ぶんどき
2024-05-17 15:14:34
1315文字
Public TRPG
 

箱から出て、見える景色

GODARCA 現行未通過❌ 自陣⭕
アーロンとニカくんの日常回SS
本編より少し前の話
※世界観捏造してるところあります

 西の城塞、ウェスト・フォート。その中でもウェールズ区画には、神話殲滅機関アルカナ本部との橋渡しとして【魔術師】と【恋人】の区画が存在する。
 【魔術師】のアルカナである幻綾仁嘉と、【恋人】のアルカナであるアーロン・アーセナルはその役割上、共に仕事をすることが多い。
 今日も本部での出張仕事が終わり、ウェスト・フォート支部へと戻るところだった。
「ねえニカ、今日の本部での仕事も終わったし、せっかくセントラル・ロンドンにいるんだしどこかでランチにしてから戻らない?」
 アーロンは軽やかや足取りで長い桃色の髪を揺らし、仁嘉の顔を覗き込む。
「うん、いいよ。……この前来た時、中央通りで美味しそうな匂いがするお店を見かけて……少し気になってたんだ」
「ニカはよく周りを見ているね。よし、ランチはそこにしよう」
「あー、はは……好奇心だけは、あるかも」
 本部が存在するセントラル・ロンドンはこの城塞国家の中で最も巨大な都市であり、他の地域と比べても飲食店なども多い。特に、工業地帯であるウェスト・フォートで普段暮らしている二人にとってはまさに"都会"と呼べるのだった。
 仁嘉の案内で立ち寄った飲食店は、昼時ということもあり確かにいい匂いが漂ってくる。空いているテラス席に座りメニューを眺める。そこまで高価ではないもののこの国にしては品数が多い店だ。
……どれにしようかな……
 悩ましげにメニューの文字を目で追う仁嘉にアーロンはにこやかに笑いかけた。
「ふふ、選べない?」
「うーん、これだけ品数があるとなぁ……これも気になるし、こっちも……アーロンは決まった?」
「うん、俺は決まったよ。……それじゃあ、また次もこのお店に来ようよ、ね?」
 その言葉を受けて、じゃあ今日はこれにしようかな……、と指をさす仁嘉にアーロンは満足そうに頷いた。
 食事を済ませた二人はウェスト・フォートへの帰路につく。
「美味しかったな。……次は今日食べなかった方にしよう、うん」
「いいお店を見つけてくれてありがとう、ニカ。セントラル・ロンドンに来る楽しみが一つ増えたよ」
 アーロンはローズの瞳を細めて笑った。かれこれ10年以上の付き合いになる友人と、まだ知らない世界を知っていくのが楽しいのだ。
 ──そうやって、俺達の世界は広がっていったんだ。

 生い立ちは異なれど、箱入りの世間知らず二人は箱から出て、見える景色の広さに圧倒された。それでも知ろうとした、知りたかった。 
 
 一緒に何かを共有するたびに、自分の世界に彩りが一つずつ増えてゆく。世の中は自分の知らないことだらけだったから。



 

 ──しかし"次"は来なかった。心の何処かでわかっていた、自分達の仮初めの平和はいつ崩壊してもおかしくないこと。明日どころか今日の命さえあるかわからない世界で生きていること。"次"なんていつだって保証されていないこと。

 それは唐突だった。錆びた太陽が動いた。もう戻れない、もう引き返せない。彼等は戦場へと駆り出される。──人類の存亡を懸けて、神話に抗う為に。