ななき
2022-11-20 19:30:18
905文字
Public 吸死
 

置き去りの純情

診断メーカーより 出ない本の冒頭。
https://shindanmaker.com/878367

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診断結果
【題】置き去りの純情
【帯】調子付くから優しくしなくていいよ
【書き出し】猫を撫でる手付きが思いのほか様になっていて驚いた。
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猫を撫でる手付きが思いのほか様になっていて驚いた。
「なかなかの美人さんだねぇ、キミ」
柔らかそうな縞柄の毛を、強弱つけて撫でる細い指。考えてみればジョンの主人だ。吸血鬼には猫を使い魔とするものもいると言うし、コイツも小動物の扱いに慣れていてもおかしいことはない。ハムスターにも負ける雑魚が、猫を撫でているというのが何だか意外性がある気がしただけだ。

青白い手を満喫していた猫が、ふいに此方をみた。身体を持ち上げ、今度は俺の足下に擦りよってくる。
「おわ! わ!?」
「あっはは! 撫でてあげなよ」
瞳の大きくなったまん丸な目が俺をみている。なんだっけ。急に上から手をだしちゃいけないんだよな。驚かせないように静かにしゃがみ、そっと首を撫でる。力加減がお気に召さなかったか、もっと、というように頭を押し付けられた。かわいい。
俺と入れ替わりに立ち上がった男の声が、上から降ってくる。
「ハワハワしてるとこ悪いけど、ほどほどにしないとジョンにバレるからな」
ジョンは最近、俺やドラ公が動物動画をみているだけで拗ねる。それはまずい。まずいがこのおねだりにも応えたい。
「しかしゴリラにも毛皮に触れる権利を与えてくれるとは何とも勇敢で優しい子じゃないか」
後半は同意してもいいがゴリラは余計だ。

「でも、あんまり優しくすると調子に乗るぞ」
ほんの少し低められた声音に、思わず息と手が止まる。
「しかも寂しがりやで温度に飢えてる。思ったより懐かれて、こんなつもりじゃなかったって泣くことになるぞ」
なんだよ、それ。それは、誰のことを。

「おや、もう満足かね? 気をつけてお帰り、毛皮の友よ」
手が止まったのを終わりとみたのか、暖かい身体がすり抜けていく。トコトコと住宅街へ向かっていく後ろ姿は何の未練も感じさせなくて、俺の手だけが置き去りだ。
「さ、我々も帰ろうじゃあないか」
月明かりも街灯もある明るい道だというのに、吸血鬼の顔は見られなかった。