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浦山野あずま
1230文字
Public
一次創作
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めけめけ様の噂
めけめけ様とは、とあるネットコミュニティにてある日を境に急速に広まった怪異である。その起源は、失せ物を探す呪いとも生贄の選定儀式とも言われる。
「めけめけ様、ですか?」
「そう、めけめけ様。ご存知?」
お裾分けのアップルパイと若鶏の唐揚げを容器に取り分けてくれながら、小春さんは小首を傾げてそう仰った。
「最近、孫の通ってる書道教室で流行っていて
……
」
それは所謂「どれにしようかな」の一種なのだそうだ。
例えば探し物をしている時、ありそうなところをを一つ一つ指さしながら、お決まりのそれを歌う。
どれにしようかな めけめけさまのいうとおり
めけめけめけ おーまえ
そうすると、最後に指した先に必ず探し物があるのだそうだ。
「めけめけ様なんて、私、聞いたことなくって。貴方、大学で民俗学のお勉強なさってるんでしょう? 興味があるかと思って」
確かに、少し興味はあった。先日、大学のゼミでも、言葉遊びの地方差で盛り上がったところだった。少し調べてみますと答えると、小春さんは「ありがとうね」と言って帰って行った。
小春さんは僕が今いる雑居ビルの大家さんで、そして僕はビル内にある古道具屋のバイトで、この店の主人はとても無口な人で、いつも入り浸っている店主のご友人は陽気な人だった。
今日も店主は黙って信楽焼の狸を磨いているし、ご友人は響きが気に入ったのだろう。愉快そうにメケメケーメケメケーと歌っている。ご友人が爪弾いている三味線は、ひょっとしてウチの売り物だろうか。
どうせ暇なのだから思い立ったが吉日と、ゼミの友人達にグループトークアプリで投げかけてみれば、ものの数分で大騒ぎになった。みんな物好きなのである。
「やっぱり『みっけ、みっけ』からの転化じゃないか?」「見つけられたらどうなるんだろ
……
」「最後に『おまえ』って指名されてるだろ。やっぱりとられるんじゃないか」「いや、ここはズバリ! ミャクミャク様の別名だろ!」「ミャクミャク様にお詫びしろ」「転売ヤー罰当たれ」「めけめけ様、食べられるかな?」「なんて???」「その発想はなかった」「もぐ
……
」「違う!めけめけ様に食べられちゃうのかなって意味!」「贄かぁ」「嫁探しかもよ?」「いやな婚活だな」
目新しい話題に、友人達のトークは止まらない。後ろから僕の端末を覗いていたご友人が、楽しそうに笑った。
「ふふ、面白いねぇ。最近は情報が速いから、そうやって話がどんどん膨らんでいくんだ」
ご友人は、目を細めて、声を潜めて、続けた。
「だからねぇ、気をつけないといけないよ」
怪異も、そうやってすぐに変わってしまうんだから。
「めけめけ様、なくなっちゃったんですって」
「なくなった?」
「そう、禁止になったの」
小春さんが仰るには、怪我人が出たのだそうだ。童歌で怪我人がどうやって出ると言うのか。詳細は小春さんにもよく分からないと言う。
「でもね、確かにその子、腕を少し怪我しちゃったのよ。可哀想にね」
めけめけ様が齧りに来るって、ずっと泣いてるそうよ。
—
終
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