番好きだった。あの頃より幾分か大きくなった僕の手で、師匠の頭に触れることを師匠も好きだと言ってくれるなら、こんなに嬉しいことはないな。
今度お風呂でシャンプーしてあげますよ、って言ったら彼は照れくさそうに笑ってくれた。
「はい、終わりましたよ」
ドライヤーをかけ終わり、軽くブラシで解いてあげると彼の頭はふわりと綺麗にまとまった。だけど、師匠は頭を前に倒したまま足元から動こうとしない。
「師匠
……
?」
前を向いてそのままじっと固まっている。どうしたんだろう。さっき解いた髪にそっと触れて撫でてみる。すると今度は頭を後ろに倒して僕の膝に乗せてきた。ふわふわとした彼の髪の毛がハーフパンツを履いている僕の太ももにチクチク刺さってくすぐったい。膝の上の師匠と目が合うと、下からぬっと手が伸びてきて、そのままわしゃわしゃと頭を掻き回された。
「わっ」
ひとしきり撫で回したあと、彼はくつくつと悪戯っぽく笑う。かと思えば真剣な表情に変わり、頭に添えられた手に力が込められ、だんだん下へと引っ張られていく。あ
……
これは
……
。ゆっくり目を閉じると、それが合図と言うように師匠の唇と僕の唇が重なった。ちゅっちゅと口を尖らせ唇の先端を互いに啄むように触れていく。しばらくするとそれが段々深いものへと変わっていった。それと同時に師匠は僕のハーフパンツの裾から手を差し込み、太ももを手のひらでゆっくりと撫で回す。
あ
……
これはまずい
……
。
僕が慌てて唇を離すと、師匠は目をぱちくりさせて固まってしまった。
「すまん、気分じゃなかったか」
師匠は身体を起こすと、肩を落として使い終わったドライヤーを戻しに行こうとした。
「あ、そうじゃなくて
……
その
……
」
師匠の裾を掴んで慌てて引き止める。言い淀む僕を肩越しに見つめる師匠。
僕は意を決して、
「準備
…
してなくて
……
」
と打ち明けてみた。
このところ2人とも忙しくて少々ご無沙汰だったから油断してた。てっきり今日も平和に眠るのだと
……
。あ、でも前だけならできるかも
…
なんて思っていると師匠はおもむろに、
「俺は
……
できてる
……
そっちの準備」
と呟いたので、今度は僕が目をぱちくりさせる番だった。
◆◇◆◇◆
僕達はたまにセックスをする。どっちが上か下かはその時々で決まってないけど、師匠がこうやって誘う時は大抵彼が上になる事が多く、抱かれたいと言われることはほとんどなかった。年上の男の人だし、本当は抱かれるのはプライドが許さないのかもしれない。そうは言っても僕が抱きたいと誘えば彼は身体を許してくれる。そんな師匠に自分を受け入れてもらえるのが僕は泣きたいほど嬉しかった。だから師匠が準備をしてきたという突然の申し出に思わず頭が真っ白になってしまった。
「その
……
なんだ、トータルで見て俺が抱いてる回数の方が多い気がしてな?モブくんも男の子だし、抱かれるばっかじゃ不満があるかなと」
「え、そんなことないですけど。師匠の回数が多いのは僕も誘ってるからだと思うし」
そんなことないというのは半分本当で半分嘘だ。僕が抱く頻度の方が少ないことに不満が無いわけじゃない。けど師匠が気乗りしないことをしたくは無いし、無理矢理受け入れてほしい訳でもない。それに、師匠に抱かれるのだって好きだ。師匠とできるなら僕は本当にどっちだっていいんだ。
「いやまあ、たまには積極的に抱かれてやってもいいかな〜?なんて思ったりもしてだな
……
」
「
……
師匠、気が乗らないならしなくたっていいんですよ。何も義務じゃないんだし
……
」
こういうのは、お互いの気持ちがピッタリ合わさった時にするものじゃないだろうか。今まで男の僕を受け入れてくれたのは、やっぱり師匠にとって義務のようなものだったんだろうか。
「いやいや遠慮すんなよ、減るもんじゃなし。おれ今めちゃくちゃ乗り気だろうが」
「
……
しなくていいです。気持ちがそこに無いのに相手してもらっても虚しいだけだし
……
」
そう言って師匠に背を向け話を終わらせようとすると、後ろから腕を掴まれ引き止められた。
「いいから俺を抱いてくれよ
