よつもり
2024-05-13 15:13:41
2552文字
Public 映画・本のはなし
 

映画『新しき世界』の感想

2024年4月28日に観た韓国映画『新しき世界』の感想です。
けいじさんにおすすめ頂いての鑑賞でした。

先日鑑賞した『新しき世界』の感想を書いていきたいと思います。
とても面白かった!! やっぱりおすすめ作品を観るというのは面白いなと思いました。おすすめということはまず間違いのない作品だろうし、その人が何をどう好きなのかということも知ることができる。大変良い経験でした。

☆ ☆ ☆

犯罪組織ゴールドムーンの会長・ソクが急死したために後継者争いが勃発。死んだ会長の下の序列はこんな感じ。

No.2 チャン・スギ(過去に覇権争いに負けて実質引退状態)
No.3 チョン・チョン(かつて大門組でトップだったけれども組織を統合したあとにソクの部下となる。重要事業の担当。主人公の兄貴分)
No.4 イ・ジュング(かつて会長の右腕だった。ギラギラしていて向上心がある。組織内でも最大派閥の支持を受けていて有力)

そしてこの物語の主人公、イ・ジャソンは、No.3のチョン・チョンの弟分なんですね。兄貴に可愛がられているもののその可愛がりがうざ絡みといった感じで、うざったそうにしている様子が冒頭で印象的です。兄貴分なのに弟分にあからさまにうざそうにあしらわれて、それでいながらやっぱり弟分が可愛いとでも言うような兄貴。弟分を殴りたくないから代わりにその部下をしばく。兄貴に気を遣わずに露骨にうざいといった感情を表に出す弟。ここで二人の関係性がひとまず見える。

この弟分のイ・ジャソンは実は韓国警察の覆面捜査官で、長い事本当の身分を隠してヤクザ組織の中で出世した男なんですよね。ジャソンの正体を知っているのは、韓国警察の中でも、
・コ局長(指示を出す偉い人)
・カン課長(ジャソンの直属の上司。立ち回りしたたか)
・シヌ(連絡役の女性。表向きジャソンの囲碁の先生として彼に接触する)
というこの三人だけ。ついでに、コ局長とカン課長は友達の関係。

で、そういう覆面潜入捜査官であるジャソンは、ヤクザ組織内で順調に出世して、ヤクザ組織の方に生活基盤もあり、結婚していて妻は妊娠しているという状況。
ヤクザ組織のいち員の自分と、警察官として自分との間で葛藤が生まれ、この潜入捜査を辞めたいとずっと思っているのに、カン課長に懇願しても辞めさせてもらえない。
なんならカン課長はジャソンの妻の妊娠をなぜか知っている。これは怖い。自分に関する情報をいつの間にか警察に握られていて、この潜入を続けることを選ばなくては何があるかわからないといったような雰囲気もある。

そんな状況があるうえで、会長の死亡に伴い後継者争いが勃発し、警察はこの犯罪組織の後継者争いに介入をしていこうという計画を立てる。それが「新世界プロジェクト」
というわけで警察は、ずっと辞めたいと言っているジャソンにもうしばらく頑張ってくれと潜入捜査の継続を求める。拒否するジャソン。でもなあなあにされて続けざるを得ない。ジャソンに対する警察組織の人使いの酷さが段々見えてくる。

というわけで、
チョン・チョンとイ・ジュングの一騎打ちに警察が介入していき、チョン・チョン派閥とイ・ジュング派閥のあいだで抗争が起きる。チョン・チョンは大怪我を負って重体。イ・ジュングは警察によって拘束されていたために状況から取り残されていく。
有力候補のチョン・チョンとイ・ジュングがふたりとも会長候補から転落していくと同時に、No.2で実質引退状態だったチャン・スギが出てくる。チャン・スギは警察のバックアップを受けて会長に押し上がる代わりに警察に協力するという関係を約束する。その約束の一環としてジャソンを部下として取り立てるという。

という感じで、辞めたいのに状況がジャソンを辞めさせてくれない。警察官としての立場、ヤクザとしての立場、どっちを取る? というジャソンの揺れ動き。この映画では警察の方こそ血も涙もないような描かれ方をしていて、警察組織に忠誠を誓い続けることが段々と馬鹿らしく苦痛に思うように描かれている。でもジャソンは警察としての立場を捨てきれない。けれども警察でいることはヤクザ組織を裏切り続けるということでもありその葛藤もある。
さて、ジャソンは最後にどの道を選ぶ?というのが見どころ。

最終的にジャソンは、警察官としての自分を知っているコ局長とカン課長を殺し、会長候補のチャン・スギとイ・ジュングも殺して自分がヤクザ組織の会長となることを選びます。その決断をしたのは、死に際のチョン・チョン兄貴の後押しがあったから。うざ絡みをしてくる兄貴は、ジャソンが警察の潜入捜査官であることを知っていた。それでいながらジャソンのことを庇い、ジャソンが生き延びる道を指し示してくれた。だからジャソンは心を決めた。

警察組織もジャソンのことを駒としか思っていない。ヤクザ組織だってそう。その狭間で心身をすり減らしながら生きていたジャソン。そんなジャソンのことを、チョン・チョン兄貴は「警官だから」という目では見なかった。ジャソンを弟分として大切に思い、弟分が警察官であろうとなんだろうと、彼が今後生き延びることを考えてくれた。そういうふうに人間扱いをしてくれた人の言葉だからこそ、ジャソンはその言葉によって道を決めたのだろうと思います。

映画の最後、時間は6年前に遡ります。まだ下っ端だったチョン・チョン兄貴とジャソンがカチコミに行く場面。強面が集う中に突撃していけない兄貴と、一足先に腹を決めて突っ込んでいく弟分。弟分が行くなら兄貴も行かなきゃなと後を追う兄貴。ボロボロになって出てきた二人が、なにか飯でも食いに行こうと話をする。その時のジャソンの笑顔によって、ああ彼も兄貴のことを慕っていて、兄貴と過ごした時間を大切に思っていたんだなということが伝わってきます。うざそうにしていたけれども、ジャソンも兄貴のことが大切で、チョン・チョン兄貴との間にはたしかに絆があったんだなとわかる。切ないですね。

という、とてもとても面白い映画でした。これは観れてよかったな。ハリウッドでリメイクが企画されているようなのでそちらも楽しみ。韓国映画もいい作品いっぱいあるんだろうなと思うと、今後色々チェックしていくのも楽しいかもという気がします。おしまい。