戌丸アット
2022-01-12 02:29:30
4513文字
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色々と書こうとして止めた小説①

テーマは「吸血」でした。

辻斬りナギリが捕まった事は意外にも様々な人や吸血鬼に知れ渡り、ちょっとした騒ぎになった。
そして面識を持った友好的な吸血鬼や人、特に前から何故か懐いている子供たちが特に皆、口を揃えて話しかけてくる。
いや、俺を恐れたり避けたりしないのか!とナギリは驚いたが、この街には変わり者しかいない事が幸いした。
残念ながらナギリは恩恵にピント来ないくらいには色々と振り回されているのだが。
ただ今日ですら折角のジョンが所属するロナルドの事務所で掃除やお手伝いのカリキュラム、と言う名目で監視付きで訪れていたのに最悪な気持ちだった。

「おや?やっぱり、あの人間拡声器くんと一緒じゃないんだね」
「お前まで言うのか
「うわ、すっごく夏の湿度レベルで暗い!なんだ君って、あの子苦手なんだと思ってたけど違うの?」
「そうじゃない!どいつもこいつもなんで俺にアイツの話をしてくるんだ!!!」

事情の詳細は省くと、ナギリはカンタロウを殴る為に吸対から勧められた更生カリキュラムを受け入れて今は様々なところで社会貢献をさせられていた。
だというのに肝心のカンタロウは、辻田さんと呼んでいた頃に比べると殴った日を最後に極端に会わなくなっていた。
別に気にしている訳じゃない。
だって彼は、カンタロウはナギリが殴ったあの日に殴り返してきたんだ。
これでおあいこ様であります!と言っていた。

「ま、しょうがないんじゃないかぁ、ははは!」
は?貴様ぁ何を知ってる!吐け!」
「スナァ!!!!もう!そんなに慌てなくても教えるよ!ヒナイチ君、今日のお菓子はカップケーキにするよ!」
「お前、何言ってrっいだーっ!!?」
「何味の予定だ?ドラルク!」
「とりあえずプレーンとチョコが出来ているよ」

何故、床から出てきた!と言いたいが、ナギリの弁慶の泣き所に見事にクリティカルヒットしていたので言葉にはならなかった。
本当に痛い時、意外と叫び声とは出ないものである。
それはそう部下が部下なら、その上司も変なのか!?と握り拳を作りながらも無事?に立ち直り、改めて確かめなくてはならない。

「むぐ?カンタロウ、やはり家に戻っていないのか?全くむぐぐ、隊長からもあむあむと言われているのに!」
「おい!食べるか喋るかにしろ!何も分からん!」
「むぐ?すまない、味わいたくてあむ」
「食べるな!!!」
「まぁまぁ、とりあえず紅茶でも飲むかい?」

自分が飲める訳ではないのにドラルクは紅茶の用意を丁寧だがスムーズに準備をすると、この茶葉はちゃんと蒸して飲む方が良いみたいだよ!と得意げでナギリは不思議でならない。
自分が飲めもしないものに何故こだわるのか。

「おや、本当に分からないのかい?」
「なんだと」
「ジョンですら分かるのにねぇ〜意外と鈍いなんて誰にでも可愛らしい所もあるものだね、ジョン」
「ヌヌー!」
「ま、丸まで!?だから、なんなんだ!」

これから分かっていけるので焦らなくて良いですよ、とヌーヌーと言う音と共にジョンが話してくれたので今は置いておく。
彼と触れ合ってから新しい感覚や気持ちに気付いてばかりだ。
とジョンから受け取った今日のカリキュラムで作ったカップケーキは、ほのかに甘みを感じられた。
美味い、かと言われると別になんとも思わない。
吸血鬼としては血の方が圧倒的な旨みを感じる、その独特の、しかし明確な人ではないと突きつけてくる事実には慣れた。
そんなナギリを見守っていたドラルクはカチャ、と飲んでいた紅茶用のカップソーサーを置いた。
ナギリには分かる、中身は血液だ。

「君は誰かに貴方の為のプレゼントです、と物なんかを贈られた事はあるかね?」
「は?なんだ急に」
「ならそうだな、誰にも譲りたくない事は?物でも良い」
「丸」
「うわっ、目が怖いなぁ!?ジョンは物じゃないし言いたいことと離れてるよ!!!」

これ真面目な質問だからね?と呆れられた。
こっちも真面目だっただけに納得できないが改めて考えてみる。
ヒナイチは割と多かったカップケーキの山を4割くらい食べたが紅茶を飲んで、静かに二人の話を聞いている。
口の端にチョコソースが付いていたが表情は真剣だ。

「もう!それじゃあ〜あぁ、あの喋る拡声器くんが喋られなくなったり、他の人に血を吸われちゃったりとかしたらどうする?」
「は?」
「うわ!?……え、嘘でしょ、君」

嘘でしょ、とはどういう事だ?と聞こうとしてダメだった。
ヒナイチが何やら困惑の表情で腰の武器に手を添えて臨戦態勢になっているし、パキっと耳の近くで音がして自分でも驚いて思わず音がした辺りを触った。
思っていた通り、そこには血の刃が当たり前のように生えている。
血の刃が何故か少し暴走気味に勝手に生えるのは自覚しているが、何故このタイミングなのかは分からなくて目の前がグラグラと赤くなっていくような感覚に襲われる。
ヌヌヌッ!と肩まで登ってきたジョンに三人は驚いたが、そんなナギリを怖がる事もなく撫で撫でと頭を撫でてくれた事で落ち着いてきた。
もうナギリは自分の能力への責任を考えなくてはならないのだ、と冷静になれた。
なれたのに、この目の前の高等吸血鬼に空気を読む気はないらしい。

