ななき
2023-08-07 20:17:53
1107文字
Public 吸死
 

白くて青くて儚い夏の

(ドラロナ)まだ自覚も遠い夏のドラロナ。かき氷の話。

 カキ氷食べたい!という五歳児と丸の希望で、卓上かき氷機がロナルド吸血鬼退治事務所にやってきた。

「最近また流行ってるんだぜ、かき氷機」
 得意げに言ってはいるが、どうせヒマリ嬢からの情報だろう。この小さな機械、元はロナルド君兄妹の家で使われていたもの。使われなくなって久しいながら大事に保管されていたそれを、ロナルド君に手渡してくれたのは彼女だったので。
「またって、そもそもこんなの出てきたのついこの間だろうが」
「昭和はこの間じゃねぇぞ二百歳児」
「やかましいわ五歳児が」
 軽口を叩きつつも、ロナルド君はわかりやすく上機嫌だ。
「昔アニキがよく作ってくれたんだよな。……ヒマリも寄っていけばよかったのに」
「ヌー」
「また今度呼んであげたらいいさ。学生さんだ、兄に構ってばっかりもいられな……事実だろうが殺すな!」
「なんかイラっとした」
 小さな兄妹に夏の楽しみを提供していたカキ氷機。期待でいっぱいのまぁるい青い瞳が二対、この機械と長兄を見つめていたに違いない。そう思うと、使い込まれた傷も年月で少しくすんだ色も、古兵の趣に見えなくもなかった。

 プラスチックの頭に専用の器で作った氷をセット。足の間にはガラスの器。レバーは案外硬い。回す役はゴリラに進呈。レバーが回れば、真夏のシンヨコで小さなテーブルの上に雪が降った。シャリシャリと音まで涼しい、小さくて真白な雪山が出来上がる。
 赤いイチゴのシロップをかけたジョンの分。
 その隣に青いシロップでロナルド君の分。
 他の同居人たちには、もっと小さい雪山やひとかけらの氷を。

「ヌー!ヌヌヌオリ!」
 このご家庭用エンタメを見るのが実は初めてのジョンは大はしゃぎだ。
「お前は? シロップどれ?」
「あ? ……じゃあ、それ」
 ほい、と目の前に置かれた小さめの雪山には真っ青なシロップがかけられていた。
 舌が赤いだの頭がキーンとするだのとはしゃぐ一同を眺めながら、冷たさで死なないように小さく一匙、口に運ぶ。氷を舌に乗せたとき、パチリと青い瞳と視線が合った。吸血鬼の体温でも氷は簡単に溶ける。跡形もなく、何の名残も残さず。

 きらきらして青くてすぐ消えちゃうなんて、ロナルド君みたいだ。

 カラン、とスプーンが床に落ちた。
「あ゛? かき氷にも負けんのかよ」
「ヌー!」
「ちが、わないが!」
 氷に負けたことになるのは業腹だが今更だ。
 塵になった体を戻しスプーンを洗うために立つ。……ちょうど良かった。なんだかロナルド君を見ていられない。

 甘く痺れたのはシロップのせい。胸が冷えたのは氷のせい。
 そう。きっと、それだけだ。