……
」
縋るような弱々しい彼の声に驚いて思わず振り返る。腕を掴みながら頭を垂れる師匠はなんだかとても小さく見えた。
「アラフォーにもなろうかというおっさんがなぁ、抱いてくれなんてそう簡単に言えるかよ
……
。それも14も下のお前に
……
万が一キモがられでもしたら俺は立ち直れんぞ
……
」
頭を抱えながら観念したかのようにそう話す師匠は、真っ赤だったり真っ青だったり顔色をコロコロ変えては混乱してるようだった。
「確かにそんなに抱かれなくても平気だし、お前を抱く方が性に合ってるとも思うが、抱かれなくていいというわけじゃない。こんなもん知らなきゃ知らないで困らなかったが知った今はもうだめだ
……
。お前とセックスしたい
……
」
切なく響く師匠の声でド直球に求められれば、途端に心臓が大きく跳ねて体温が上昇しさっきまでの薄暗い気持ちは嘘のように晴れていった。
「いつもしてるじゃないですか、セックス」
「してるけど
……
お前に抱かれてぇんだよ
……
」
首まで真っ赤にしてる珍しい師匠の姿に、僕の心はもうこれ以上なく有頂天だった。いつも余裕な霊幻師匠が、僕に抱かれたいなんて。僕を求めているなんて
……
!
「師匠、僕のために抱かせてくれようとしたんじゃなくて、自分のために抱かれたかったんですか?」
「
……
そうだよ。俺が俺のためにお前に抱かれたかったんだよ。
……
幻滅した?」
「そんなの!いつだって大歓迎ですよ!!僕がアンタの誘いを断ったことありますか?僕がアンタを抱くのも好きだって知ってるでしょ?」
頭を覆っていた師匠がやっと少し顔を上げてくれた。
「僕だけが師匠のこと求めてるのかって、少し不安だったんです。だから師匠が僕とエッチしたいって言ってくれて、すごく嬉しい」
もう今すぐしましょう、そう言って師匠の手を両手で握ると、師匠は目を伏せながらこくりと頷いてくれる。その姿が子供みたいで、なんだか無性に可愛かった。
◆◇◆◇◆
「
……
師匠、どうして今日、僕に抱かれたくなったんですか」
行為が終わり、ベッドに腰掛けたところで疑問に思ってたことを口にする。師匠は一瞬戸惑って、その後ゆっくりと口を開いた。
「
……
こないだ街でお前が女と歩いてるのを見たんだ。会社の同僚だろ?そんな感じだった。やましい事は何も無いってわかってるけど、それでも、ああお似合いだなって思ったんだよ。お前が彼女作って女を抱いてる未来だってありえるんだよなって思って。でも、お前のこと誰にも渡したくなかったから
……
。他の奴を抱くくらいなら俺を抱いてほしかった。
……
誰かに取られる前にお前に抱かれたかった。そんだけ」
ぽつりぽつりと呟くように彼は言う。
ああもう。本当にこの人は。
自信があるようで自信がなく、執着心がないようで本当はすごく寂しがり屋だ。子供の頃に見えていた自信たっぷりの師匠とは少し違うけど、それはきっと師匠が僕の師匠である為に頑張って作り上げてくれてたからなのだと、大人になってから気づいた。
思ってたよりも子供っぽく、実は意外と努力家で、本心を人に見せるのが苦手。僕が誰かに取られるんじゃないかって今も不安に思ってる。本当は繊細で
……
とても可愛い人。昔は知らなかったそんな師匠の一面を、僕はすごく愛おしいと思う。
「
……
ばかだなぁ、もう」
「
……
14も年下に入れ込むアラフォーの重たさ舐めんなよ」
「師匠」
僕に呼ばれると、師匠は体を預けていた僕の肩から静かに顔を上げる。その両頬に触れて、僕はそっと師匠の唇にキスをした。
キョトンとする彼の顔。
――
大好きな、僕の師匠。
「ずっと一緒にいましょうね」
そう笑いかけると、師匠は泣きそうな顔で、うん、とだけ返事をくれた。
おでことおでこをくっつけて2人で1つの布団に包まりながら眠りにつく。僕たちは肩を寄せて同じベッドで同じ夢を見ていた。
翌朝、項に派手につけた歯型のせいで師匠がタートルネックを着て出勤する羽目になったのはまた別の話。
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