「君、流石にその反応で自覚ないのは、流石に彼が可哀想〜」
「この様子ではカンタロウの休暇は無理矢理でも予定を組む必要がありそうだな!ナギリも絶対にカンタロウが仕事しないように見ていてくれ!」
「な、何だと!?」

正直ナギリは、カンタロウについて尋ねられる事を最初から怒った訳ではない。
何故ならカンタロウは、ナギリのカリキュラム遂行の監視役になっていたからだ。
監視役ならば側に居る時間も多いと思われて聞かれているのだと思ったのだ。
だから実際のところを知るナギリは「俺はVRCに住んでるし、アイツは側に居たがるが偶にしか見かけない」と暫くは返していた。
でも変わらず誰にでも聞かれるので怒ったナギリは「知るか!」と返していたと言うのに、遂に彼の上司から仕事しないように見張れと言われると思わずカップケーキを食べる手が止まる。
なんて内容の頼みをしてくるのだろうか。

「はぁ、今カンタロウは職場に缶詰め状態でなまぁ、流石に今日か明日あたりには開放してもらえると思うから休暇にするのが丁度よいと思うんだ」
「そんな事を俺に言うな!知るか!」
「彼が缶詰めなのは君の尻拭いだろう?確か君、辻斬りしてた時に食事をする際は刃から吸血していたんだろ?それって私や他の吸血鬼から見ると変わってるなぁくらいだけど人間としてはそうじゃないんじゃない?あまり聞かないし」
「それがなんだ、なんでアイツが」
「カンタロウが基本的にはお前の監視を担当しているからな……その、カンタロウが頑張って色々な対応をしているみたいでな、外部からの要請報告とか」
「なっ!そんな事は初耳だぞ!?」

訝しげに可愛らしい顔を歪め、隠す事もなくヒナイチは続きを話す。
本来なら吸血鬼である二人に話すべきではないのだが話している表情の険しさから心情は察しがつく。
曰く、本部を経由してきた日本政府の人間がカンタロウに接触してきたらしい。
どうやらカンタロウを騙して、ナギリをVRCではない所に護送しようとしているらしく、それをカンタロウと吸対が協力して拒否しているのだ。
カンタロウ自身が嫌がったのもあるが、吸対としても急に現れた政府の役人に苦労して捕まえ、そして本人にも形だけだろうと更生の意志がある事を示している吸血鬼を無碍にする事は出来ない。
それを無視するような行為をするつもりはない、とヒヨシ隊長直々の言葉だったそうだ。



「あれ?これ私ちょっとマズイ事、言っちゃった?」
「え、大丈夫じゃないか?」
「そうかなあの感じだと別の方に行ってしまいそうだけど……ま、いっか」
ーーーーー

「あ、もう血液パック少なくなっていたでありますね!?でも食事に問題は無さそうで何よりであります!」
「あぁ、刃からの接触だから突き刺せば良い」
「なるほど……なんか紙パックみたいでありますね!」
「何処をどうしたらそうなる!?」

こう、ちゅ〜と吸う時に刃を刺す感じが紙パックにストローを刺すみたいであります、と呑気に話す。

「そういえば今日の食事はお済みですか?もし良ければお買い物にでも行きましょう!」
「何故、俺がお前と買い物なんぞ行かなきゃならん!」
「えー!?一緒にお買い物に行きたかったであります!!!うぅ、その実は今までのは吸対に申請を出して取り寄せた物をお渡ししてたので本官、実は血液パックを買った事がないのであります!あと流石に本官が吸血鬼の方向けの血液パックの購入が出来るか微妙でありまして」
「だからお前に関係がっては?吸対なのにか?」
「はい、それだと職権乱用となってしまうでありますから!身分証明などで話す事自体は問題ないと思いますが確かパートナー制度とか利用しないと買わせてもらえない場所が増えていたと思うであります」

昔から血に毒などの別のものを混ぜたりする不届き者が居るので、血液パックは人間用の輸血パックとしても流通している為に管理がどんどん厳しくなっているのであります。
などとナギリの質問にスラスラ答えるカンタロウに驚いて、ふっとそういえば目の前のコイツは警官だったなぁと呆れる。
あとお前が職権乱用になるとか気にするのか、と思いつつスルーした。
目的の都合としては今の話題は都合が良かったがカンタロウは話を聞かない事が多いのでナギリは本題に入りたかった。

「話が長い、あとは今日は買い物をしなくていい」
「わーん!すいません!っておや?もう食べておられましたか?」
「いいや、今からだ」
「わっぷ!?え、ちょっとナギリさん!?」

バサッとブランケットをカンタロウに被せた。

「お前を寄越せ」
「え、ほ、本官の血ですか?それは別に構いませんが何故にこの体勢に!?ちょっと恥ずかしいであります!」
「違う、血も貰うがお前自身を抱きたい、ダメか?」
「はい!!?」
「なんだ、即答か?」
「違うであります!!!」

分かってるでありますよね、ナギリさん!?と動揺しているカンタロウに、ニヤッと笑う。

「どうしちゃったでありますか、ナギリさん!?」
「俺が日頃のお前に言いたいわ、馬鹿が!!!」
「な、ならば何故そんな急に!?あ、そうだ!その、本官たちは付き合ってる訳でもないじゃありませんか!」
「なんだ自覚あったのか?まぁ、気にするなら付き合えば良い、コイビトどーしって奴になるんだろう?」
「違っ!いや、違っている訳ではないですが違くて!うぅ、えーん!!!」

ちょっとしたパニック状態だ。
ナギリさん付き合うの意味を理解してるじゃありませんか!とカンタロウは抗議してくるが、ナギリからすれば知った事では無い。




■ここまで書いて思いつかないので在庫処分です。