ななき
2022-08-21 19:17:21
1068文字
Public 吸死
 

おねがいひとつ

同居しばらく、ドラちゃんの料理になれてきた頃。
1人暮らしで貰い物持て余したことあるだろうなぁ、と。
CP要素なし。

その夕、ドラルクが目覚めてみるとダイニングテーブルに山ほど果物が載っていた。
ブドウ、梨、桃。豊かな香りのする旬のものばかり。
「どうしたんだ、これ」
主人と一緒に起きてきた使い魔がさっそく興味を示すのを引き離しながら、ソファでPCを開いているロナルドに聞いてみる。
「あー、その、昼の仕事が葉田毛町の果樹吸血鬼化対策講習会の講師で」
サテツと一緒にいったら帰り際にアレもコレもってたくさんくれて、断るのも悪くてさ、と退治人は眉を下げる。ドラルクは、なるほど、と意外でもなさそうに相槌だけ打って梨を一つ手に取った。

お人好しとお人好し、それも図体のでかいのが2人。恐らくは受講生には2人よりずっと年上の紳士淑女が多かったのだろう。可愛がりがいのある講師だったに違いない。穏やかな目をした大型犬が二匹、構われ撫でられオタオタしながらまんざらでもない、そんな光景がドラルクの脳裏に浮かぶ。

「しかし随分頂いたものだね。この量、さすがのジョンとロナルドくんでも食べきれるか」
手の中の梨はずっしりと重く、熟していることが指先からも感じられた。今まさに食べ頃の果物は悪くなるのも早い。
「ヌヌ!」
マジロは頑張ってたべる!と気合いを入れてみせるが、三食を果物だけにするわけにもいかない。
……なんか、こう、いい感じになんとかできねぇ?」
ギルドに持ってくでもいいんだけどさ出来れば、とゴニョゴニョワヤワヤ言う同居人を、吸血鬼は思わず見やる。このウサギ小屋に押し掛けてしばらくたつが、ロナルドがはっきりとドラルクを頼るのは初めてだ。
「果物とか野菜とか、貰うことは前から結構あったんだけど食べきれなくて捨てちまうことも多くてさ。その度に申し訳なくて」
後ろめたげに碧眼を伏せながらロナルドは言う。
「でもお前なら、なんとかしてくれるかなって」
……
「な、なんだよ」
面映ゆいようなくすぐったさがドラルクの気分をじわじわと高揚させる。自分の頼みをどう扱われるか不安げなロナルドの様子も珍しく、可愛らしいような気さえする。
「うふふ」
にんまりと笑みを浮かべてマジロをひと撫で。
「いいだろう、なんとかしてあげようじゃないか!」
保管はもちろん適切に、生で食べる他はジャムやコンポート、肉料理のソースにしてもいいかもしれない。算段はいくらでも立てられる。
それを並べたてれば1人と1匹の目が期待でキラキラとしだす。
「君の働きへのご好意だからね、ムダになんかさせないとも!」
楽しみにしたまえ!と料理上手の吸血鬼は高らかに宣言した。