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明らか
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小説
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父の日
霊幻が父親と不仲になったいざこざを回想するお話です。ホワイティ後、モブくん中3の6月くらいの時期。
※ファンブック前に書いたお話のため霊幻の両親及び過去を捏造しまくってます。
「師匠のお父さんって、どんな人ですか?」
相談所の受付で勉強していたモブが俺にそう問いかける。
「は?俺の親父?なんで急に
……
ああ、父の日か」
季節は6月初旬、カレンダーの第3日曜日には赤文字で父の日と書かれていた。
「今度、律と二人でお小遣いを合わせて、父の日のプレゼントにちょっと良いネクタイを買おうかって話してたんですけど、そういえば師匠のお父さんってどんな人なのかなと思って」
「どんなって
…………
別に、普通だよ普通」
俺は再び手元のパソコンへと目を向ける。
「僕のお父さんはビールが好きなんですけど、師匠のお父さんもそうですか?」
「
…
俺の親父はどちらかというと日本酒が好きだったな。あまり飲めるタイプじゃないが」
「一緒にお酒飲んだりするんですか」
「成人した時に一度くらい飲んだ気もするが、覚えてないな」
へぇ、そういうもんですか、と気の抜けた返事をしてモブは再び広げた参考書へと戻っていった。
─────────────
俺の故郷は味玉県近郊の片田舎にある。
古い山間の町で学校の数も限られてるから、小中高とほとんど選択肢がないような狭い環境の中で育った。
18で大学進学と同時に地元を離れると、生活の全てが刺激で溢れた都会でのひとり暮らしに、俺は舞い上がっていった。
まだ若く、何にでも好奇心旺盛で興味しか無かったあの頃、真面目に講義に出てレポート書いてバイトして、適当にサークル入って合コン行って部室に入り浸り麻雀に明け暮れるといった割とどうしようもない怠惰な大学生活をモラトリアムの許すままに謳歌していったわけだ。まあサークルに至っては俺は幽霊部員だったんだが。
同級生に誘われて酒も煙草もその頃覚えたが、酔って電信柱に頭突きを食らわせた挙句地面に胃の内容物をぶちまけ気づいたらゴミ捨て場の中で夜を明かしてからは己が酒に弱いことを自覚した。
その後は人並みに就活して新卒で入った会社を飽きて辞めて現在に至るわけだが、思えば社会に出てから実家へ帰ることが少なくなっていったように思う。
俺のお袋はあれこれ口を出しては何かと世話を焼きたがるおせっかいなタイプだったが、親父はどちらかというと寡黙な男で、子供に対してとやかく言う人間ではなかったから親父との記憶はあまり印象にない。
大学出て就職した会社を一年で辞めた後、これからどうするのか、あてはあるのかと両親に詰め寄られ、実家で家族会議になったことがあった。
特にあてのないまま辞めてしまったのなら、知り合いに仕事のツテがあるからそこへ行けと言われたが冗談じゃない。いまさら田舎に戻るのなんか真っ平御免だ。
俺はこっちで起業するから地元へは帰らない、心配いらないからほっといてくれと言い放つと普段は何も言わない親父が珍しく声を荒げて、社会に出てまだ日も浅いのにそんなんでやっていけるのか、いったい何を始める気だ、まともな職について早く安定した生活を送れと言うからそのまま口論になった。
俺は一人でもやっていける、プランならある、親父に説明しても理解できないんじゃ埒が明かない、俺は大丈夫だからほっといてくれと、最後の方はもうここへは戻らねえとほとんど吐き捨てるようにして実家を出た。
親父に俺の何がわかるっていうんだ。
以来、親父とは顔を合わせていない。お袋は心配して親父のことを度々俺に伝えてくるし、向こうもお袋から俺の様子を聞いてるようだが親父からの連絡は無い。
─────────────
「師匠、よかったらこれ、もらってくれませんか」
事務所にやってきたモブの腕には何やら小さいボトルが2本抱えられていた。
「なんだそれは?」
「おばあちゃんが漬けた梅酒なんですけど、作りすぎちゃったみたいで。お母さんが霊幻さんにどうかしらって言ってたので持ってきました」
モブは俺が酒に弱い体質だという事を知らない。
だが世話になっている弟子の両親からの好意を無下にするのも気が引けたので、折角だし有り難くいただくことにした。
古びたアパートの一室にモブのばあちゃんが漬けた梅酒を持ち帰る。
試しに飲んでみるかと小さいコップにほんの少し注いで氷と水で割り、できるだけ薄めた状態で舐めてみると、なるほど、まろやかで口触りの良い甘さ、ほんのり日本酒の香りはするが飲みやすい。
ただ、小さいとはいえボトル2本、下戸の俺には消費するのに些か荷が重かった。
そこでふと、先日のモブとの会話を思い出す。
今度の週末は6月の第3日曜日、父の日だ。
親父の後ろ姿を思い出す。
…………
父の日のプレゼントってか。
そんなもん社会に出てからしたことがない。
どの面下げて贈れっていうんだ。大体親父も酒は得意じゃねえんだから嫌がらせにしかならんだろ。
そう考えてはみるものの、捨ててしまうのは勿体無い。
……………………
そうだ、これは弟子の好意だ。あくまで貰い物の消費を手伝ってもらうだけだ。
俺は封を開けていない方のボトルを梱包し、頂き物だが家族で飲んでくれと簡単に手紙を添えて実家へ送ることにした。
─────────────
後日、モブから貰った梅酒をほろ酔いながらちびちびと飲んでいると、ポケットに入れっぱなしにしてあった携帯に一通のメールが届いた。
『梅酒、美味かった。ありがとう』
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