ななき
2022-12-04 22:48:53
1095文字
Public 吸死
 

ブルーアワーをあなたへ

(ドラロナ)たまにはRINEでデレてて欲しい話

 小さなビルの前で、大きく息をつく。
 今日の仕事はこのビルで下等吸血鬼退治と再発防止の薬剤散布だった。オフィス退去の直後だとかで、中がほとんど空になった複数のフロアに小型の吸血蜘蛛の群れが巣をはってしまっていた。
 駆除して、忌避剤を散布。再チェックし終わったのがさっき。依頼人に完了の連絡を入れたのが今。昨夜から取りかかってもう明け方だ。
 難しい仕事ではなかったが予想外に数が多く、ぐったり疲れてはいる。やっぱりギルドに応援頼むべきだったか。せめてドラ公連れてくればよかったか……いても忌避剤で死にっぱなしになる未来しかみえない。置いてきて正解だな。ザリガニのハサミの方がたぶん役に立つ。

 東の空が白んでくる。ビルの谷間に、幻想的な青のグラデーションが広がっていた。ひんやりした早朝の空気も染まる気がするほど。
「きれいだな」
 ポケットからスマホを取り出し、カメラを起動。……うん、きれいに撮れた。そのまま、RINEで同居人に送ってやる。
『空きれい。おすそ分けしてやる』
 もう寝ているだろうと思っていたが、目の前ですぐに既読がついた。
『退治は?無事終わった?』
『終わった。怪我もない』
『そう、お疲れさま』
 スマホを閉じようとしたとき、ポコンとまたメッセージが上がってきた。
『君の瞳にも負けないくらい綺麗な青だね』
「アビャッ!?!」
 あぶねぇ、スマホ落っことすとこだった。またポコンとメッセージ。
『軽くお腹に入れるもの用意して待ってるから、太陽より早く帰っておいで、愛しい人』
「イ゜ッ」
 またスマホを落としそうになる。
 な、なに、いやその、こ……いびという関係になってからたまにコイツこういうこと言うけど!突然さらっと言うから心臓に悪いのだ。心の準備をさせろ。
「あーー……
 思わずしゃがみこんだ。手で覆った顔が熱い。既読をつけてしまったから、俺が読んだことはバレていて、そしてたぶん俺がどんな顔をしているかもわかってるんだろう。
 キザな台詞や軽いスキンシップにすら大きく反応してしまう俺を、最近のあいつはからかいもせず、楽しそうに微笑って見ている。煽りと罵倒が常の雑魚のくせに、そういう時はまるで年上の大人の男のようにも見えて。いや別に、イイとか思ってないけど。思ってないけどな!

 愛用の殺すスタンプに指が伸びたが迷って止めた。
 代わりに送ったのは、
『首を洗って待ってろクソダーリン』
 …………くっそ恥ずかしい。

 よし、帰ろう。美味しい飯を貰ってあわよくば少しばかり甘やかしてもらいたい。ロナルド様はお疲れなのだ。ちくしょう。