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いを
2024-05-19 17:57:58
1205文字
Public
ブツメツフツマ
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Sugar makes me bad
全市。
メロディ先生【tamao2mat】
お借りしています。
骨をつくるには、とりあえず牛乳を飲めばいいというのは子どもらしいだろうか。
旋律が「お前の骨は細い気がする」と前に言ったことばを思い出して、ぼんやりと飲み始めた。三十代になって骨は育つのかは分からないが。
コップに半分ほど入った牛乳をからにしてから、水道でコップを洗う。勢いよく水が飛び散ってシンクを水浸しにしてしまった。
蚊帳織りのふきんでぬぐって、きつく絞る。ぷちりと音がした。繊維が破けてしまったのかもしれない。
部屋の窓際でぼんやりと空を見上げていると、スマートフォンがけたたましく鳴った。
旋律、と画面に映し出されている。
「どうした」
「全市、ちょっとこっちに来い。おもしろいものがあるぞ」
「
……
? おもしろいもの
……
。今どこにいるんだ」
旋律はすらすらと住所を全市に伝え、通話を切ろうとしたのか一瞬声が遠くなる。
けれど男の声はすぐにまた耳に届いた。
「そうだ。ちゃんと指輪してこいよ」
電話の向こうで笑っている旋律の顔が浮かぶ。全市は視線を下に向け、指を見下ろした。真鍮の指輪だった。鈍い金色のそのシンプルな指輪は、旋律いわく「鈍いゴールドがお前にぴったりだな」
――
とのことだった。「鈍い」を強調していたように聞こえたから、彼にはそう見えているのだろう。
それじゃあな、と言って旋律は電話を切った。早く来いよ、とも言っていた。
指に嵌められている指輪を、人差し指と親指でくるくると回す。サイズはオーダーメイドではないので、出来合いのものだ。全市の指は太くはないが、細すぎるわけでもない。
真鍮の指輪は、太陽に反射して控えめな金色に輝く。
全市は椅子から立ち上がって、旋律が言っていた場所へ向かった。
自宅から10分程度。旋律は古い喫茶店の前に立っている。身ぎれいな格好をして、全市に気付くと「こっちだ」と手を振った。その指には指輪が嵌められていた。
「思ったより早かったな。ヒマだったのか?」
「珍しくヒマだった」
「まあ、そうか。非常勤講師は本業があるもんな」
周りに人間がいないからか、男は堂々とつぶやいた。それから視線を全市から喫茶店の中に移す。全市もそれに従って顔を動かすと、旋律はドアを引いた。からん、とベルの音が上から降ってくる。
適当な席に座ると、マスターらしい男が氷水を持ってきた。
メニューは座席に用意されていた。
「おもしろいものってなんだ」
「みろよ、これ。デカいプリン」
「
……
」
旋律の細い指がメニューを指差した先。バケツに入ったプリン
――
正確には〝牛乳プリン〟が大きく印刷されていた。
「
……
。デカいな」
「これを、今から、食うぞ。全市」
一字一句ていねいに、男は言った。
「
……
これを、食うのか
……
」
「そうだ」
旋律は笑顔を消し、目の奥に力を入れた表情で頷く。
そして「骨も丈夫になる」と、付け加えた。
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