ぶんどき
2024-05-08 19:04:07
1526文字
Public TRPG
 

すべての恋人達に祝福を

GODARCA 現行未通過❌ 自陣⭕ 
アーロンの過去など設定SS

 100年前に世界は一度滅んだ。その後、細々と命を繋ぎながら暮らす人類達の中でもフランス貴族由来のアーセナル家は裕福な家庭だった。幼い頃から俺は両親からの愛情を一身に受け、屋敷の中で伸び伸びと育った。まるで戦いとは無縁のような生活で「お外に出る危ないことは兵隊さんたちがやってくれるわ」と母様も言っていた。

 そんな中、10歳の時に原初のアルカナの適正が発覚した。自分は【恋人】の適正があったようで、それを知った母様は悲鳴を上げ泣き崩れた。「母様はどうして泣いているの? 原初のアルカナに選ばれるのはすごいことなんじゃないの?」と母様の顔を覗き込むと彼女は俺を強く抱き締めて言った。「名誉なことよりも、あなたが危険な目に遭う方が私はつらいの」と。

 その2年後、機関に招集され研修を受けることになった。【恋人】の適正がある者は今のところ自分以外にいなかったようで、このまま順当にいけば自分が原初のアルカナを受け継ぐことになるのは明らかだった。
「対神話殲滅機関アルカナ」、そこでの研修生としての生活は厳しいものだった。今まで優しい愛情にしか触れたことのなかった自分は悲惨な現実や度重なる悪意と相対することになった。

 次の【恋人】の最有力候補であった自分は、色んな人の目に晒された。噂をされた。ひそひそ声が今日も聞こえてくる。「アーセナル家といったら上流階級の」「あそこの一人息子の箱入りお坊ちゃまが」「戦闘なんてできるのか?」「民達を守れるの?」「あ〜あ、次の【恋人】は──」
 重圧がのしかかる。期待されているようでされていないような。嘲笑されている。人を信じられなくなりそうだった。

 原初のアルカナが発現し、いよいよ本格的に【恋人】の肩書を襲名した頃、母様が病で倒れた。忙しい時期だったが無理を言って家に帰った。病床に伏す母様とそれに優しく寄り添う父様が俺を出迎えた。母様は無理して起き上がって喜んでくれた。

「あなたがみんなから愛されますように」

 そんな願いが母様の最期の言葉だった。

 その時気がついた、俺は愛されたかったのだ。両親からこれだけ愛を受けてもまだ足りない。愛に上限はないのだから。みんなから愛されたい。みんなから愛されるにはどうしたらいいか。──まずは、自分がみんなを愛さなければならない、その愛を伝えなければならない。

 戦闘に秀でているわけでもない、魔術が上手いわけでもない、救護が得意なわけでもない。そんな自分に原初のアルカナの肩書は重すぎる。
 しかし、俺は【恋人】のアルカナを受け継いだアーロン・アーセナルだ。
 "神話"に蹂躙された現実を、暗雲に包まれたこの世界を愛で塗り替えるのは自分にしかできないだろう。

 隊員一人一人と真摯に向き合った。名前、顔、性格、趣味特技。みんなのことを知って、みんなのことを愛した。部隊をまとめあげるうちに、いつの間にか噂話は気にならなくなった、それよりも慕ってくれる隊員達が大勢いたからだ。

 【恋人】のアルカナは一人では意味をなさない。他者と支え合って、助け合うことで真の力を発揮する。
 みんなを助けると同時に、俺もみんなに助けてもらうことができる特別なアルカナだ。

 これが俺のやり方、俺の生き方。
 
 さて、世界を愛で満たそうか。





 "神話"を目の前に隊員達を振り返る。

「さぁ愛する隊員達、いよいよ本番だ」
「でも大丈夫、安心して」
「この俺が、戦場へエスコートしてあげよう」

  錆びた太陽を見据え、矢をつがえた。

 ──病める時も、健やかなる時も、すべての恋人達に祝福を。