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【クレガロ】主従AU
書き納めクレガロです!今年一年大変お世話になりました!来年もたくさん作品を届けられるように頑張ります!みなさん良いお年を!
なんでも許せる人向け!
広大な土地にひっそりと佇むカントリーハウス。
フォーサイト家の当主である、クレイ・フォーサイトは蝋燭の明かりで照らされた手元で領地管理の書類に目を通していた。
大戦時は陸軍少佐の地位についていたが、左腕に弾が被弾したため、国へと送還された負傷兵であった。
上手く動かせない左側の扱いには慣れてはいるが、趣味だった乗馬を楽しむことは出来なくなってしまった。
じじ、と蝋燭の真が燃える音を聞きながら、一生付き合っていかなければならない不自由さにクレイは嘆息した。
すべては戦争のせいだと。
──コンコン。
「クレイ様、夕食のご用意ができました」
第一下僕である青い髪の男が扉を開ける。青年の名はガロ・ティモスと言った。
“下僕”と呼ばれる彼らは、執事とは違い、客への応対を行う。食卓では給仕を行い、銀食器の手入れも仕事のひとつだ。
「はあ、ガロ。ふたりきりのときは様も敬語もいらないと言っているだろう」
「
……
でも」
「いい、どうせ私たちだけだ」
年末年始は屋敷勤めの者であってもそれぞれの家へ帰ることが多いのだ。ではなぜ、彼らふたりだけなのか。それはガロが戦争孤児だからである。
クレイが負傷した腕を抱え、駅へ降りた時、首から名前の札を下げた子どもたちがいた。
彼らは皆、戦争で家族を失い天涯孤独となった戦争孤児たちだった。ちょうど雪のちらつく年の瀬、クレイはガロとの出会ったのだ。
「いつも思い出すよ。クレイが俺を拾ってくれたから、こんなに綺麗な服を着て、ピカピカの靴を履いて、温かい食事にありつけるって。あなたには感謝してもしきれない」
「大袈裟だな」
クレイの着いた食卓へ、温かい食事を次々とサーブしていく。
「ついでだ、お前も一緒に食べるといい」
「それはできません!」
「ほら敬語
……
当主の命令だぞ」
「あっ!
……
ごめんなさい。俺は、執事になるのが夢だから。下僕を務めあげないと執事に昇格できないの、クレイ知ってるだろ?もっとあなたの身の回りの世話を焼きたいし、屋敷全体の生活が滞りなく進むように貢献したいんだ」
クレイの隣へ立ち、彼を見下ろしながら強い意志を持った目で見つめた。
「
……
仕方がないな。では冷めないうちに食べるんだぞ」
「ありがとう。その言葉だけでも嬉しい」
ガロはふふっと笑いながら、クレイと出会った時のことを思い出していた。
戦争で両親も家も失い、着の身着のままさ迷っていた。しばらくは教会で無償で配られる食べ物でなんとか生きていたが、ついに戦争の煽りを受け配給される食べ物すらなくなってしまったのだ。
そして、食べ物と寒さをしのげる場所を探してさ迷い歩いていたが、身が凍るほどのの寒さについにガロは歩みを止めた。幼い彼は穴の開いた靴をぼうっと見つめる事しか出来なかった。
このままだと寒さと飢えで死んでしまうかもしれない。でもそれでお父さんとお母さんの元へ行けるのなら、別に悪いことでもないなあ、そう考えていた。
風をしのぐため、ガロは駅の脇の階段に身を隠すように座っていた。列車から降りてくる人たちの足早に向かう足音が聞こえる。雪がちらつく中、行き交う人々は皆家族の元へ行くため急いているようだった。
それもだんだんと数が減って行き、ついにはほとんど人は見当たらなくなっていた。
もうこのまま眠気に任せて寝てしまおう。ガロは目を閉じた。
そこへ今まで遠ざかるだけだった足音がぴたりと止まった気配を感じ、ガロは顔を上げた。
「君、ここで何をしているんだ?」
「
……
」
軍服を着た男が目の前に立っていた。彼は左腕を包帯で巻き、吊るしていた。
「私はクレイと言う。君の名前は?」
「
…
ガロ」
「そうかガロ。突然なんだが、こんな成りをしているが私はある屋敷の当主なんだ」
「えっ」
ガロは突然のことに瞠目する。屋敷の当主ということは、一般人ではなく爵位つきの身分の高い人間だ。一生でそのような人と関われる機会などほとんどなく、労働階級者とは住む世界も違う、月とすっぽん以上の雲泥の差があるのだ。
「これから当主を努めるにあたり、こんな腕では支障が出てしまう。どうだろう、下僕として身の回りの世話を頼めないか?今なら温かい家と食事と寝床付きだ」
「
……
」
「どうだろう?」
「
……
こんなおれでいいの?」
「ああ、おいで」
差し出されたクレイの右手を取ると、ガロはそのあたたかさにほっとした。手の先からじわじわと全身に熱が巡っていくようだった。
「
……
クレイさま?」
「ガロ、私のことはクレイでいい」
「わかった!クレイ、ありがとう。おれ、がんばるから」
「期待しているぞ」
きゅるるとかわいらしい音がお腹から聞こえ、クレイが笑う。ガロは恥ずかしくなって思わず俯いた。
「さあ、家へ帰ろう」
身なりもぼろぼろで汚らしい子どもをどうして連れ帰ろうと思ったのかは定かではないが、ガロは自分の命を繋いでくれた恩人に一生尽くすことを心に誓った。
寒さ凍てつく中、ガロの左手から伝わる熱は、既に心まで届いているようだった。血液に乗って全身を巡り、あたたかくて気持ちがいい。ぽかぽか感じる胸に手を置き、これが幸せと言うのかもしれないと、溢れそうになる涙をこらえながらガロはそう考えていた。
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