ななき
2023-03-27 00:44:14
1679文字
Public 吸死
 

結婚パーティーにて、ロナリスト達

退治人ロナルド結婚するってよ。

負けヒロイン属性のサンズちゃんが好きです。
ロナルド君のお相手特定して書いてません。(が、生産元はドラロナです。)

「そんな端っこで何をしている」
 人も吸血鬼も入り乱れて大はしゃぎな大騒ぎが繰り広げられるヴリンスホテルの大ホール。それを壁に寄りかかったまま眺めているサンズに、声をかけるものがいた。
「良き日を噛みしめてるだけなのでほっときやがれ」
 声を掛けてきた人物、半田は、ふん、と鼻で笑ってサンズの隣で壁に背を預ける。半田はラフなパーカーではなく華やかなスーツだし、サンズは隠密性に優れた仕事用のスーツではなく鮮やかなパーティードレスだ。たまにロナデュエルドで顔を合わせる日と勝手が違っていて、なんとなく座りが悪い。

 二人は、共通の知人の結婚を祝うためにここにいる。半田にとっては友人、サンズにとっては仕事の関係者。退治人ロナルドの結婚を祝うために。
……お前こそ何してやがるんです、新郎友人」
 サンズはロナルドと話せていない。一度だけ目の前を通った彼に、小さく、おめでとうと声を投げただけ。サンズに気づいたかすらわからなかった。そのサンズと違って、半田はさっきまで騒ぎの中心にいたはずだ。
「友人の本番は二次会と相場が決まっているだろうがバカめ」
「まーたロナルドしゃんに迷惑かけるつもりですか、この変態偏執狂」
「とっておきの醜態ムービーを用意済みだ。ピーピー泣かせてやるわ」
 二人の視線の先では本日の主役が絡まれに絡まれている。さっきまで白のタキシードだったはずが、赤いバニーガール(?)なのは……最早つっこむのも野暮なのだろうか。
「ロナルドしゃんに構って貰えなくなって寂しくて泣くのはお前でしょう」
「高校三年間クラスメイトで腐れ縁。それは変わらん。泣く理由などない」
「サンズちゃんだって変わらずロナルドしゃんのファンで担当編集(予定)ですー」
「ほーう。……まあ、だが、お前はそれだけでもないんじゃないかと思ってな。泣いていないか見にきた」
「笑いに来たの間違いだろ」
「m9(^Д^)」
「クッソ腹立つヤローですね」

 泣くはずなどないだろう。人生最大に憧れる人の結婚パーティーに招待されるなんて光栄なことなのだから。だから、全力でお祝いして隙あらば原稿に生かしてもらうべきなのだ。オータムの編集者、サンズとしては。

 さっきまでそうできていたはずの女は、今、キラキラする照明から目を逸らし、パーティーの主役達から隠れるようにしてドレスを握りしめながら俯いている。
 ブログを読んで憧れた。ブログが本になってそれはもっと強くなった。助けられて、生身のあの人を知った。真摯で実直で真面目で優しくてお人好しで時々かっこ悪い所だってかっこ良くて、この気持ちが読者としての憧れだけかなんて、本当にそれだけかなんて、もうとっくに。
 でもサンズは編集者であることを選んだのだし、彼がその人生をかけて隣を歩こうと決めたのは、今日のもうひとりの主役その人だ。

 泣いてなんかねーです。その声が震えていたかは、半田しか知らないことだ。

「五十五秒後」
……は?」
 半田の手元にはいつの間にか何かのスイッチ。なんだその昔の漫画みたいな。
「この会話に三十秒、サプライズが開始されるのがその五秒後、サプライズで落とすセロリバルーンの山からロナルドが脱出するのに十五秒。そこから、サプライズの主犯を殴りに来るのに五秒かかる」
 しらっと主役を見ている半田の横顔を、サンズはぽかんと口を開けて眺めた。
「それまでに、アレに何を言うか決めて腹を括れ」
 半田はデュエルドの時と同じく、挑発するように笑ってスイッチを押した。

 宣言通りの秒数で目の前に立った憧れの人(バニーガール)。ちゃんと言えた心からの祝福と、絞りだしたずっと大好きです、に返してくれたのは晴れた空のような笑顔と「ありがとう」。
 だから。だからサンズは、これからも『退治人ロナルド』の担当編集(予定)で大大大ファンでいられるのだ。

 闇のロナリストに礼代わりのデュエルドを申し込めば、いつも通り「コテンパンにノしてくれるわ!」と返ってきて、なんだか安心してサンズは笑った。