みみみ
2024-05-07 00:30:10
682文字
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まどろまない

教師タカラとまだグレてない頃のボーラ


 目を開けると、まず視界に飛び込んだのは、触れそうなくらい近い所にある鼻だ。
それから、毛穴なんて一つもない白い肌と揺れる度にそこい影を落とす長い睫毛。
……近くね?」
「そうでしょうか」
 いや近いって、息かかってるから。
て言うか俺の息臭くねえのか。
ああ駄目だ、どうにも思考が目の前の現実を拒絶する。
「なあ、おっさんの寝顔なんて見てて何が面白いんだ」
 仕事サボって屋上で昼寝してたら、教え子が馬乗りになって俺の寝顔を眺めていましたなんて
そう言う言い訳、教育委員会に通用するのか。
「いいえ、特別面白いと言うことはありません」
「そうだろうな」
 表情から感情が読み取れないが、それることの無い真っ直ぐな視線に眩暈がする。
何だってんだ、お前なんて黙ってても引く手あまただろうによりにもよってなんで俺なんだよ。
「拒絶しないなら期待しますよ」
「おいおい、俺を犯罪者にしてくれるなって」
 数秒の空白の後、ボーラの体が俺の上からようやく退いた。
安堵の溜息をもらす俺を、どこか不満げな目がジトりとねめつける。
コイツでも年齢相応にぶすくれる事があるらしい。
「んな顔するなって……
 少し黒い髪をワシワシと撫でると、その手を振り払ってボーラは立ち上がる。
「先生、次授業ですよ」
 それだけ言って背を向けると、塔屋のドアを開け階段を駆け下りていく。
姿が見えなくなって、俺は胸のポケットに突っこんでいた煙草を取り出して火を点けた。

「ちょ~っとやばかったな……
 思わず触れそうになった自分に自嘲しながら青い空に向けて煙を吐き出した。