ななき
2023-09-25 19:53:02
801文字
Public 吸死
 

吸対新人は知らなかった 紫煙で測る距離・番外

供養。半はロが煙草吸うこといつ知ったんだろうね、の妄想。色々ふんわりしてる。
ロと半、高校途中から14死まで疎遠だったんじゃないかなあという前提です。

「半田から吸対本部。現着しました。通報の下等吸血鬼は退治人による対処済みを確認」
念願だった吸血鬼対策課に配属されて数日。ようやく無線にも気負わなくなった。
イヤホンからは即座に了解の返事と後処理の指示が返ってくる。後処理といっても、たった今デカい蚊をまとめて叩き落した退治人に二三、確認する程度だが。

気配に気づいたか、俺が声をかけるより早く退治人が振り返る。赤いジャケットに赤い帽子、見間違えるはずもない銀の髪。高校卒業以来、顔を合わせていなかったそいつは、俺をみて僅かに目を見張り、だが何も言わない。代わりに退治人としてソツなく簡潔に必要事項を伝えてよこしたので、俺もまた、終始必要事項だけを返すしかない。

「それじゃあ」
「ああ、御苦労だった」

初夏の草の匂いをかき消すほど濃い、殺鬼剤と煙草の匂いがした。

公園を出ようとして、妙に緊張していた事に気がつく。気休めに腕を回し手首を軽く振った。ため息は一つで済ませる。署に戻らねば。
振り返れば、ポツンと立つ街灯の下に先ほどの退治人の姿がまだあった。疲れたように街灯に寄りかかり、どこからか取り出した細い棒をくわえている。――煙草。
ライターの赤い火に、我慢していた苛立ちが急激に膨れあがる。紙筒を毟りとって怒鳴りつけたかった。
何だそれは! 何だその濃い隈は!大人びた口調は! 擦り切れた目は! しみついた匂いは! お前は、俺の!

……馬鹿め。

俺は警官で、公園は禁煙区域だ。戻って声を掛けるべきだし、そうできて当然の相手だ。
だというのに俺の身体は背を向け、何も見なかったように署への道を歩き始める。苛立ちは熾火のように。しかし今はあの退治人の姿を見ていたくなかった。


高校の途中で急に様子を変えた同級生。何かに追い立てられるように離れていって、知らぬ間に夢を叶えたらしい馬鹿者。
お前は、いまでもセロリは嫌いだろうか。