氷酒
2024-05-17 13:30:12
660文字
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アイラスの双眼
現行未通過❌(一応)

 手の中の薄い長方形の機械を上へと翳し、ボタンを押す。
 かしゃり、と聞き飽きた安っぽい音がして、視界の一部が画面の中に切り取られた。
 見た通りの記録されたことに、少しだけ胸が弾んだ。この瞬間の景色がこうして残せることが、純粋に嬉しい。
 
「まーた写真撮ってる。好きねぇ」
「うん、好きだよ。だから撮ってる」
「あ、そ。っても、いつもと変わらないでしょ。似たような写真ばっかじゃないの?」
「違うよ。今日は天気がいいし、昨日のは少し雲が出てたし。まぁ、記録を見ないとわかんないけど」
「分かんないって自分で言ってるし! まぁ別にいいんだけど。せっかくならもう少し性能いいカメラにしたら?」
「別に? 今のままで良いし、スマホで撮れるから好きなんだよね」
「あ、そうなの?」
「いいなって思った時に撮りたいから。良いとか悪いとかあんまり分からないし」
「じゃなんで撮るのよ」

 問いかけられ、暫し考える。
 分からなかった訳ではない。ただ、あまりにも自分にとって、それが当たり前のことだったから。どう言おうか少しだけ迷ってしまった。

「だってさ。キレイじゃん、世界って。結構、ずっと」

 独りでも、何が起きても。
 誰が死んでも、生きても。
 まだそこに綺麗だと思えるものがある。それが自分にとっての世界で、存外悪くないと思えるから。

「良いって思ったものは、残したいでしょ」

 あ、それと、ともうひとつ思い出して付け加えた。

「あと、すきな人に見せたい。ほら、キレイでしょ」

 ただ、それだけ。