初めて太宰を抱こうとした。間違いなく合意だったし、お互い行為自体が初めてではないと知っていた。だから、キスを交わし、服を脱がせる間に太宰が切羽詰まった静止の声を上げても、然して気にしていなかった。
「待って、ストップ、ほんとにだめ」
だから股間に手を伸ばしたところでがしりと手を掴まれて、俺は初めて動きを止めた。
「なんだよ」
「まずい、何か、盛られたかも」
太宰がか細い声で告げた。はっとして顔を上げる。興奮した頭が、急にさっと冷えるのを感じた。
「どこで」
「わかんない」
今日の太宰の予定を脳裏に浮かべる。特に警戒が必要な会食や来客はなかったはずだ。となると内部から仕込まれたか。こいつは急激に戦果を伸ばしているから、どこから命を狙われてもおかしくない。
「症状は?」
「頭、くらくらする……身体中熱い、息が、苦しい」
なんとか、というように答えて、はあっと熱い息を吐いた。確かに太宰の身体はどこもかしこも熱を持っているし、息は荒い。手は小刻みに震えている。脈を取ると、明らかに常より早かった。
盛られたのが本当なら、おそらく医療班に見せるべきだろう。
が、この状況ではどれもセックスを盛り上げる要因でしかない。太宰の訴えでなんとか続きを止まっているが、正直なところ股間はいつ暴発してもおかしくない程張り詰めている。苦しんでいるのを無視して事を進める程人非人なつもりはないが、これは生理反応なので許してもらいたい。
どうにか太宰の身体から目を逸らし、乱した衣服を元に戻していく。
そのうちに多少ましになったのか、大きく息を吐いた。
「みず……」
慌てて水を持って戻ってくると、太宰はペットボトルの水を半分程飲み干した。手を滑らせそうにはなったがきちんと自分で持っていたし、溢してもいない。麻痺の類はなさそうだった。
「いつからだよ」
「ついさっきだよ。キスし始めたぐらいからだんだん」
太宰の症状を総合すると、頭がくらくらして、身体中熱くて、息が苦しい。あとは手の震えや動悸。どれも行為の結果として当然の症状である。
なるべく見ないようにしていた太宰の股間に視線を向ければ、そこはしっかりと勃ち上がっている。
「なあ、その、盛られたって、もしかして媚薬とかだったりすんのか?」
「え、なんで?」
「いや……」
なんと説明していいものか悩む。太宰の逸物は明らかに反応している。初めてでもあるまいに、俺の質問の意図がわからないとは思えないのだが、やはり俺が都合良く考えすぎなのであろうか。
「それ、気持ちいいってことではなくて?」
「気持ちいい?」
「だから、その、俺に触られて興奮してるのとは違うのか?」
「興奮?」
意味がわからないとでもいうように顔を顰められて、俺も反応に困ってしまう。違うなら違うとはっきり言ってくれれば納得するのだが、まさかこんなタイミングでカマトトぶられるとは思いもしなかった。
どうしたものだろうかと悩んでいると、同じく何事かを考えていただろう太宰がぼふりと後ろに倒れ込んで、何やら唸り声を上げた。
「えー、もしかして、これが気持ちいいってやつなの?」
「いや、違うなら違うって言えよ……?」
恐る恐る覗き込むと、先程までも赤かった顔をさらに赤くして俺を見上げた。
「わかんないけど、たぶん合ってると思う。今まで盛られたどんな毒とも違うし、なんとなく話に聞いたことあるのとは大体同じだし」
「ほんとか? いくら手前でも違ってたら数時間後には死んでるかもしれねぇぜ?」
「その時はその時でしょ。とりあえず続きしてくれたらたぶんわかるよ」
腕をぐいと引かれて太宰の胸に倒れ込むと、耳元で熱い息を吐かれた。騒動で少しだけ治まっていた俺の股間がそれだけで急に元気を取り戻す。
「僕、セックスで気持ちよかったことないんだ。中也が教えてよ」
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