ななき
2022-09-13 02:06:13
1316文字
Public 吸死
 

心中問答

考え過ぎて心中を持ちかけるドちゃん。
会話文+ロくん独り言。

書いて消化を試みた寿命問題ですがまだ消化不良。
一応ドラロナですが不定ぎみかも。

海に行こうよ、ロナルド君
なんだよいきなり
沖までいこう、車椅子、押していってあげる
お前途中で死ぬだろうが
一緒に死んでよ
爺に向けるにしても面白い冗句だな
本気だよ
本気なら黙って連れていけるだろ、今の俺は1人じゃ動けない
そうだけど、気分くらい聞いておこうかなってだけ
気分か
気分だよ

一緒に死んだとして、お前、死んだそばから流れてくだろ
そうだね
俺を海の底にひとりで置いていくのかよ
流れていかないように抱えててよ
無茶いいやがる
それぐらいしろ、高等吸血鬼の残りの命全部と引き換えだ
馬鹿だな
馬鹿だよ

……退治人衣装、着てやろうか
え?
お前には帽子を貸してやる
……いいね
それで、海の底でずっと一緒だ。静かに寝てろよ?
馬鹿だね
馬鹿だろ

ねえ最後のお願いだよ、海にいこうよ、ロナルド君
それが最後のお願いなら、聞けねぇな



馬鹿だな、とロナルドは呟く。
今、心中を持ちかけてきているのは、お気に入りの昼の生き物をなくす事に怯えた夜の住人だ。永久の喪失が怖いのか、執着の行き先をうしなうことが怖いのか、自分でもわかっていないに違いない。

それでも、情のない化け物ではないと誰より知っている。

若い頃には冗談めかして何度も夜の種族へ誘われた。全部冗談めかして断り続けた。
いつからか途絶えたその誘い。諦めた訳ではないだろう。執着は消えるどころか溶けた鉄のように明々と瞳に灯ってロナルドを映していたから。
きっと逆だ。
長く共にいて人が定命の生き物と思い知ったぶんだけ、軽々に口にできなくなったのだ。口にできなくなって、ロナルドが死を受け入れている意味を考え続けている。
そうでなければ、眠る獲物の首に牙を押しあてるまでしたくせに、貫かず貫けずに声を殺して泣いたりするものか。

この吸血鬼は、執着と愛着と切望と絶望と哀切と怒りと、あらゆる感情で苦しんでいる。苦しんで、一緒に死のうなんて可愛らしい提案にまで至った。
人間なんかと生きたばかりに。
人間なんかを慈しんだばかりに。
……ロナルドを、愛したばかりに。

その逡巡が、葛藤が、苦悩が、いとしくて嬉しいと言ったら、怒るだろうか。遠く綺羅綺羅しい思い出のように罵りあって大騒ぎして、そしてまた一緒に笑えるだろうか。

ロナルドは人だ。このまま人として眠らせて欲しいと思っている。その時、ロナルドは愛した人の永久の傷になれるだろう。残酷だと言われたって構いやしない。
その一方で、もう一度夜へと請われたなら応えようと思うのも本心だ。人は使い魔に向いているとは言えず、吸血鬼への転化も難しい。それでも、分の悪い賭けをしてでも、手放したくないと愛しい人が泣くのなら、置いてきぼりになどできるものか。

どちらでも、ロナルドに負けはない。
最愛の吸血鬼が生きている限り。生きていて、いつかまた笑ってくれるなら。

だから。それが最後のお願いなら、聞けねぇな。
負けてはやれねぇんだよ、ドラルク。



………
まさか他の男に『ドラルクさんは僕が幸せにしますから安心して』って言われた途端、今すぐ吸血鬼にしろって暴れるとはね……悩んだ私なんだったの