ななき
2023-01-28 22:15:43
729文字
Public 吸死
 

イン・ザ・コフィン

(ドラロナ)超短文。
何かしんどいことがあったらしい日の薄暗い棺桶。
いつか何かでリサイクルする、かも。

「棺桶って快適だよな」
「貸さんぞ」
「静かだし」
「ゴリラが蓋ボンゴしにくるがな」
「冷暖房完備マッサージ機能プラネタリウムにアロマ?付き」
「貸さんと言ってるのに度々潜り込みやがって」
「あとドラ公」
「おい持ち主をオプション扱いするんじゃねぇ」

 独り言にいちいち律儀に返答が帰ってくるのが面白い。言葉に伴う吐息が唇に触れてこそばゆかった。
 背と右半身には厚い綿の入った棺桶の壁と底。左側に棺桶の蓋。前には吸血鬼。無駄な雰囲気照明で朧に輪郭はたどれるが、近すぎて表情はわからない。
 ――このぼんやりした空間なら何も不幸なことは起こらない。いやなことも。
 自分の腕が吸血鬼の痩せた躯に巻きついているのを感じて、吸血鬼の腕が自分を抱いているのを感じた。
「このまま埋めてもらいてぇな」
「おっと不穏に舵切ったな」
「それでそのままお前とずっと」
「ロナルド君」
 火に手を伸ばす幼子を窘める声だった。
「疲れて気が弱ってるんだよ、少し眠れ。その間くらいは貸してやる」
「オプション」
……オプションのドラ公もつけてやるから」
 きゅうと軽い力で抱きしめられて、頬と唇を撫でられる。もっと隙間もないくらい、撫でる必要もないくらいに埋めて欲しかった。でもこの雑魚吸血鬼にはきっと難しい。
 目を閉じる。目蓋の裏の暗闇も、土の下の暗闇も、こいつがいるならきっとたいした違いはない。

 ◇

「わすれろ。わすれろください……
 どうして俺は同居吸血鬼の棺桶に持ち主同伴なんてしたのか。
「終わりまでの共寝を強請られるのも悪い気はしなかったが」
「わすれろってばぁ……
「迂闊な発言には気をつけろよ、吸血鬼に言質とられて泣いても知らんからな」