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あじゃりもんた
2022-02-13 00:46:26
2344文字
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贈り物
2022年2月ロビシャルWebオンリー「オニオンスープと二人の朝」参加作品。
クリスマスから付き合い始めたしゃらくさいロビシャル。
そわりとシャルルが身じろぎをすると、それにつられたようにロビンも座り直した。
視線はちらりともこちらに向かない。
重たい空気に、シャルルは居心地の悪さを感じていた。
原因ははっきりとしている。
ロビンが、先日ふたりで呑んだ時に「クリスマスのプレゼントは何が良いのか」と訊ねてきた。顔は酔いだけではないもので赤く色付いていて、テーブルの上の拳はぎゅっと握られていた。
確か去年は美味しいお菓子をと言ったのだったか。その前はふたりで呑めるようなワインを。さらにその前は遠出の予定があったから手袋が欲しいと言った。
ロビンは毎年勇気を振り絞って、シャルルに訊ねてくれる。
だから今年は、何もいらないと。あるものだけで十分だと。そう伝えたのだ。
そうしたら、その言葉はどことも分からないロビンの逆鱗に触れたらしい。
がたりと椅子を引いて立ち上がった彼が「オレにはもう期待してないってことですか」と低い声で唸るように呟いて、そうではないと止める間も無く部屋を出て行ってしまって。
それ以来、ロビンはずっと胸の痛みをこらえるような苦い表情を浮かべたまま。シャルルはどうしていいやら分からないまま、謝る選択すら出来ないままでいる。
そんな状態のままついに迎えてしまったクリスマス。聖女見習いのマルタ・サンタが皆に料理を供して、カルデア中が美味と温かさに包まれる。みんな溢れる笑顔で、聖夜の晩餐を楽しんだ。
少しだけ浮かれた気持ちのまま部屋に戻ってきたら、ロビンは先に戻っていた。酒宴に参加しているのをちらりと見かけていたから、てっきりもっと遅くなると思ったのだけど。
でも、もうシャルルにはロビンの地雷がどこにあるのか分からない。下手に口を利けないまま、むすっとした顔のロビンの隣へ腰掛けた。
そうしてそのまま、無為に時間は過ぎていく。こうしていたらそのうちに日付も変わって、サンタクロースもプレゼントを配り終えてしまうだろう。
しばし逡巡して、ためらって、うじうじして、それからようやっとシャルルはロビンのほうを向いて言った。
「雪景色でも見に行かないかい」
久しぶりに瞳を合わせてくれたロビンは目を丸くしていたけれど、無言で立ち上がって彼の外套を手に取った。
設定したのは雪原だった。クリスマスのせいか樹々には電飾がくるりと巻きつけられていて、あたりは月明りだけでなく輝いている。舞い落ちる雪の向こうに丸く大きな月が、霞みながらも煌々と光っていた。
ふわふわとした綿雪が音もなく降り積もる。はあっと両手に吹き込んだ息の音すら響き渡りそうな心地だった。
でも、白い地平線がどこまでも静寂に、音を吸い込んでいく。
耳が冷たくって、きぃんとした。目をやるとロビンの頬も耳も寒さに赤くなっている。彼もかじかんだ指先に息を吐きかけていて、もう少しだけ温かい場所に行けばよかっただろうか、と反省した。
うつむき加減の彼の長い睫毛に、白い雪が止まる。ぱちりと睫毛を震わせるけれどしずくはまだそこに纏わりついて。月光を反射して輝いて、まるで電飾のひとつのようだ。
シャルルはそこに唇を落とした。ロビンがシャルルの手を振り払わなかったから、それだけでいいかとも思ったけれど。ちゃんと、飾らずに言葉を紡ぐ。
「きみの笑顔をください」
頬は引き攣っていやしないだろうか。ばくばくと鼓動する心臓がやかましくて仕方ない。
不安で冷え切った指先に、ロビンがもっと冷たい指先を絡ませた瞬間に。ここしばらくずっと感じていたさびしさが音を立てて溶けていくのを感じた。
溢れだす熱が、頬にまで零れだしていく。
ロビンがぎょっとしてシャルルのそれを拭おうとするけれど、シャルルはもっと強く手を繋ぎ直した。
「僕、欲しいものと問われた時に、きみしか浮かばなかったんだ。でも、そんなこと言えなくて。だけど⋯⋯それでも、どうしようもなく、願ってしまう。今が続く限りでいい。今だけでいいんだ。この先も、きみと手を繋いでいたいんだ⋯⋯!」
間近にいるはずの彼に、さぞみっともない顔を見せていることは分かっている。でも、今なら、今日ならば、全部伝えられるような気がしたんだ。
ロビンのほうからも、繋いだ手に力が籠る。
「バカ。あの日から、4年前のクリスマスに『好きだ』と言ったあの時から、オレはアンタのもんだろ。もう自分が持ってるものを強請るバカがどこにいるんです」
「ここにいるよ。ほら、頷いてくれ。返事をくれないか」
「もうとっくにしてるだろうが!」
ロビンの指に、シャルルの手袋ごしの掌に食い込むほどに、痛い程に力が籠った。
顔を上げた彼の熱い吐息が、冷えたシャルルの頬にかかる。
重なった唇はせつないくらいに優しかった。
「ずっと不安で仕方ないんです。オレじゃないものを、終わりをアンタはずっと求めてる。ついにそれしか無くなったって乞われるのかと────あの時みたいに────思っちまったんです」
「そう、だね⋯⋯。僕はそういう存在として、座に定義されているから。止められたとしてもまた駆け出してしまう可能性は、否定しきれない。」
「だろうな。でもな、オレはもう、あんな痛みは御免です。シャルルのことを、その信念も含めて愛してる。だけどな⋯⋯次は絶対、止めるからな」
「うん。うん。きみが僕のものならば、僕もきみのものだもの。損なわない為に、はぐれないように、ずっとこの手を握っていてくれるかい」
ロビンは、やっと笑ってくれた。自分に宛てた、初めてのクリスマスプレゼントを受け取るみたいに。数年越しの贈り物をようやっと手にして、深く深く、頷いた。
inspired by 「聖なる夜の贈り物」/秦 基博
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