夕方、買い出しを終えて帰宅したエリュゼはそのままベッドの上に転がった。食事の支度を始めるにはまだ余裕があるが、冷蔵品をしまわないと。
そう思って身体を起こしたのに、真っ先にスマートフォンを取り出してしまう。
そして、ぼんやりしながらメッセージアプリを開き、「友達一覧」に新しく加わった名前とアイコンを見つめる。
男の人から「連絡先を交換しませんか」と言われたことは、実はあんまりない。だからこういう形で本当に連絡先を交換したのも初めてだった。
学友でもなければ先輩でもない。なんで交換したのだろう。もう、お互いに用は無いはずなのに。
でも、今日は結構楽しかった。
美術館の弦楽器展を見にいって、遅めの昼も一緒に食べて、エリュゼのスマホケースを選ぶのにも付き合って貰った。
「これはどうですか?」と提案されたケースがくすんだ淡い緑のシノワズリ柄でエリュゼの好みにも合っていたので、色々見たが結局それを買ったのだった。
新しいケースに包まれたスマートフォンを見ていると気恥ずかしくなってくる。なんか、まるでデートをしてきたような気がして。
次に会う約束はしなかったが、いずれこの画面にそれが届いたりするのだろうか。
エリュゼはそわそわしつつ、アプリの画面を閉じた。
*
帰宅してすぐ、クリスティアンは今日買ったばかりの紅茶を淹れることにした。
普段は自分で淹れないのだが、エリュゼと一緒に立ち寄った店で彼女が「これが美味しい」と言っていたので、つい買ったものだ。
あまり使わないまま食器棚にしまっていた白磁のティーポットをよく洗い、よく温め。
いざ抽出した紅茶を飲んでみたが、期待したほど美味しくない。
やっぱり紅茶は上手な人に淹れて貰わないとだめか。
風味がいまいちなお茶をキッチンで立ったまますすりつつ、スマートフォンを取り出してメッセージアプリを開く。
「友達一覧」に新しい名前とアイコンが加わっていた。
自分から女性の連絡先を尋ねることはあまりない。やりとりをしない人間の情報が手許に増えていくと落ち着かなくなる性分なので、そもそも基本的には友人や職場の関係者以外と連絡先を交換することはしないようにしている。
エリュゼはそのどちらにも該当しないし、今後連絡を取る〝必要〟がある相手ではないが、気づけば彼女を〝自分の付き合いのある人間リスト〟に入れていた。
カテゴライズは微妙だ。というか、どこに分類したらいいのか自分でもよく分からない。
――紅茶、うまく淹れられなかったと言ったら淹れ方を教えてくれるだろうか。
それとも、先に今日付き合って貰ったことへのお礼を送るべきか。
オケ部にOB参加する社会人に撮っては貴重な土曜練習をサボった言い訳もディルクに送らなくてはいけなかったのだが、エリュゼへ送るメッセージを考えるのに腐心していたクリスティアンがそのことを思い出したのは、日もとっぷりと暮れ、その日の練習も終わったディルクが電話をかけてきてからだった。
読んだよ👏
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